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7   協力者

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 まずは、クレイ様にはティーテーブル用の椅子に座ってもらい、メイドにお茶を入れてもらいました。
 そして、私の部屋で2人きりになってから、彼の向かいの椅子に座り、クレイ様から詳しい話を聞いてみたところ、クレイ様が好きだった公爵令嬢は、言葉遣いの悪い男性がタイプだと言っておられたんだそうです。

 だから、わざと言葉遣いを悪くし、彼女に好かれようと頑張られたようなのですが、その公爵令嬢が好きになった人は、言葉遣いは悪いですが、とてもチャラい男性だったんだそうです。
 クレイ様はけじめをつける為に、彼女に思いも伝えられたそうで、フラレた理由は、言葉遣いが悪いにも程があるという事と自分の事を俺という人が嫌いだという理由だったとの事です。

 そんな理由でフラれるなんて、ちょっと可哀想なのです。
 それならまだ、好きな人がいるから、で良いという気がするのですが…。
 まあ、婚約者がいる方に告白されて、相手の方も困られたから、そういうお断りの仕方をしたのかもしれませんが…。

「私は自分の事を俺という人の事も好きですが、人によっては好みがありますよね。でも、言葉使いが悪い人は自分の事を俺と呼ぶ人が多いと思うのですが…。まあ、良い経験になったという事で!」
「…君はちょっと、いや、だいぶ変わってると思う」
「褒めていただき、ありがとうございます」
「いや、褒めたわけでは…」
「失礼ついでに聞いてしまいますが、婚約者の方とうまくいかなかったのは、失恋が原因ですか…」
「元婚約者は言葉遣いの悪い人間が嫌いだった、というのが表向きの理由で、元々、彼女にも好きな男がいて、彼女はその男と上手くいきそうだから、俺との婚約を解消したかった。だけど、そんな理由を言ったら、彼女の評判が悪くなるだろ?」

 クレイ様が悲しげな笑みを浮かべて言いました。

 最初は婚約者がいるのに好きな人がいる、というクレイ様の気持ちは、わかるけれども婚約者の方が可哀想だと思っていましたが、婚約者の方も他の方を思っていたのなら、クレイ様だけが悪いとも思えません。

 しかも、最終的に評判が悪くなったのは、クレイ様だけです。

 私は言葉遣いの悪い人はワイルドな感じがして好きです。
 かといって、それを伝えても、クレイ様に喜んでもらえるとは思えませんし、必要になった時に、その事はお伝えする事にして、早速、本題に入ろうと思います。

「失礼な事を聞いてしまい、申し訳ございませんでした。色々と事情がお有りな事は了解いたしました! でも、私は言葉遣いの悪さなんて気にしませんから! もちろん公の場では気を付けていただきたいですが!」

 そこまで言ってから、言葉を区切り、テーブルに身を乗り出して、クレイ様にお願いします。

「クレイ様、ぜひ、私のお飾りの夫になっていただけませんでしょうか?」
「は?」
「クレイ様はまだ完璧に初恋の女性を諦められたわけではないんでしょう? 先程も言いましたが、ストーキングするとかそういう事をしないのであれば、思い続けても良いと思います! そして、私はそれを応援いたします!」
「いや、それもどうなんだよ」
「わたくし、恥ずかしながら、初恋というものもまだでして、恋愛というものに興味もございません!」
「は…はあ」

 クレイ様はドン引きされておられますが、そういう事を気にしていられませんので、このまま話をさせていただきます。

「無理にクレイ様に恋をしようとして、逆に、何この人ムカつく、みたいになっても嫌なんです」
「本人を目の前にして、よくそんな事が言えるな」
「今はそんな事を思っておりませんので」
「良くも悪くもお前は正直すぎるよ。あ、悪い。お前って言ってしまった」
「大丈夫です。二人きりの時は、私の事をお前と呼んで下さってかまいません! ですが、他の方には止めて下さい。良く思わない方もたくさんおられますし、マナーです」
「わかってる」
「あと、嘘をつくつもりでしたら、上手に演技できる自信はございますので、正直とは言えないかもしれません! 必要な嘘なら平気でつけますよ!」
「ちょ、この次期女王こえーよ」

 クレイ様はツッコんだあと、顎に手を当てて続けます。

「まあ、悪い方向にいかないなら良いか。きっと良い女王になるから、国花が浮き出たんだろうしな」
「お母様達への復讐として、私がどこかへ旅に出た後、私が女王だったとわかり、お母様達に戻って来いとか言わせるのも楽しいのかもしれませんが、私は城からほとんど出た事がありませんので、1人で城を出たとしますと、2日くらいで死んでしまいそうな気がします」
「自信満々に言うなよ、そんな事…」
「2日もっただけでもすごいと思いませんか?」
「というか、死ぬくらいなら城に帰れよ」
「それ、ただの家出じゃないですか」
「どっちみち一緒だよ!」

 そこまで言って、クレイ様が何故か声を上げて笑い始めました。

「ほんと、変わってるお姫様だな」
「話し相手がいませんでしたので、妄想して過ごしておりましたから」
「じゃあ、これから話し相手になってやるよ」
「本当ですか? では、私のこれからの計画を聞いていただけませんでしょうか」
「聞くのが怖い気もするけど、一応聞く」
「クレイ様にも協力いただければ助かるのですが、私、元婚約者からは王配になりたいから、お姉様と結婚すると断られまして」
「アホだな、そいつ」
「ですよね。自ら、王配の座を逃したわけです! ので、後悔していただこうと思うんです!」

 拳を握りしめて言う私に、クレイ様は眉間にシワを寄せて聞き返してくる。

「後悔していただく、っていうのは?」
「これはロンバルディ国王陛下の案なのですが、お姉様と私の元婚約者を結婚させてから、私の胸に国花が出た事を発表します」
「悪い奴だな」
「良い人間ではございません」
「よし。お前の元婚約者については親父からも聞いてるし、協力する」
「国王様を親父ですか」
「いや、こんなだからフラれたんだよ」

 ガシガシと頭をかくクレイ様がなんだか私は可愛らしく思えたので言います。

「クレイ様はそのままでいて下さいね」
「フラれ続けろと?」
「お飾りの夫になるわけですし、既婚者はお断りという事で、たぶん、もっとフラれるようになるでしょうね!」
「ああ、もう恋なんてするか!!」

 クレイ様が頭を抱えながら叫ばれました。
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