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21 背中を撫でる事しか出来ませんでした
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ケイン様の話を聞いていると、とても長くなってしまい、ラルフ様の仮眠の時間が終わってしまいました。
なので、また改めて話を聞く事になったのと、空いた時間に私からミリー様の所へ行くという話をした。
私が何か出来るわけでもありませんが、ケイン様に任せておくと、余計にこじれそうな気がしたからです。
だって、ケイン様はさっきの台詞については本気で言おうとしていたらしいですから、まずは、あの言い方というのでしょうか、考え方から直さなくてはいけません。
ミリー様は男らしい方がお好きらしくての発言のようですが、あの告白で素直に受け取られるとは思えません。
私でしたら、喧嘩を売られている様に感じてしまいます。
そんなお二人の事も気になりますが、まずは、やらなければいけない事をやってしまわねばなりません。
仮眠を終えたラルフ様に了承をいただき、部屋の中に入ると。寝起きだからでしょうか、それとも疲れがたまっておられるのでしょうか、元気がないような気がします。
ですので、少し心配になったから言う。
「あまり無理をしてはいけませんよ?」
「大した無理はしていないから大丈夫だ。で、何の話だ?」
「出したお手紙のお返事の件なのですが、直接、騎士の方達に魔道具を使って、持って行かせて下さったのですね」
昨日の晩にソラから渡された手紙に、その旨が書かれていて、初めて知りました。
ラルフ様は悲しげな表情で言います。
「本当は俺が行かなければならないんだろうが、俺を見ただけで、辛い過去を思い出させてしまう気がしてな。あと、手紙をあなたに書いてもらったのは、あなたの名前なら、婚約者候補だった時の話をしてもらいやすくなると思ったんだ」
「私もそう思いました。なんの心構えもなく、ラルフ様からの連絡を受け取るより、婚約者候補である私が過去にそうだった方にアドバイスを求めるような形で送ったほうが良いかと思いました。もし、お優しい方でしたら、フレイ様に気を付けるようになど、教えていただけるかと思ったのです」
「ああ、そうだな。あなたへの返事が何通かは来ているのは知っている。あと、手紙の返事を受け取りに行ったのは俺ではないが、一人だけ俺宛に手紙が来た」
「えっ!?」
「この令嬢に会いに行くつもりだが、あなたも一緒に行くか?」
そう言って、ラルフ様が一通の手紙を私に渡して下さいました。
それはラルフ様宛の手紙でしたが、差出人は私が手紙を送った方の一人です。
内容を読んで愕然としました。
「ラルフ様、今すぐにでも助けてさしあげたいのです」
「ああ。俺もその気持ちだ。約束はしていないが、これからすぐに会いに行こうと思っている」
「ご迷惑でなければ、ご一緒させて下さい!」
私に何ができるかはわかりませんが、知ってしまった以上、知らないフリはできません。
早速 ラルフ様と一緒に、ある屋敷に向かい、手紙の令嬢に会う事になったのですが、それはもう、やつれておられました。
話を聞いてみると、婚約解消後、新たな婚約者を見つけようと努力されていたのですが、中々見つからず、信じられない話ですが、ラルフ様と結婚しなかったからだという理由で、お父さまから勘当されてしまった彼女は、とある伯爵家にメイドとして雇われる事になり、今はその伯爵からひどい扱いを受けていると言われました。
今に至っても、仕事の手を止めて誰かに会うだなんて、後で覚えていろ、と脅されたそうです。
今までの出来事を謝られたラルフ様に、彼女は言います。
「今度は助けていただけませんか。そうしていただけるなら…」
「ありがとう。辛い思いをさせてしまい、本当に済まなかった。君の持ち物はこの屋敷内にあるのか?」
「あ、少しだけ。抱える程度のものしかございませんが…」
「では、持ってきてくれ」
ラルフ様が何を考えておられるかはわかりませんが、彼女が出ていくのと同時に、ラルフ様も部屋を出ていかれ、すぐに戻ってこられました。
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっとな」
ラルフ様が言葉を続けようとしたところで、令嬢が生成り色の袋を胸に抱えて、部屋に入ってこられました。
「忘れ物はないか?」
「あ、はい」
「では、行くか。君はリノアに捕まっていてくれるか?」
「あ、はい」
令嬢は目を白黒させましたが、私が手を差し出すと、とても細い腕をのばして、私の手を取られました。
「リノアは俺につかまれ」
「はい!」
慌ててラルフ様の腕をつかむと、しっかり私がつかまったのを確認したあと、魔道具で一瞬にしてクラーク邸のエントランスホールまで移動されました。
「えっと…」
困惑気味の令嬢にラルフ様が言われます。
「君がこれからどうしたいか考えてから、答えを聞かせてくれないか? それまでは、この屋敷で暮らすといい。母上達は、この屋敷には出入りさせなくしているから」
「えっ!?」
「君をあの外道な伯爵から解放する。遅くなってすまない」
その言葉を聞いた令嬢は、しゃがみ込むと嗚咽をあげて泣き始める。
何もできない私は、彼女の横にしゃがみ、優しく背中を撫でる事しか出来ませんでした。
なので、また改めて話を聞く事になったのと、空いた時間に私からミリー様の所へ行くという話をした。
私が何か出来るわけでもありませんが、ケイン様に任せておくと、余計にこじれそうな気がしたからです。
だって、ケイン様はさっきの台詞については本気で言おうとしていたらしいですから、まずは、あの言い方というのでしょうか、考え方から直さなくてはいけません。
ミリー様は男らしい方がお好きらしくての発言のようですが、あの告白で素直に受け取られるとは思えません。
私でしたら、喧嘩を売られている様に感じてしまいます。
そんなお二人の事も気になりますが、まずは、やらなければいけない事をやってしまわねばなりません。
仮眠を終えたラルフ様に了承をいただき、部屋の中に入ると。寝起きだからでしょうか、それとも疲れがたまっておられるのでしょうか、元気がないような気がします。
ですので、少し心配になったから言う。
「あまり無理をしてはいけませんよ?」
「大した無理はしていないから大丈夫だ。で、何の話だ?」
「出したお手紙のお返事の件なのですが、直接、騎士の方達に魔道具を使って、持って行かせて下さったのですね」
昨日の晩にソラから渡された手紙に、その旨が書かれていて、初めて知りました。
ラルフ様は悲しげな表情で言います。
「本当は俺が行かなければならないんだろうが、俺を見ただけで、辛い過去を思い出させてしまう気がしてな。あと、手紙をあなたに書いてもらったのは、あなたの名前なら、婚約者候補だった時の話をしてもらいやすくなると思ったんだ」
「私もそう思いました。なんの心構えもなく、ラルフ様からの連絡を受け取るより、婚約者候補である私が過去にそうだった方にアドバイスを求めるような形で送ったほうが良いかと思いました。もし、お優しい方でしたら、フレイ様に気を付けるようになど、教えていただけるかと思ったのです」
「ああ、そうだな。あなたへの返事が何通かは来ているのは知っている。あと、手紙の返事を受け取りに行ったのは俺ではないが、一人だけ俺宛に手紙が来た」
「えっ!?」
「この令嬢に会いに行くつもりだが、あなたも一緒に行くか?」
そう言って、ラルフ様が一通の手紙を私に渡して下さいました。
それはラルフ様宛の手紙でしたが、差出人は私が手紙を送った方の一人です。
内容を読んで愕然としました。
「ラルフ様、今すぐにでも助けてさしあげたいのです」
「ああ。俺もその気持ちだ。約束はしていないが、これからすぐに会いに行こうと思っている」
「ご迷惑でなければ、ご一緒させて下さい!」
私に何ができるかはわかりませんが、知ってしまった以上、知らないフリはできません。
早速 ラルフ様と一緒に、ある屋敷に向かい、手紙の令嬢に会う事になったのですが、それはもう、やつれておられました。
話を聞いてみると、婚約解消後、新たな婚約者を見つけようと努力されていたのですが、中々見つからず、信じられない話ですが、ラルフ様と結婚しなかったからだという理由で、お父さまから勘当されてしまった彼女は、とある伯爵家にメイドとして雇われる事になり、今はその伯爵からひどい扱いを受けていると言われました。
今に至っても、仕事の手を止めて誰かに会うだなんて、後で覚えていろ、と脅されたそうです。
今までの出来事を謝られたラルフ様に、彼女は言います。
「今度は助けていただけませんか。そうしていただけるなら…」
「ありがとう。辛い思いをさせてしまい、本当に済まなかった。君の持ち物はこの屋敷内にあるのか?」
「あ、少しだけ。抱える程度のものしかございませんが…」
「では、持ってきてくれ」
ラルフ様が何を考えておられるかはわかりませんが、彼女が出ていくのと同時に、ラルフ様も部屋を出ていかれ、すぐに戻ってこられました。
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっとな」
ラルフ様が言葉を続けようとしたところで、令嬢が生成り色の袋を胸に抱えて、部屋に入ってこられました。
「忘れ物はないか?」
「あ、はい」
「では、行くか。君はリノアに捕まっていてくれるか?」
「あ、はい」
令嬢は目を白黒させましたが、私が手を差し出すと、とても細い腕をのばして、私の手を取られました。
「リノアは俺につかまれ」
「はい!」
慌ててラルフ様の腕をつかむと、しっかり私がつかまったのを確認したあと、魔道具で一瞬にしてクラーク邸のエントランスホールまで移動されました。
「えっと…」
困惑気味の令嬢にラルフ様が言われます。
「君がこれからどうしたいか考えてから、答えを聞かせてくれないか? それまでは、この屋敷で暮らすといい。母上達は、この屋敷には出入りさせなくしているから」
「えっ!?」
「君をあの外道な伯爵から解放する。遅くなってすまない」
その言葉を聞いた令嬢は、しゃがみ込むと嗚咽をあげて泣き始める。
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