26 / 30
21 背中を撫でる事しか出来ませんでした
しおりを挟む
ケイン様の話を聞いていると、とても長くなってしまい、ラルフ様の仮眠の時間が終わってしまいました。
なので、また改めて話を聞く事になったのと、空いた時間に私からミリー様の所へ行くという話をした。
私が何か出来るわけでもありませんが、ケイン様に任せておくと、余計にこじれそうな気がしたからです。
だって、ケイン様はさっきの台詞については本気で言おうとしていたらしいですから、まずは、あの言い方というのでしょうか、考え方から直さなくてはいけません。
ミリー様は男らしい方がお好きらしくての発言のようですが、あの告白で素直に受け取られるとは思えません。
私でしたら、喧嘩を売られている様に感じてしまいます。
そんなお二人の事も気になりますが、まずは、やらなければいけない事をやってしまわねばなりません。
仮眠を終えたラルフ様に了承をいただき、部屋の中に入ると。寝起きだからでしょうか、それとも疲れがたまっておられるのでしょうか、元気がないような気がします。
ですので、少し心配になったから言う。
「あまり無理をしてはいけませんよ?」
「大した無理はしていないから大丈夫だ。で、何の話だ?」
「出したお手紙のお返事の件なのですが、直接、騎士の方達に魔道具を使って、持って行かせて下さったのですね」
昨日の晩にソラから渡された手紙に、その旨が書かれていて、初めて知りました。
ラルフ様は悲しげな表情で言います。
「本当は俺が行かなければならないんだろうが、俺を見ただけで、辛い過去を思い出させてしまう気がしてな。あと、手紙をあなたに書いてもらったのは、あなたの名前なら、婚約者候補だった時の話をしてもらいやすくなると思ったんだ」
「私もそう思いました。なんの心構えもなく、ラルフ様からの連絡を受け取るより、婚約者候補である私が過去にそうだった方にアドバイスを求めるような形で送ったほうが良いかと思いました。もし、お優しい方でしたら、フレイ様に気を付けるようになど、教えていただけるかと思ったのです」
「ああ、そうだな。あなたへの返事が何通かは来ているのは知っている。あと、手紙の返事を受け取りに行ったのは俺ではないが、一人だけ俺宛に手紙が来た」
「えっ!?」
「この令嬢に会いに行くつもりだが、あなたも一緒に行くか?」
そう言って、ラルフ様が一通の手紙を私に渡して下さいました。
それはラルフ様宛の手紙でしたが、差出人は私が手紙を送った方の一人です。
内容を読んで愕然としました。
「ラルフ様、今すぐにでも助けてさしあげたいのです」
「ああ。俺もその気持ちだ。約束はしていないが、これからすぐに会いに行こうと思っている」
「ご迷惑でなければ、ご一緒させて下さい!」
私に何ができるかはわかりませんが、知ってしまった以上、知らないフリはできません。
早速 ラルフ様と一緒に、ある屋敷に向かい、手紙の令嬢に会う事になったのですが、それはもう、やつれておられました。
話を聞いてみると、婚約解消後、新たな婚約者を見つけようと努力されていたのですが、中々見つからず、信じられない話ですが、ラルフ様と結婚しなかったからだという理由で、お父さまから勘当されてしまった彼女は、とある伯爵家にメイドとして雇われる事になり、今はその伯爵からひどい扱いを受けていると言われました。
今に至っても、仕事の手を止めて誰かに会うだなんて、後で覚えていろ、と脅されたそうです。
今までの出来事を謝られたラルフ様に、彼女は言います。
「今度は助けていただけませんか。そうしていただけるなら…」
「ありがとう。辛い思いをさせてしまい、本当に済まなかった。君の持ち物はこの屋敷内にあるのか?」
「あ、少しだけ。抱える程度のものしかございませんが…」
「では、持ってきてくれ」
ラルフ様が何を考えておられるかはわかりませんが、彼女が出ていくのと同時に、ラルフ様も部屋を出ていかれ、すぐに戻ってこられました。
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっとな」
ラルフ様が言葉を続けようとしたところで、令嬢が生成り色の袋を胸に抱えて、部屋に入ってこられました。
「忘れ物はないか?」
「あ、はい」
「では、行くか。君はリノアに捕まっていてくれるか?」
「あ、はい」
令嬢は目を白黒させましたが、私が手を差し出すと、とても細い腕をのばして、私の手を取られました。
「リノアは俺につかまれ」
「はい!」
慌ててラルフ様の腕をつかむと、しっかり私がつかまったのを確認したあと、魔道具で一瞬にしてクラーク邸のエントランスホールまで移動されました。
「えっと…」
困惑気味の令嬢にラルフ様が言われます。
「君がこれからどうしたいか考えてから、答えを聞かせてくれないか? それまでは、この屋敷で暮らすといい。母上達は、この屋敷には出入りさせなくしているから」
「えっ!?」
「君をあの外道な伯爵から解放する。遅くなってすまない」
その言葉を聞いた令嬢は、しゃがみ込むと嗚咽をあげて泣き始める。
何もできない私は、彼女の横にしゃがみ、優しく背中を撫でる事しか出来ませんでした。
なので、また改めて話を聞く事になったのと、空いた時間に私からミリー様の所へ行くという話をした。
私が何か出来るわけでもありませんが、ケイン様に任せておくと、余計にこじれそうな気がしたからです。
だって、ケイン様はさっきの台詞については本気で言おうとしていたらしいですから、まずは、あの言い方というのでしょうか、考え方から直さなくてはいけません。
ミリー様は男らしい方がお好きらしくての発言のようですが、あの告白で素直に受け取られるとは思えません。
私でしたら、喧嘩を売られている様に感じてしまいます。
そんなお二人の事も気になりますが、まずは、やらなければいけない事をやってしまわねばなりません。
仮眠を終えたラルフ様に了承をいただき、部屋の中に入ると。寝起きだからでしょうか、それとも疲れがたまっておられるのでしょうか、元気がないような気がします。
ですので、少し心配になったから言う。
「あまり無理をしてはいけませんよ?」
「大した無理はしていないから大丈夫だ。で、何の話だ?」
「出したお手紙のお返事の件なのですが、直接、騎士の方達に魔道具を使って、持って行かせて下さったのですね」
昨日の晩にソラから渡された手紙に、その旨が書かれていて、初めて知りました。
ラルフ様は悲しげな表情で言います。
「本当は俺が行かなければならないんだろうが、俺を見ただけで、辛い過去を思い出させてしまう気がしてな。あと、手紙をあなたに書いてもらったのは、あなたの名前なら、婚約者候補だった時の話をしてもらいやすくなると思ったんだ」
「私もそう思いました。なんの心構えもなく、ラルフ様からの連絡を受け取るより、婚約者候補である私が過去にそうだった方にアドバイスを求めるような形で送ったほうが良いかと思いました。もし、お優しい方でしたら、フレイ様に気を付けるようになど、教えていただけるかと思ったのです」
「ああ、そうだな。あなたへの返事が何通かは来ているのは知っている。あと、手紙の返事を受け取りに行ったのは俺ではないが、一人だけ俺宛に手紙が来た」
「えっ!?」
「この令嬢に会いに行くつもりだが、あなたも一緒に行くか?」
そう言って、ラルフ様が一通の手紙を私に渡して下さいました。
それはラルフ様宛の手紙でしたが、差出人は私が手紙を送った方の一人です。
内容を読んで愕然としました。
「ラルフ様、今すぐにでも助けてさしあげたいのです」
「ああ。俺もその気持ちだ。約束はしていないが、これからすぐに会いに行こうと思っている」
「ご迷惑でなければ、ご一緒させて下さい!」
私に何ができるかはわかりませんが、知ってしまった以上、知らないフリはできません。
早速 ラルフ様と一緒に、ある屋敷に向かい、手紙の令嬢に会う事になったのですが、それはもう、やつれておられました。
話を聞いてみると、婚約解消後、新たな婚約者を見つけようと努力されていたのですが、中々見つからず、信じられない話ですが、ラルフ様と結婚しなかったからだという理由で、お父さまから勘当されてしまった彼女は、とある伯爵家にメイドとして雇われる事になり、今はその伯爵からひどい扱いを受けていると言われました。
今に至っても、仕事の手を止めて誰かに会うだなんて、後で覚えていろ、と脅されたそうです。
今までの出来事を謝られたラルフ様に、彼女は言います。
「今度は助けていただけませんか。そうしていただけるなら…」
「ありがとう。辛い思いをさせてしまい、本当に済まなかった。君の持ち物はこの屋敷内にあるのか?」
「あ、少しだけ。抱える程度のものしかございませんが…」
「では、持ってきてくれ」
ラルフ様が何を考えておられるかはわかりませんが、彼女が出ていくのと同時に、ラルフ様も部屋を出ていかれ、すぐに戻ってこられました。
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっとな」
ラルフ様が言葉を続けようとしたところで、令嬢が生成り色の袋を胸に抱えて、部屋に入ってこられました。
「忘れ物はないか?」
「あ、はい」
「では、行くか。君はリノアに捕まっていてくれるか?」
「あ、はい」
令嬢は目を白黒させましたが、私が手を差し出すと、とても細い腕をのばして、私の手を取られました。
「リノアは俺につかまれ」
「はい!」
慌ててラルフ様の腕をつかむと、しっかり私がつかまったのを確認したあと、魔道具で一瞬にしてクラーク邸のエントランスホールまで移動されました。
「えっと…」
困惑気味の令嬢にラルフ様が言われます。
「君がこれからどうしたいか考えてから、答えを聞かせてくれないか? それまでは、この屋敷で暮らすといい。母上達は、この屋敷には出入りさせなくしているから」
「えっ!?」
「君をあの外道な伯爵から解放する。遅くなってすまない」
その言葉を聞いた令嬢は、しゃがみ込むと嗚咽をあげて泣き始める。
何もできない私は、彼女の横にしゃがみ、優しく背中を撫でる事しか出来ませんでした。
73
お気に入りに追加
2,315
あなたにおすすめの小説
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
始まりはよくある婚約破棄のように
喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」
学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。
ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。
第一章「婚約者編」
第二章「お見合い編(過去)」
第三章「結婚編」
第四章「出産・育児編」
第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。
愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。
自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。
国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。
実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。
ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる