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13 私が弱い人間だからでしょうか
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ラルフ様と一緒に部屋に戻っている内に、ケイン様が魔法使いと呼ばれる方を呼びに行って下さいました。
その後、魔法使いの方が部屋に来て下さり、回復魔法をかけてもらい、私の部屋のソファーに座って、お話をする事になりました。
私の向かいに座る魔法使いの方はアンジェ様といい、艶のある紺色の髪をポニーテールにした、体型は痩せすぎと思ってしまうくらいに細いですが、溌剌とした笑顔をされる、私より少し年上の女性でした。
「私、今までのラルフ様の婚約者候補だった、ご家族の方に、お手紙を書こうと思っております。そして、その事でアンジェ様にお願いがあります」
「様なんていらないですけど。まあ、それはおいておいて、何でしょう?」
「忘却魔法というものは、何度も使えるものでしょうか?」
「…ケインから話は聞きましたが、もしかして、令嬢達に使おうと思ってます?」
アンジェ様の質問に、私は首を縦に振ってから続ける。
「もちろん、本人の意向を聞いてからにしたいと思っていますが、魔法で嫌な過去を永久に忘れる事が出来るなら、少しでも気持ちは楽になるのでは、と」
「出来ますよ」
アンジェ様はさらりと答えたあと、笑顔で言葉を続けます。
「本来ならリノア様に魔法をかけた際に、騎士全員に魔法をかける予定だったくらいですから、お任せ下さい!」
「アンジェ様はすごい魔法使いなのですね!」
「リノア様ったら、可愛い反応してくれますね! ラルフ様の嫁にするには惜しいですよ! ラルフ様って、見た目が死神みたいじゃないですか!」
「アンジェ、そんなに早死にしたいとは思わなかったが」
「すすす、すいません! 冗談ですってば!」
ラルフ様にすごまれ、アンジェ様は苦笑しながら首と手を横に振ります。
「ラルフ様、ケイン様と一緒に外に出て待っておられますか?」
アンジェ様が萎縮してしまわれたので、私の隣に座るラルフ様に視線を送ると、ラルフ様は口を閉じられました。
「猛獣使いとお姫様みたいですね…。なんて、あーっと、本題に入りましょうか。では、令嬢達からお願いがあった場合は、私がそちらへ出向けばいいという事ですね! 人使いが荒い気もしますが、私も雇われ魔法使いなんで、やらないとご飯が食べられませんからねぇ」
「リノア、こいつは見た目は細いが、何十人分もの飯をたいらげる女だぞ」
「それはすごいのです!」
「うふふ、ありがとうございます。ですけど、そのせいで、お財布がいつもすっからかんなんですけどねー」
遠い目をするアンジェ様にラルフ様が、小さく息を吐いてから私に言います。
「すぐに飢え死にしそうになるから、普段の食事はうちの料理人に作らせている。飯代の代わりにお抱え魔法使いとして動いてもらっていてな。魔法に関しては優秀なんだ。他はどうしようもないけどな」
「ラルフ様にお褒めいただいて嬉しいです! 人使いは荒いですが、美味しいご飯と寝床を用意してくれますし、ラルフ様には感謝感謝ですよ!」
言ったあと、テーブルに置かれていたお茶菓子に視線をちらりと向けてから、私に笑顔で聞いてこられます。
「というわけで、これ、いただいても?」
「かまいませんよ」
「ありがとうございまーっす! で、フレイ様に対してはどうされるんでふ? 幻覚ふぉか見せまふ?」
「食べてから話せ」
ラルフ様はこめかみをおさえながら、両手でお菓子を持って食べ進めている、アンジェ様に注意されます。
「ラルフ様はどうお考えで?」
「フレイに関しては、他人とは一切接触させず、地下に幽閉するつもりだ。外に出して下手な事をされても困る」
私が尋ねると、ラルフ様は少し辛そうな表情で答えました。
「正直、ああいうタイプは自分が悪い事をしたなんて思ってませんからね。令嬢が罪を望んだら逆恨みするでしょうし、リノア様の事だって、ラルフ様を誑かした悪い女だと未だに思ってると思いますよー。付きまとってるのはラルフ様なのにねー」
「アンジェ」
「嘘でーす。では、私はリノア様の指示待ちですね」
「これから手紙を書きますから、お返事が来るまで時間がかかると思いますが、時が来ましたら、よろしくお願いいたします。まずはご両親からの返事を待つつもりです」
ご両親宛に、ラルフ様の婚約者として、令嬢が何か辛い思いをしたりしていなかったかの確認の手紙を送ってみるつもりです。
もし、ご家族が話を聞いているなら、なんらかの返答があると思われます。
話を聞かれている場合は忘却魔法についての話は家族の方に決めてもらい、御本人に相談するかどうかも、ご家族の判断に任せるつもりです。
人に任せようとしてしまうのは、私が弱い人間だからでしょうか。
その後、魔法使いの方が部屋に来て下さり、回復魔法をかけてもらい、私の部屋のソファーに座って、お話をする事になりました。
私の向かいに座る魔法使いの方はアンジェ様といい、艶のある紺色の髪をポニーテールにした、体型は痩せすぎと思ってしまうくらいに細いですが、溌剌とした笑顔をされる、私より少し年上の女性でした。
「私、今までのラルフ様の婚約者候補だった、ご家族の方に、お手紙を書こうと思っております。そして、その事でアンジェ様にお願いがあります」
「様なんていらないですけど。まあ、それはおいておいて、何でしょう?」
「忘却魔法というものは、何度も使えるものでしょうか?」
「…ケインから話は聞きましたが、もしかして、令嬢達に使おうと思ってます?」
アンジェ様の質問に、私は首を縦に振ってから続ける。
「もちろん、本人の意向を聞いてからにしたいと思っていますが、魔法で嫌な過去を永久に忘れる事が出来るなら、少しでも気持ちは楽になるのでは、と」
「出来ますよ」
アンジェ様はさらりと答えたあと、笑顔で言葉を続けます。
「本来ならリノア様に魔法をかけた際に、騎士全員に魔法をかける予定だったくらいですから、お任せ下さい!」
「アンジェ様はすごい魔法使いなのですね!」
「リノア様ったら、可愛い反応してくれますね! ラルフ様の嫁にするには惜しいですよ! ラルフ様って、見た目が死神みたいじゃないですか!」
「アンジェ、そんなに早死にしたいとは思わなかったが」
「すすす、すいません! 冗談ですってば!」
ラルフ様にすごまれ、アンジェ様は苦笑しながら首と手を横に振ります。
「ラルフ様、ケイン様と一緒に外に出て待っておられますか?」
アンジェ様が萎縮してしまわれたので、私の隣に座るラルフ様に視線を送ると、ラルフ様は口を閉じられました。
「猛獣使いとお姫様みたいですね…。なんて、あーっと、本題に入りましょうか。では、令嬢達からお願いがあった場合は、私がそちらへ出向けばいいという事ですね! 人使いが荒い気もしますが、私も雇われ魔法使いなんで、やらないとご飯が食べられませんからねぇ」
「リノア、こいつは見た目は細いが、何十人分もの飯をたいらげる女だぞ」
「それはすごいのです!」
「うふふ、ありがとうございます。ですけど、そのせいで、お財布がいつもすっからかんなんですけどねー」
遠い目をするアンジェ様にラルフ様が、小さく息を吐いてから私に言います。
「すぐに飢え死にしそうになるから、普段の食事はうちの料理人に作らせている。飯代の代わりにお抱え魔法使いとして動いてもらっていてな。魔法に関しては優秀なんだ。他はどうしようもないけどな」
「ラルフ様にお褒めいただいて嬉しいです! 人使いは荒いですが、美味しいご飯と寝床を用意してくれますし、ラルフ様には感謝感謝ですよ!」
言ったあと、テーブルに置かれていたお茶菓子に視線をちらりと向けてから、私に笑顔で聞いてこられます。
「というわけで、これ、いただいても?」
「かまいませんよ」
「ありがとうございまーっす! で、フレイ様に対してはどうされるんでふ? 幻覚ふぉか見せまふ?」
「食べてから話せ」
ラルフ様はこめかみをおさえながら、両手でお菓子を持って食べ進めている、アンジェ様に注意されます。
「ラルフ様はどうお考えで?」
「フレイに関しては、他人とは一切接触させず、地下に幽閉するつもりだ。外に出して下手な事をされても困る」
私が尋ねると、ラルフ様は少し辛そうな表情で答えました。
「正直、ああいうタイプは自分が悪い事をしたなんて思ってませんからね。令嬢が罪を望んだら逆恨みするでしょうし、リノア様の事だって、ラルフ様を誑かした悪い女だと未だに思ってると思いますよー。付きまとってるのはラルフ様なのにねー」
「アンジェ」
「嘘でーす。では、私はリノア様の指示待ちですね」
「これから手紙を書きますから、お返事が来るまで時間がかかると思いますが、時が来ましたら、よろしくお願いいたします。まずはご両親からの返事を待つつもりです」
ご両親宛に、ラルフ様の婚約者として、令嬢が何か辛い思いをしたりしていなかったかの確認の手紙を送ってみるつもりです。
もし、ご家族が話を聞いているなら、なんらかの返答があると思われます。
話を聞かれている場合は忘却魔法についての話は家族の方に決めてもらい、御本人に相談するかどうかも、ご家族の判断に任せるつもりです。
人に任せようとしてしまうのは、私が弱い人間だからでしょうか。
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