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プロローグ
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私、リゼア・モロロフ伯爵令嬢には8歳の時から、1つ年下で公爵令息であるルークス・ラゼルという婚約者がいた。
「リゼとルークスは将来、結婚するんだよ」
幼い頃から、お父様とお母様からそう言われていて、純粋にそうなるのだと信じていた。
ルークスとは喧嘩ばかりだったけど、彼の事が密かに好きだったから。
ルークスは他の女の子に全然興味を示さなくて、子供の頃は特に憎まれ口を叩いてくる事も多かったけれど、彼がちょっかいをかける異性といったら私だけだったので、彼も私の事を嫌っていないと勝手に思っていた。
成長するにつれて恋心も大きく膨らんで、彼もなんだかんだと私を大事にしてくれている事がわかるようになり、気持ちを伝えあった事はないものの同じ気持ちである事を感じ始めたのは、私が16歳になった頃だった。
この日の朝は、ルークスと一緒に王家主催のパーティーに出る事になっていた為、朝から忙しかった。
漆黒の艶のあるストレートの長い黒髪をシニヨンにして、ティアドロップ型の赤いルビーの付いたイヤリングやネックレスを付けた自分自身を鏡で確認すると、化粧をしているせいか、いつもは可愛らしいと言われる私が今日は大人っぽく見えたし、メイド達からも綺麗だと褒めてもらえた。
そうこうしている内に時間になり、ルークスが家まで迎えに来てくれたので、ルークスの家の馬車で一緒に会場に向かう。
私よりも頭一つ分背の高いルークスは長身痩躯の眉目秀麗で、女の子にとても人気があった。
茶色かがった黒色の髪に、私と同じ瞳の色でもある紺色の瞳。
目の大きい私に比べて、ルークスは吊り目気味で目は大きくはないけれど、まつ毛が長くていつも羨ましく思ってしまう。
「毎回、リゼは僕の睫毛を見るよな」
「……気付いてたの?」
「気付かないわけないだろ。凝視してるんだから」
ルークスはそう言って、他の女の子には見せない、いたずらっ子の様な笑みを浮かべてくれた。
その笑顔に胸がきゅうと締め付けられて、思わず目を逸らすと、ルークスの方が私の顔を覗き込んでくる。
「どうした? もう見なくていいのか?」
「もう十分です」
鼻と鼻が触れ合いそうなくらいに顔が近くて、目を合わせられなくて下を向いてばかりいると、ルークスは顔をはなしてから微笑む。
「リゼはお子様だな」
「お子様で結構です! これから少しずつ大人になるんだから!」
「そうだな。ゆっくりでいいよ。リゼが大人の階段をのぼろうとしたら踏み外しそうだし」
「どうしてそんな事を言うの!」
「悪い悪い。でも、今日のリゼはすごく綺麗だよ」
「いつもは綺麗じゃなくてすみません!」
「素直に礼を言えないところは、まだまだお子様だな」
「ルークスだって1つしか変わらないでしょう!? それに私よりも年下じゃない! ……でも、褒めてくれてありがとう」
お礼を言わない事は確かに失礼だと思って口にすると、ルークスは笑って「いつもは可愛いよ」と言ってくれた。
この時の私は、大好きな人と笑い合うこの時間が途切れる事なく続くのだと信じていた。
「リゼとルークスは将来、結婚するんだよ」
幼い頃から、お父様とお母様からそう言われていて、純粋にそうなるのだと信じていた。
ルークスとは喧嘩ばかりだったけど、彼の事が密かに好きだったから。
ルークスは他の女の子に全然興味を示さなくて、子供の頃は特に憎まれ口を叩いてくる事も多かったけれど、彼がちょっかいをかける異性といったら私だけだったので、彼も私の事を嫌っていないと勝手に思っていた。
成長するにつれて恋心も大きく膨らんで、彼もなんだかんだと私を大事にしてくれている事がわかるようになり、気持ちを伝えあった事はないものの同じ気持ちである事を感じ始めたのは、私が16歳になった頃だった。
この日の朝は、ルークスと一緒に王家主催のパーティーに出る事になっていた為、朝から忙しかった。
漆黒の艶のあるストレートの長い黒髪をシニヨンにして、ティアドロップ型の赤いルビーの付いたイヤリングやネックレスを付けた自分自身を鏡で確認すると、化粧をしているせいか、いつもは可愛らしいと言われる私が今日は大人っぽく見えたし、メイド達からも綺麗だと褒めてもらえた。
そうこうしている内に時間になり、ルークスが家まで迎えに来てくれたので、ルークスの家の馬車で一緒に会場に向かう。
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「毎回、リゼは僕の睫毛を見るよな」
「……気付いてたの?」
「気付かないわけないだろ。凝視してるんだから」
ルークスはそう言って、他の女の子には見せない、いたずらっ子の様な笑みを浮かべてくれた。
その笑顔に胸がきゅうと締め付けられて、思わず目を逸らすと、ルークスの方が私の顔を覗き込んでくる。
「どうした? もう見なくていいのか?」
「もう十分です」
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「素直に礼を言えないところは、まだまだお子様だな」
「ルークスだって1つしか変わらないでしょう!? それに私よりも年下じゃない! ……でも、褒めてくれてありがとう」
お礼を言わない事は確かに失礼だと思って口にすると、ルークスは笑って「いつもは可愛いよ」と言ってくれた。
この時の私は、大好きな人と笑い合うこの時間が途切れる事なく続くのだと信じていた。
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