婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ

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15 大丈夫ですよね?

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 お仕事時間中に申し訳ないですが、言いたいことを言ってしまおうと、ラルフ様の部屋に行くと、それはもう大歓迎されましたが。

「婚約解消できませんか?」
「無理だな」

 私の言葉を聞くと、すぐに笑顔を消して却下すると、慌てた表情で言います。

「どうしてまたそんな事を? まだ三日目だろう?」
「まだ三日目なのに、精神的な疲れが酷いのです!」
「何があったか聞かせてくれ」

 なぜか、ラルフ様の執務机の椅子に座らされたかと思うと、すぐに抱き上げられ、太ももの上にのせられ、お腹をラルフ様の腕にホールドされた状態で話す事になりました。

 とても恥ずかしいのです。

 ですが、まずは言わないといけない事を忘れていたので、そのままの状態でラルフ様に言う。

「一人、フレイ様付きのメイドをこちらに配属されましたか?」
「いや、俺はそんな事はしていないが…。もしかすると、メイド長が決めたのかもしれないな。フレイの面倒を見る必要がなくなったからな」
「大変失礼な事をお聞きしますけど、まさか、フレイ様はメイドにも手を出したりしていませんよね?」
「…それに関してはなんとも言えん。だから、あいつを外に出す訳にはいかない」
「否定しないという事は、メイドに手を出してたんですね」

 これ以上は呆れて物が言えません。
 フレイ様は本当にラルフ様と兄弟なんでしょうか。
 もしかして、ラルフ様も色んな女性をとっかえひっかえしたりしているのでしょうか。
 そう思うと、なんだかショックです。
 この国の貴族は妻がいても未婚の愛人を持つのが当たり前なので、私が妻になっても、いつしかラルフ様は愛人をお迎えになるのでしょうけれど…。

「どうかしたか?」

 無防備でいたためか、ちゅ、と音を立てて私の頬にキスをされたあと、つかまれて動けない事をいい事に、色んな所にキスをしてこられます。

「ラルフ様! そういう事はまだ早いのです!」
「では、早く式を挙げよう。役所に婚姻届も出さないとな」
「そんな話をしているんじゃありません!」

 ラルフ様には力ではかなわないので、手の甲の皮を少しだけつまんでみると、大して痛くもなさそうでしたが、私が抗議している事は伝わったようで、話を戻して下さいます。

「メイドをどうしてほしいんだ?」
「フレイ様付きのメイドを私の所にまわすのはやめていただきたいのです。特に、カーミラ様達と仲の良い方々は」
「わかった。それから、しばらくは母上達と夕食を共にするのも止めておこう」
「良いのですか?」
「ああ。それにケイン達がうるさいんだ。結婚前に母上達と長く関わらせると、リノアが逃げてしまうとな」

 まさに、そんな気分だったわけですが、皆様にそんな風に気遣ってもらえるなら、気持ちが少しだけ楽になります。

「ケイン様達にお礼を言わないといけませんね」
「リノアはよくケインを褒めるんだな」
「あら。別にケイン様一人だけ褒めたわけではありませんが、ケイン様は気遣い上手ですもの。さぞかし、女性にも人気があるのでしょうね」
「人気はあるかもしれないが、意中の女性には相手にされていないようだ」
「意中の方がいらっしゃるのですか!」

 詳しく聞いてはいけない話かもしれませんが、気になってしまいます。
 すると、なぜかラルフ様はしまった、と言わんばかりの顔をされました。

「どうかされました? もしかして、私には話してはいけないと言われていたとか?」
「いや。余計にリノアがケインに興味を持ってしまった、と思ってな」
「それは、そうかもですが…」
「ケイン!」

 お部屋の外で待機していたケイン様の名を呼ばれ、彼が入ってくると、ラルフ様は言われました。

「今日はお前に褒美をやる」
「え、どうしたんですか」
「リノアに気分転換させてやりたい。お前ならどこか知ってるな?」
「知ってます」
「あと、ミリーをリノアに紹介してやってくれ」

 ミリーという方はケイン様の思い人なのでしょうか。
 名前を聞いた途端、ケイン様はぴくりと眉を動かされましたから。

「リノアもこっちで友達が欲しいだろう? 平民と一緒に貴族用のレストランで働いている男爵令嬢だ。性格の良さはケインのお墨付きだ」
「お友達は欲しいのです」
「…いいですけど、ラルフ様、アイツがいたらどうするんです」
「リノアに話しかけたら殺せ」
「いや、いきなり殺すは無理ですよ」

 何やら物騒な話をしておられますが、大丈夫でしょうか。
 でも、外に出ている間はカーミラ様達にも会わないでしょうし、大丈夫ですよね?
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