31 / 40
第27話 ヘイストの婚約者
しおりを挟む
王都から何日もかけてモナウ領に入り、無事に私はモナウ家にたどり着く事が出来た。
モナウ家の人達はエッカートお兄様だけでなく、家族全員が私に優しかった。
奥様もわたしの事を実の娘の様に可愛がり、甘やかしてくださった。
私の生い立ちを知ってくれているからかもしれないけど、使用人までもが私を温かく迎えてくれただけでなく、過保護じゃないかと口に出してしまうくらいに優しくて、とても幸せな時間を過ごせた。
女学校の方も途中からの入学とはいえ、モナウ家の娘という事で好意的に受け入れてくれて、少しだけ心配していたいじめみたいなものなんて一切なかった。
ヘイスト様は全寮制の男子校に入られたそうで、今のところ脱走を試みたような事はないらしい。
なぜ、それがわかるかというと、ジェレミー殿下の息のかかった人が、その学園に潜入していて、何かあれば報告してきてくれるんだそう。
ちなみにヘイスト様は、転入してから30日以上経っても友人が出来ていないようだった。
なぜかというと「自分はこんな所に来るべき人間じゃないんだ」と自己紹介の時点で言ってしまったんだそう。
好きでその学校に入学してきた人達にしてみれば、「じゃあ入ってくるな」と言い返したいのが本音だったみたい。
だけど、王子じゃなくなったといっても、相手は公爵令息だから、周りの人間はヘイスト様に何か言うわけでもないけれど、必要以上に話しかけもしないらしくて、普段は教室で1人で寂しそうにしているとの事で、少しだけ可哀想に思えたけれど、自業自得でもあるし、しょうがないと思った。
わたしの第二の学園生活は貴族しかいない学校だったからか、婚約者や恋人のいる人ばかりで、休み明けに顔を合わすと、それぞれの婚約者との話で花を咲かせた。
人の恋の話って幸せなものを聞くと、あたたかい気持ちになるので、とても楽しかった。
もちろん、自分達の事を話し終えた友人達からは、わたしの話をする様に求められたから、ジェレミー殿下との話をした。
ジェレミー殿下は公務が近くであると、何とか時間を作ってわたしに会いに来てくれた。
モナウ家の談話室でお茶を飲んでお話するくらいしか出来なかったけれど、会えると幸せな気持ちになったし、話をするのがとても楽しかった。
もちろん、私も長期休みの時は王都に帰って、別邸でお世話になった。
ジェレミー殿下は仕事で忙しい日の方が多いので、その間は、わたしはわたしで王太子妃の教育を少しずつ受けていった。
ヘイスト様の学園のお休みの日はわかっていたので、彼が休みに入る前に、わたしは早めのお休みをとり、王都へ出発し、帰りもヘイスト様よりも遅くに帰る事にして、彼に会わない様に調整した。
休みの間はヘイスト様も王都に戻ってきていて、毎日、わたしに会いたいと訪ねてきていたそうだけれど、門番が対処してくれて、滞在中は彼の姿を一度も見る事なく済んだ。
王都に戻っていた、とある日の事、ジェレミー殿下が早くに仕事を終えられたという事で、わたしの部屋に遊びに来てくれた。
「ヘイストのせいでせっかくの王都なのに遊びに出かけさせてあげられなくてごめんね」
「とんでもないです。遊びに行きたいという気持ちよりもヘイスト様に会いたくないという気持ちの方が強いですから」
「ヘイストに君から、その言葉を言ってもらっても、彼には理解出来ないんだろうね…。門番にヘイストが何て言っているか知ってる?」
「……どんな事でしょう?」
「離れて、より愛が深まったらしいよ」
「……迷惑ですね」
ヘイスト様はわたしに対して意地になっている様な気もしてきた。
だって、わたしにはそう大した魅力なんてないもの。
ヘイスト様は赤い瞳が嫌いだと言っていたし、わたしだって当てはまるはず。
それなのに、いつまでわたしと復縁しようとしたがるのかしら…。
そんな事を考えていると、ジェレミー殿下が微笑んで言う。
「こっちも何も考えていないわけじゃないよ。ファブロー公爵にはヘイストの新しい婚約者を探す様に伝えてある。その人と上手くいけば、アニエスにも付きまとわなくなるだろうから」
「相手がお気の毒な気もしますが…」
「だから、彼の事を好きだという女性を探している」
そう言われて、キャロライン達の事を思い出した。
「あの、キャロライン…、いえ、セバン元子爵令嬢達はどうなっているのでしょうか」
「……平民として暮らしているよ。幸せではなさそうだけどね」
「どういう事でしょう?」
「ご両親が離婚されて、実の母に捨てられた人もいる」
「……そうなんですか」
問題を起こした娘を切り捨てたというところかしら。
それが3人の内のどの家庭の話なのかはわからないけれど、聞いていても気分が悪くなる話だった。
自分で話題にしておきながらも、これ以上は聞かなくてもわかる気がして、話題を変えた。
それから、約1年後。
卒業を控え、わたしが王都に向かう準備を少しずつ開始し始めた頃、ジェレミー殿下から手紙が届いた。
そこにはヘイスト様の婚約者をファブロー公爵が見つけたと書かれてあり、その相手の名前が書かれていた。
ヘイスト様の新しい婚約者の名前は、ファブロー公爵家の派閥の侯爵令嬢と同じ名前であり、実際にそうだと書かれていて、そして、その侯爵令嬢は、わたしが王城に住む事になった時には、わたしの侍女になりたいと希望しているとの事だった。
モナウ家の人達はエッカートお兄様だけでなく、家族全員が私に優しかった。
奥様もわたしの事を実の娘の様に可愛がり、甘やかしてくださった。
私の生い立ちを知ってくれているからかもしれないけど、使用人までもが私を温かく迎えてくれただけでなく、過保護じゃないかと口に出してしまうくらいに優しくて、とても幸せな時間を過ごせた。
女学校の方も途中からの入学とはいえ、モナウ家の娘という事で好意的に受け入れてくれて、少しだけ心配していたいじめみたいなものなんて一切なかった。
ヘイスト様は全寮制の男子校に入られたそうで、今のところ脱走を試みたような事はないらしい。
なぜ、それがわかるかというと、ジェレミー殿下の息のかかった人が、その学園に潜入していて、何かあれば報告してきてくれるんだそう。
ちなみにヘイスト様は、転入してから30日以上経っても友人が出来ていないようだった。
なぜかというと「自分はこんな所に来るべき人間じゃないんだ」と自己紹介の時点で言ってしまったんだそう。
好きでその学校に入学してきた人達にしてみれば、「じゃあ入ってくるな」と言い返したいのが本音だったみたい。
だけど、王子じゃなくなったといっても、相手は公爵令息だから、周りの人間はヘイスト様に何か言うわけでもないけれど、必要以上に話しかけもしないらしくて、普段は教室で1人で寂しそうにしているとの事で、少しだけ可哀想に思えたけれど、自業自得でもあるし、しょうがないと思った。
わたしの第二の学園生活は貴族しかいない学校だったからか、婚約者や恋人のいる人ばかりで、休み明けに顔を合わすと、それぞれの婚約者との話で花を咲かせた。
人の恋の話って幸せなものを聞くと、あたたかい気持ちになるので、とても楽しかった。
もちろん、自分達の事を話し終えた友人達からは、わたしの話をする様に求められたから、ジェレミー殿下との話をした。
ジェレミー殿下は公務が近くであると、何とか時間を作ってわたしに会いに来てくれた。
モナウ家の談話室でお茶を飲んでお話するくらいしか出来なかったけれど、会えると幸せな気持ちになったし、話をするのがとても楽しかった。
もちろん、私も長期休みの時は王都に帰って、別邸でお世話になった。
ジェレミー殿下は仕事で忙しい日の方が多いので、その間は、わたしはわたしで王太子妃の教育を少しずつ受けていった。
ヘイスト様の学園のお休みの日はわかっていたので、彼が休みに入る前に、わたしは早めのお休みをとり、王都へ出発し、帰りもヘイスト様よりも遅くに帰る事にして、彼に会わない様に調整した。
休みの間はヘイスト様も王都に戻ってきていて、毎日、わたしに会いたいと訪ねてきていたそうだけれど、門番が対処してくれて、滞在中は彼の姿を一度も見る事なく済んだ。
王都に戻っていた、とある日の事、ジェレミー殿下が早くに仕事を終えられたという事で、わたしの部屋に遊びに来てくれた。
「ヘイストのせいでせっかくの王都なのに遊びに出かけさせてあげられなくてごめんね」
「とんでもないです。遊びに行きたいという気持ちよりもヘイスト様に会いたくないという気持ちの方が強いですから」
「ヘイストに君から、その言葉を言ってもらっても、彼には理解出来ないんだろうね…。門番にヘイストが何て言っているか知ってる?」
「……どんな事でしょう?」
「離れて、より愛が深まったらしいよ」
「……迷惑ですね」
ヘイスト様はわたしに対して意地になっている様な気もしてきた。
だって、わたしにはそう大した魅力なんてないもの。
ヘイスト様は赤い瞳が嫌いだと言っていたし、わたしだって当てはまるはず。
それなのに、いつまでわたしと復縁しようとしたがるのかしら…。
そんな事を考えていると、ジェレミー殿下が微笑んで言う。
「こっちも何も考えていないわけじゃないよ。ファブロー公爵にはヘイストの新しい婚約者を探す様に伝えてある。その人と上手くいけば、アニエスにも付きまとわなくなるだろうから」
「相手がお気の毒な気もしますが…」
「だから、彼の事を好きだという女性を探している」
そう言われて、キャロライン達の事を思い出した。
「あの、キャロライン…、いえ、セバン元子爵令嬢達はどうなっているのでしょうか」
「……平民として暮らしているよ。幸せではなさそうだけどね」
「どういう事でしょう?」
「ご両親が離婚されて、実の母に捨てられた人もいる」
「……そうなんですか」
問題を起こした娘を切り捨てたというところかしら。
それが3人の内のどの家庭の話なのかはわからないけれど、聞いていても気分が悪くなる話だった。
自分で話題にしておきながらも、これ以上は聞かなくてもわかる気がして、話題を変えた。
それから、約1年後。
卒業を控え、わたしが王都に向かう準備を少しずつ開始し始めた頃、ジェレミー殿下から手紙が届いた。
そこにはヘイスト様の婚約者をファブロー公爵が見つけたと書かれてあり、その相手の名前が書かれていた。
ヘイスト様の新しい婚約者の名前は、ファブロー公爵家の派閥の侯爵令嬢と同じ名前であり、実際にそうだと書かれていて、そして、その侯爵令嬢は、わたしが王城に住む事になった時には、わたしの侍女になりたいと希望しているとの事だった。
97
お気に入りに追加
5,076
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる