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18 アール様の弱み
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その日の夜は、招待してくれた辺境伯家から私とクレイ、そしてバーキン様は、個人的に接待を受けました。
他の招待客の方は当日にいらっしゃり、別棟の方に希望された方だけ泊まっていかれるそうです。
最初は私とクレイの部屋の一部屋だけを用意して下さっていたようですが、馬車で宿に向かうと言ったバーキン様を辺境伯夫妻が引き止められて、部屋を急遽、もう一部屋用意して下さり、バーキン様も私達と一緒にディナーをご馳走になりました。
バーキン様は伯爵ですけれど、私達とつながりがあるなら、仲良くしておいた方が良いと思われたのでしょうね。
問題のアール様ですが、パートナーはおらず、一人だけの出席ですから、今頃はクレイの言っていたお店に足を運ばれているのでしょうか。
クレイに話を聞いてみたところ、アール様が通っておられるお店は、美しい、もしくは可愛い女性が接待をしてくれるお店で、常連になると、お店の外でデートしたりできるそうです。
私としては、そういったお店に行く事は悪いとは思っていませんが、お姉様は好きではなさそうです。
自分よりも他の女性に目がいっているという事ですからね。
証拠をおさえて、お姉様に教えてさしあげましょう。
アール様は、お姉様にはお姉様以外の女性に魅力を感じた事はないと仰っているようですし、この事を知ったら、嘘をつかれたと思うはずです。
あとは、お姉様がどう判断するかです。
アール様を気に入っておられるなら、許してさしあげるでしょうし、そうでなければ、婚約を解消してくれるかもしれません。
アール様には少し気の毒ですけど、婚約披露パーティーの時に暴言を吐かれましたし、ちょっと仕返しです。
何より、オッサムとお姉様を結婚させるには、アール様は邪魔なのです。
バーキン様はお姉様に興味がありませんから、お姉様がどんなに好きになっても叶わぬ恋です。
と、こんな事を考えているという事は、なんだか、性格がどんどん悪くなっている気がします。
でも、アール様だって悪いですよね!
それに女王になるのであれば、心が綺麗なだけではいられません!
そりゃ顔が不細工で申し訳ないとは思いますよ。
でも、お父様や侍女達は可愛いと言ってくれますし、人の好みの問題もありますので、許していただきたいです。
それに、思っていたとしても、それを面と向かって、不細工だとはっきり言うのはどうかと思うんです。
私の顔がアール様の好みじゃないだけですよ!
お店にいる人は可愛い、もしくは綺麗な人しかいないらしいので、アール様は特に目が肥えておられるという事にします。
ちなみに、アール様がお店に行っているかどうかを確認してくれるのはバーキン様です。
私が直接聞いたわけではないのですが、バーキン様はそのお店には、接待で連れて行かれた事があるらしいのと、私の為にしょうがないから行ってくると言っておられたみたいです。
たぶん、私の為ではないと思います。
バーキン様からアール様の話は明日の朝に聞く事になったのですが、問題は、今日でした。
クレイと同じベッドに寝ないといけないからです!
といっても、始めは緊張しておりましたが、ベッドも広い事もあり、お互いに背を向けてお話をしている内に、旅の疲れもあったのか、すぐに眠くなり、私は知らぬ間に眠ってしまっておりました。
次の日の朝、人が動く気配がして目を覚ますと、薄暗い部屋の中を物音を立てないように動いているクレイの姿が見えました。
「おはようございます」
「おはよう。悪い、起こしちまったな」
「いえいえ」
身体を起こして、窓の方を見ると、カーテンの隙間から明るい光が差し込んでいました。
「よく眠れたか?」
「はい! クレイも眠れましたか?」
「……ああ、一応」
クレイも寝間着姿なので服を着替えるようで、男性の生着替えをまじまじと見るわけにはいきません。
私が洗面所へ行っている間に着替えてもらう事にしました。
昨日の晩、私達が眠るまでにバーキン様は帰ってこられませんでしたが、前日に辺境伯にお願いしていた朝食の時間には、普段と変わらない様子で、私達の部屋にやって来られました。
辺境伯は、今日のパーティーの件で忙しい様なので、私達のお部屋にバーキン様の分も一緒に朝食を運んでもらう事になったからです。
「アールはお気に入りの女性とデートしてたんだ。僕に見つかった時のアールの顔を君達にも見せてやりたかった」
私達は朝食を食べながら、バーキン様の話を聞きます。
「アールからはブランカ様に絶対に言わないでくれとお願いされた。でも、ブランカ様には言わないという約束しかしてないから、僕は君達に話してる。それから写真を護衛が撮ってくれてた。隠し撮りだな」
「悪い人です!」
「リサちゃん、僕は君のために頑張ったんだから、もうちょっと優しくしてくれよ」
「バーキン様、すごいです! さすがです!」
「何がすごくて褒めてんだよ」
褒めなければいけない場面だと気付かなかった私は、バーキン様を慌てて褒め称えたのですが、やはり褒めるべきところではなかったようで、クレイに呆れられてしまいました。
「私の為に頑張ってくれたと仰ったので、感謝の気持ちはお伝えしないといけないと思いまして」
「バーキンには言わなくていい。バーキンだけはこき使ってもいい」
「どうしてお前は僕にそんなに冷たいんだよ! 愛情の裏返しか?」
「そんな訳あるか!」
バーキン様とクレイが仲良く喧嘩を始めてしまいました。
仲良しだから出来る喧嘩です。
二人をしばらく見守ってから、話の本題に入ってもらう事にしました。
他の招待客の方は当日にいらっしゃり、別棟の方に希望された方だけ泊まっていかれるそうです。
最初は私とクレイの部屋の一部屋だけを用意して下さっていたようですが、馬車で宿に向かうと言ったバーキン様を辺境伯夫妻が引き止められて、部屋を急遽、もう一部屋用意して下さり、バーキン様も私達と一緒にディナーをご馳走になりました。
バーキン様は伯爵ですけれど、私達とつながりがあるなら、仲良くしておいた方が良いと思われたのでしょうね。
問題のアール様ですが、パートナーはおらず、一人だけの出席ですから、今頃はクレイの言っていたお店に足を運ばれているのでしょうか。
クレイに話を聞いてみたところ、アール様が通っておられるお店は、美しい、もしくは可愛い女性が接待をしてくれるお店で、常連になると、お店の外でデートしたりできるそうです。
私としては、そういったお店に行く事は悪いとは思っていませんが、お姉様は好きではなさそうです。
自分よりも他の女性に目がいっているという事ですからね。
証拠をおさえて、お姉様に教えてさしあげましょう。
アール様は、お姉様にはお姉様以外の女性に魅力を感じた事はないと仰っているようですし、この事を知ったら、嘘をつかれたと思うはずです。
あとは、お姉様がどう判断するかです。
アール様を気に入っておられるなら、許してさしあげるでしょうし、そうでなければ、婚約を解消してくれるかもしれません。
アール様には少し気の毒ですけど、婚約披露パーティーの時に暴言を吐かれましたし、ちょっと仕返しです。
何より、オッサムとお姉様を結婚させるには、アール様は邪魔なのです。
バーキン様はお姉様に興味がありませんから、お姉様がどんなに好きになっても叶わぬ恋です。
と、こんな事を考えているという事は、なんだか、性格がどんどん悪くなっている気がします。
でも、アール様だって悪いですよね!
それに女王になるのであれば、心が綺麗なだけではいられません!
そりゃ顔が不細工で申し訳ないとは思いますよ。
でも、お父様や侍女達は可愛いと言ってくれますし、人の好みの問題もありますので、許していただきたいです。
それに、思っていたとしても、それを面と向かって、不細工だとはっきり言うのはどうかと思うんです。
私の顔がアール様の好みじゃないだけですよ!
お店にいる人は可愛い、もしくは綺麗な人しかいないらしいので、アール様は特に目が肥えておられるという事にします。
ちなみに、アール様がお店に行っているかどうかを確認してくれるのはバーキン様です。
私が直接聞いたわけではないのですが、バーキン様はそのお店には、接待で連れて行かれた事があるらしいのと、私の為にしょうがないから行ってくると言っておられたみたいです。
たぶん、私の為ではないと思います。
バーキン様からアール様の話は明日の朝に聞く事になったのですが、問題は、今日でした。
クレイと同じベッドに寝ないといけないからです!
といっても、始めは緊張しておりましたが、ベッドも広い事もあり、お互いに背を向けてお話をしている内に、旅の疲れもあったのか、すぐに眠くなり、私は知らぬ間に眠ってしまっておりました。
次の日の朝、人が動く気配がして目を覚ますと、薄暗い部屋の中を物音を立てないように動いているクレイの姿が見えました。
「おはようございます」
「おはよう。悪い、起こしちまったな」
「いえいえ」
身体を起こして、窓の方を見ると、カーテンの隙間から明るい光が差し込んでいました。
「よく眠れたか?」
「はい! クレイも眠れましたか?」
「……ああ、一応」
クレイも寝間着姿なので服を着替えるようで、男性の生着替えをまじまじと見るわけにはいきません。
私が洗面所へ行っている間に着替えてもらう事にしました。
昨日の晩、私達が眠るまでにバーキン様は帰ってこられませんでしたが、前日に辺境伯にお願いしていた朝食の時間には、普段と変わらない様子で、私達の部屋にやって来られました。
辺境伯は、今日のパーティーの件で忙しい様なので、私達のお部屋にバーキン様の分も一緒に朝食を運んでもらう事になったからです。
「アールはお気に入りの女性とデートしてたんだ。僕に見つかった時のアールの顔を君達にも見せてやりたかった」
私達は朝食を食べながら、バーキン様の話を聞きます。
「アールからはブランカ様に絶対に言わないでくれとお願いされた。でも、ブランカ様には言わないという約束しかしてないから、僕は君達に話してる。それから写真を護衛が撮ってくれてた。隠し撮りだな」
「悪い人です!」
「リサちゃん、僕は君のために頑張ったんだから、もうちょっと優しくしてくれよ」
「バーキン様、すごいです! さすがです!」
「何がすごくて褒めてんだよ」
褒めなければいけない場面だと気付かなかった私は、バーキン様を慌てて褒め称えたのですが、やはり褒めるべきところではなかったようで、クレイに呆れられてしまいました。
「私の為に頑張ってくれたと仰ったので、感謝の気持ちはお伝えしないといけないと思いまして」
「バーキンには言わなくていい。バーキンだけはこき使ってもいい」
「どうしてお前は僕にそんなに冷たいんだよ! 愛情の裏返しか?」
「そんな訳あるか!」
バーキン様とクレイが仲良く喧嘩を始めてしまいました。
仲良しだから出来る喧嘩です。
二人をしばらく見守ってから、話の本題に入ってもらう事にしました。
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