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23 お姉様との喧嘩
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私達が辺境伯家のパーティーにお呼ばれしている間、他国や貴族、イベントへの招待状などがたくさんたまっており、それに対する返事、スケジュール調整をしなくてはいけないという事で、帰り着いてからは、休んでいる暇はなく、私とクレイは手分けをして仕事にかかりました。
お父様の方は健康になられてからは、色々な行事に引っ張りだこで、主に他国へ行っていらっしゃり、目的地にたどり着くまでに何日もかかりますので、全然会えていません。
今頃はこちらに戻っている最中かと思われますので、その時が久しぶりの再会となります。
お姉様は国内での行事に主に参加しておられますが、寒い時期はほとんど行事がありませんので、今の時期は暇にしておられるのですが、地味な仕事は嫌いだと言って、私とクレイがやっている返事を書く作業などは手伝う気はないようです。
自分が女王になっても、他の人に、この仕事をやらせようと思っているからでしょうね。
そんな訳で、アール様とお姉様の事は後回しになっていた、ある日の事でした。
「バーキン様はいらっしゃらないの?!」
自分の執務室で仕事をしていると、お姉様はノックもなしに部屋の中に入ってこられたかと思うと、そう叫ばれました。
「バーキン様はいらっしゃいません。バーキン様の部屋はここではありませんから。宿舎にいらっしゃるのでは?」
「男性用の宿舎でしょう? わたし一人で行くなんて無理だわ。襲われたらどうするの」
「襲った男性が処刑される可能性がありますね」
「わたしの体は心配しないというわけね?」
「お姉様は、ここ最近、私が見える様になったのですね?」
面倒になってきましたので、話を切り上げる為に聞いてみますと、お姉様は焦った様な顔をされます。
「何よ、今までだって見えていたわよ!」
「そうですか? 目の前で話しかけても返事もして下さらなかったんですが?」
「あなたの影が薄すぎたのよ! あなた、気付いていなかったみたいだけど、ビクビクして、すぐに身体を小さくしていたじゃない。社交場に出る時はコルセットで誤魔化してたみたいだけど、猫背だなんてみっともないったらありゃしない!」
お姉様の言葉を聞いて、私は手紙を書く手を止めて、椅子から立ち上がって言います。
「なぜ、そうなったかわからないんですか」
「な、何よいきなり」
「どうして私が猫背になったか、わからないのかと聞いてるんです」
「そ、それは勉強のし過ぎででしょ!?」
「本気でそう思っているんですか? 驚きですね」
国花が出てからの私、クレイと出会ってからの私は、悪かったのは、お姉様やお母様だけじゃなかった事に気付きました。
お母様やお姉様に可愛がってもらえない事を嘆いて、自分を責めて、自信をなくして、少しでも小さくなって、お姉様達にいじめられない様にしたかった。
その頃の私は、そんな事をしたって意味がない事に気付いてないどころか、自分が猫背になっている自覚もなかったんです。
今となっては、そんな弱虫だった自分も悪かったんだとわかってきました。
だから、今は違います。
俯いていても何も変わりません。
どうせ、嫌な事を言う人からは何をやっても、何を言っても好かれないし、いじめられるんです。
それなら、顔を上げて、言いたいことを言わせてもらいます。
「自分に自信がなかったからですよ。お姉様には嫌なことを言われ、お母様からは無視。まだ、幼かった私は、自分が最低で最悪な人間に思えて、自然と猫背になっていたんですよ」
「わたしのせいにしないで頂戴! 悪いのはあなたよ!」
「お姉様のせいにはしていませんよ。自分自身の問題だという事くらいわかっています! ですが、元々はお姉様達が私に嫌な事をしなければ良かっただけの話ではないのですか?!」
猫背が悪いと言うなら責めればいいです。
けれど、そうなった理由も考えずに言われたくなんかないです。
「何よ! 結局は自分の弱さをわたしのせいにしているだけじゃないの!」
「ええ。私が弱かったのも原因です。ですが、私に嫌がらせをしたお姉様は、何も悪くないとでも?」
「悪い事なんてしていないわ! 大体、娘二人なんていらないのよ! 知ってた? お母様があなたに冷たい理由を」
「どうでもいいです」
「聞きなさいよ! お母様があなたに冷たいのは、息子じゃなかったから! わたしがいるんだから、娘なんていらなかったのよ! あなたなんか生まれてこなくて良かったのにって言ってたわ!」
「うるせえな」
私がお姉様の言葉に何か言い返す前に、クレイが部屋に入ってきて言いました。
「クレイ」
「隣の部屋まで聞こえてるぞ」
白シャツに黒のパンツ姿という、ラフな格好のクレイは、私に向かって言った後、お姉様を見て言います。
「隣の部屋は俺の執務室なんだが、声が大きくて筒抜けだよ。どんな話をしていたかは、バーキンに話しておいてやる」
「や、止めて!」
「何で、俺があんたの言う事をきかないといけないんだ?」
「婿養子の分際で!」
「ああ、そうかもしれない。だけど、自分の嫁さんが酷い事を言われてんのに黙ってる訳にもいかないだろ」
クレイの言葉に、なぜか胸がドキドキしてきました。
嫁さんって、何だか素敵な響きです!
「とにかく出てけよ。あ、それから、あんたの婚約者候補のアールだけど、あんた以外にも女がいるぞ。まあ、彼女ってわけではないけどな」
クレイがさらりと言った言葉を聞いて、お姉様の動きが止まったのでした。
お父様の方は健康になられてからは、色々な行事に引っ張りだこで、主に他国へ行っていらっしゃり、目的地にたどり着くまでに何日もかかりますので、全然会えていません。
今頃はこちらに戻っている最中かと思われますので、その時が久しぶりの再会となります。
お姉様は国内での行事に主に参加しておられますが、寒い時期はほとんど行事がありませんので、今の時期は暇にしておられるのですが、地味な仕事は嫌いだと言って、私とクレイがやっている返事を書く作業などは手伝う気はないようです。
自分が女王になっても、他の人に、この仕事をやらせようと思っているからでしょうね。
そんな訳で、アール様とお姉様の事は後回しになっていた、ある日の事でした。
「バーキン様はいらっしゃらないの?!」
自分の執務室で仕事をしていると、お姉様はノックもなしに部屋の中に入ってこられたかと思うと、そう叫ばれました。
「バーキン様はいらっしゃいません。バーキン様の部屋はここではありませんから。宿舎にいらっしゃるのでは?」
「男性用の宿舎でしょう? わたし一人で行くなんて無理だわ。襲われたらどうするの」
「襲った男性が処刑される可能性がありますね」
「わたしの体は心配しないというわけね?」
「お姉様は、ここ最近、私が見える様になったのですね?」
面倒になってきましたので、話を切り上げる為に聞いてみますと、お姉様は焦った様な顔をされます。
「何よ、今までだって見えていたわよ!」
「そうですか? 目の前で話しかけても返事もして下さらなかったんですが?」
「あなたの影が薄すぎたのよ! あなた、気付いていなかったみたいだけど、ビクビクして、すぐに身体を小さくしていたじゃない。社交場に出る時はコルセットで誤魔化してたみたいだけど、猫背だなんてみっともないったらありゃしない!」
お姉様の言葉を聞いて、私は手紙を書く手を止めて、椅子から立ち上がって言います。
「なぜ、そうなったかわからないんですか」
「な、何よいきなり」
「どうして私が猫背になったか、わからないのかと聞いてるんです」
「そ、それは勉強のし過ぎででしょ!?」
「本気でそう思っているんですか? 驚きですね」
国花が出てからの私、クレイと出会ってからの私は、悪かったのは、お姉様やお母様だけじゃなかった事に気付きました。
お母様やお姉様に可愛がってもらえない事を嘆いて、自分を責めて、自信をなくして、少しでも小さくなって、お姉様達にいじめられない様にしたかった。
その頃の私は、そんな事をしたって意味がない事に気付いてないどころか、自分が猫背になっている自覚もなかったんです。
今となっては、そんな弱虫だった自分も悪かったんだとわかってきました。
だから、今は違います。
俯いていても何も変わりません。
どうせ、嫌な事を言う人からは何をやっても、何を言っても好かれないし、いじめられるんです。
それなら、顔を上げて、言いたいことを言わせてもらいます。
「自分に自信がなかったからですよ。お姉様には嫌なことを言われ、お母様からは無視。まだ、幼かった私は、自分が最低で最悪な人間に思えて、自然と猫背になっていたんですよ」
「わたしのせいにしないで頂戴! 悪いのはあなたよ!」
「お姉様のせいにはしていませんよ。自分自身の問題だという事くらいわかっています! ですが、元々はお姉様達が私に嫌な事をしなければ良かっただけの話ではないのですか?!」
猫背が悪いと言うなら責めればいいです。
けれど、そうなった理由も考えずに言われたくなんかないです。
「何よ! 結局は自分の弱さをわたしのせいにしているだけじゃないの!」
「ええ。私が弱かったのも原因です。ですが、私に嫌がらせをしたお姉様は、何も悪くないとでも?」
「悪い事なんてしていないわ! 大体、娘二人なんていらないのよ! 知ってた? お母様があなたに冷たい理由を」
「どうでもいいです」
「聞きなさいよ! お母様があなたに冷たいのは、息子じゃなかったから! わたしがいるんだから、娘なんていらなかったのよ! あなたなんか生まれてこなくて良かったのにって言ってたわ!」
「うるせえな」
私がお姉様の言葉に何か言い返す前に、クレイが部屋に入ってきて言いました。
「クレイ」
「隣の部屋まで聞こえてるぞ」
白シャツに黒のパンツ姿という、ラフな格好のクレイは、私に向かって言った後、お姉様を見て言います。
「隣の部屋は俺の執務室なんだが、声が大きくて筒抜けだよ。どんな話をしていたかは、バーキンに話しておいてやる」
「や、止めて!」
「何で、俺があんたの言う事をきかないといけないんだ?」
「婿養子の分際で!」
「ああ、そうかもしれない。だけど、自分の嫁さんが酷い事を言われてんのに黙ってる訳にもいかないだろ」
クレイの言葉に、なぜか胸がドキドキしてきました。
嫁さんって、何だか素敵な響きです!
「とにかく出てけよ。あ、それから、あんたの婚約者候補のアールだけど、あんた以外にも女がいるぞ。まあ、彼女ってわけではないけどな」
クレイがさらりと言った言葉を聞いて、お姉様の動きが止まったのでした。
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