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2 誕生日プレゼント
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誕生日の朝は、特にいつもと変わりはありませんでした。
私は一年に2ヶ月しかない、寒い時期の生まれで、この時期は外に雪が積もっているのが当たり前の国で暮らしています。
そんな時期でも、私の誕生日パーティーは、毎年開かれはするのですが、主役はなぜかお姉様です。
もちろん、そんな事になったのは、お父様が寝たきりになってしまわれてからですけれども。
それまでは、私も盛大に祝っていただいておりました。
「リサ様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう!」
私に付いてくれている侍女やメイド達、お母様とお姉様に密かに不満を持っていたり、二人と関わりのない使用人達は、差別を受けている私を不憫に思ってくれていて、その分とても優しいんです。
なんと、使用人一同からといって、私が欲しかった、市政で人気の恋愛小説をたくさんプレゼントしてくれました。
今日は花瓶に活けられている花も、いつもよりゴージャスな感じがします。
彼女達の存在があるから、お母様やお姉様に無視され続けていても何とか、心が折れずにやってこれました。
考えてみたら、無視だなんて子供みたいですね。
しかも、もう10年も続いているんですから、逆に話しかけられでもしたら怖くなってきます。
「誕生日パーティーが終わりましたら、ケーキを用意しておりますので、お部屋にお持ちしますね」
「いつもありがとう。料理長達にもお礼を言わないといけませんね」
お姉様には侍女が五人、メイドは十数人いるのですが、私には侍女が一人、メイドが五人しかいません。
少ない中で交代で休みをとって働いてくれています。
もっと休みが欲しいはずなのに、文句を言わずに頑張ってくれる彼女達に感謝です。
「いつも通り、すぐ帰ってくる事になると思うから、よろしくね」
そう。
この時はそう思っていました。
いつもなら、来てくださった方々に挨拶を終えたら、すぐに引っ込む様に、お母様の侍女を介して言われていましたので、今回もそうなるはずだったのです。
なのに…。
パーティーが始まり、挨拶という任務を終えた私は、さっさと自分の部屋に戻ろうとしていました。
ですが、お姉様の侍女に呼び止められ、付いてくる様に促されたので、嫌々ながらも付いていくと、人が争っている声が聞こえてきました。
そして、その中にはお姉様の声もありました。
こんな事を言ってはなんですが、お姉様の地声はとても低いのです。
ですが、男性を前にすると、恐ろしく甲高い声になります。
まさしく、聞こえてきたのは、その声でした。
「やめて! 喧嘩なんてしないで! あなたはリサの婚約者じゃないの!」
「俺はリサよりもブランカが好きなんだ! ブランカ、俺と結婚してくれ!」
「駄目よ、オッサム! 私にはアールがいるのよ!」
「そうだぞ! ブランカは僕の婚約者だ!」
ブランカは姉の名前。
オッサムは私の婚約者の名前。
アールはお姉様の婚約者の名前です。
この寒い中にわざわざ外に出て、パーティー会場の建物の裏側にある外灯の下で、私の婚約者とお姉様の婚約者がつかみいの喧嘩をしていました。
ああ。
嫌になります。
今日は私の誕生日なんですよ?
なんでこんな場面を見ないといけないんです?
しかも、この寒い中に!
喧嘩するなら、せめて中でやって下さいよ!
「リサ! あなたは来ちゃ駄目よ!」
お姉様は主役の私よりも派手なドレスに身を包んでいて、鳶色の長い縦ロールの髪を揺らしながら私に近付いてきたかと思うと、耳元で囁きます。
「オッサムの気持ちを知れて良かったでしょう? これがわたしからの誕生日プレゼントよ!」
悪趣味すぎます。
お父様はあんなに優しい方なのに、お姉様は本当にお父様の血が流れているんでしょうか?
それとも、お母様の性格が悪すぎるのですか?
だから、お姉様の性格も最悪なんですか?
今までは誕生日プレゼントはおろか、話しかけてくる事もなかったのに、久しぶりに妹に話しかけてきた言葉がそれですか!
しかも、こんな所にまで呼び出して、何を考えてるんでしょう。
「リサ…。すまない。君の事も可愛いと思っているし、可哀想だとも思っている。だけど、僕は王配になりたいんだ!」
オッサムは私の前にやって来て、整った顔を歪めてから、深々と頭を下げた。
彼の茶色の肩まであるストレートの髪が大きく揺れる。
ああ。
もう、どうでもいいです。
好きなようにすればいいんですよ。
私だって、別にあなたを好きだったわけではないですから。
「私の事は気にしないで下さい」
「君の誕生日だっていうのに、こんな事になって、本当に申し訳ない」
「良いんです。婚約破棄が誕生日プレゼントですか? たとえそうだとしても、慰謝料はいただきたいです」
「もちろんだ」
「では、明日にでも連絡を入れさせていただきますね」
カーテシーをしてから、私はくるりと踵を返した。
本当に惨めです。
私はなんのために生まれてきたんでしょう?
お母様やお姉様のストレス発散の道具なのでしょうか?
去り際、お姉様がにやりと笑ったのを見て、こんな人間が私の家族なのかと泣き出したくなりました。
私は一年に2ヶ月しかない、寒い時期の生まれで、この時期は外に雪が積もっているのが当たり前の国で暮らしています。
そんな時期でも、私の誕生日パーティーは、毎年開かれはするのですが、主役はなぜかお姉様です。
もちろん、そんな事になったのは、お父様が寝たきりになってしまわれてからですけれども。
それまでは、私も盛大に祝っていただいておりました。
「リサ様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう!」
私に付いてくれている侍女やメイド達、お母様とお姉様に密かに不満を持っていたり、二人と関わりのない使用人達は、差別を受けている私を不憫に思ってくれていて、その分とても優しいんです。
なんと、使用人一同からといって、私が欲しかった、市政で人気の恋愛小説をたくさんプレゼントしてくれました。
今日は花瓶に活けられている花も、いつもよりゴージャスな感じがします。
彼女達の存在があるから、お母様やお姉様に無視され続けていても何とか、心が折れずにやってこれました。
考えてみたら、無視だなんて子供みたいですね。
しかも、もう10年も続いているんですから、逆に話しかけられでもしたら怖くなってきます。
「誕生日パーティーが終わりましたら、ケーキを用意しておりますので、お部屋にお持ちしますね」
「いつもありがとう。料理長達にもお礼を言わないといけませんね」
お姉様には侍女が五人、メイドは十数人いるのですが、私には侍女が一人、メイドが五人しかいません。
少ない中で交代で休みをとって働いてくれています。
もっと休みが欲しいはずなのに、文句を言わずに頑張ってくれる彼女達に感謝です。
「いつも通り、すぐ帰ってくる事になると思うから、よろしくね」
そう。
この時はそう思っていました。
いつもなら、来てくださった方々に挨拶を終えたら、すぐに引っ込む様に、お母様の侍女を介して言われていましたので、今回もそうなるはずだったのです。
なのに…。
パーティーが始まり、挨拶という任務を終えた私は、さっさと自分の部屋に戻ろうとしていました。
ですが、お姉様の侍女に呼び止められ、付いてくる様に促されたので、嫌々ながらも付いていくと、人が争っている声が聞こえてきました。
そして、その中にはお姉様の声もありました。
こんな事を言ってはなんですが、お姉様の地声はとても低いのです。
ですが、男性を前にすると、恐ろしく甲高い声になります。
まさしく、聞こえてきたのは、その声でした。
「やめて! 喧嘩なんてしないで! あなたはリサの婚約者じゃないの!」
「俺はリサよりもブランカが好きなんだ! ブランカ、俺と結婚してくれ!」
「駄目よ、オッサム! 私にはアールがいるのよ!」
「そうだぞ! ブランカは僕の婚約者だ!」
ブランカは姉の名前。
オッサムは私の婚約者の名前。
アールはお姉様の婚約者の名前です。
この寒い中にわざわざ外に出て、パーティー会場の建物の裏側にある外灯の下で、私の婚約者とお姉様の婚約者がつかみいの喧嘩をしていました。
ああ。
嫌になります。
今日は私の誕生日なんですよ?
なんでこんな場面を見ないといけないんです?
しかも、この寒い中に!
喧嘩するなら、せめて中でやって下さいよ!
「リサ! あなたは来ちゃ駄目よ!」
お姉様は主役の私よりも派手なドレスに身を包んでいて、鳶色の長い縦ロールの髪を揺らしながら私に近付いてきたかと思うと、耳元で囁きます。
「オッサムの気持ちを知れて良かったでしょう? これがわたしからの誕生日プレゼントよ!」
悪趣味すぎます。
お父様はあんなに優しい方なのに、お姉様は本当にお父様の血が流れているんでしょうか?
それとも、お母様の性格が悪すぎるのですか?
だから、お姉様の性格も最悪なんですか?
今までは誕生日プレゼントはおろか、話しかけてくる事もなかったのに、久しぶりに妹に話しかけてきた言葉がそれですか!
しかも、こんな所にまで呼び出して、何を考えてるんでしょう。
「リサ…。すまない。君の事も可愛いと思っているし、可哀想だとも思っている。だけど、僕は王配になりたいんだ!」
オッサムは私の前にやって来て、整った顔を歪めてから、深々と頭を下げた。
彼の茶色の肩まであるストレートの髪が大きく揺れる。
ああ。
もう、どうでもいいです。
好きなようにすればいいんですよ。
私だって、別にあなたを好きだったわけではないですから。
「私の事は気にしないで下さい」
「君の誕生日だっていうのに、こんな事になって、本当に申し訳ない」
「良いんです。婚約破棄が誕生日プレゼントですか? たとえそうだとしても、慰謝料はいただきたいです」
「もちろんだ」
「では、明日にでも連絡を入れさせていただきますね」
カーテシーをしてから、私はくるりと踵を返した。
本当に惨めです。
私はなんのために生まれてきたんでしょう?
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去り際、お姉様がにやりと笑ったのを見て、こんな人間が私の家族なのかと泣き出したくなりました。
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