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12 出来る事をしたら良いですよね?
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ケイン様が私の手を引いて、立ち上がらせてくれながら言います。
「女性に見せるものではありませんね。さあ、医者を呼びますから、リノア様の部屋に戻りましょう。いや、腕の良い魔法使いがいますから、そちらに診させましょう。すぐに治してくれますよ」
「ケイン様、このままにしては行けません。ラルフ様と一緒に行きます」
言ってから、ラルフ様の方を振り返ると、とても怖い顔をされていて、冷酷だとか、悪い噂が流れてしまう理由もわかる気がしました。
厳しい対処は必要ですが、フレイ様が謝らないといけない相手は、ラルフ様だけじゃありません。
被害にあった女性の方々です。
ラルフ様の後ろに歩み寄り、彼の背中の服を引っ張る。
「なんだ!」
こちらに振り返って怒鳴られるので、びくりとすると、ラルフ様の表情が歪み、なぜか抱きしめてこられました。
「ラ、ラルフ様!?」
「すまない」
「あ、あの、いきなり、なんなんですか!?」
パニックに陥っていると、ケイン様の声が聞こえます。
「リノア様がさっきの怒鳴り声に驚いて逃げないようにしているんだと思います」
「逃げませんよ! だから離れてください!」
抱きしめられた事により、頬の痛みがどこかへ飛んでしまったので、多少のメリットはありましたが、やはり恥ずかしいのです。
「どうして兄さん、そんな女を…」
「まだ言うのか、お前は…」
ラルフ様は私の身体を離したあと、フレイ様を睨みつけて言うと、廊下の方に顔を向け叫びます。
「誰かいないか!」
「どうされましたか!」
すぐに反応があり、部屋の前の廊下に現れたのはケイン様と同じように腰に剣を携え、身体には防具をつけた屈強そうな騎士らしき方でした。
その方は私の姿を見るなり、なぜか表情を明るくさせて言います。
「リノア様じゃないですか! 昨日に来られたのは知っていたんですが、俺は別邸の警備担当なので、お会いできないかもしれないなんて嘆いていたんですよ!」
「え、えーと?」
どうやらこの方は私の事を知っていらっしゃるようですが、申し訳ないのですが、私の記憶にはないのです。
失礼な事を言ってしまえば、騎士の方は個人を認識しない限り、皆さんの区別がつかないのです。
「どうしてお前がリノアを知っている、というか、もしや、お前たち、覚えてるのか?」
「バレたか」
ラルフ様が騎士の方とケイン様を交互に睨みつけて言うと、ケイン様が呟かれました。
「あー、まあ、いいじゃないですか! リノア様にお世話になった事には変わりありません。俺達はリノア様の為にって、頬が赤いじゃないですか!」
「ダラス、リノア様がひいてるだろ!」
「でも隊長! 誰がリノア様に」
扉がないからか、ケイン様にダラスと呼ばれた騎士の方は部屋に無断で入ってくると、腰を折り曲げて私の顔を覗き込みながら叫ぶと、ラルフ様が無言でフレイ様を睨み、ケイン様がフレイ様を指差しました。
「ラルフ様の婚約者に…、しかもリノア様に手をあげるなんて」
ダラス様がなぜかとても怒り出したので、お気持ちはありがたいですが困ってしまいます。
この方に心配してもらうような事を私はした覚えがないのです。
「あの、失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
「リノア様が俺を覚えていらっしゃらなくて当然です! ですから気になさらないで下さい」
「あ、ありがとうございます」
忘却の魔法でしたら、術者が解除するか、他人が解除する場合は解除条件があったはず。
いつか、解除していただいた時に、ダラス様の事も思い出したいものです。
「ダラス、フレイを地下に連れて行け」
「承知しました」
「そんな!」
ラルフ様の言葉にダラス様は一瞬にして表情を真剣なものに変えて頷かれましたが、フレイ様は悲鳴に近い声を上げられました。
「地下には何が?」
気になってケイン様とダラス様に聞いてみると、ダラス様が豪快に笑いながら答えてくれます。
「地下には牢屋や拷問べ」
「やめろ」
ラルフ様とケイン様が同時に防具の上からではありますが、ダラス様のお腹に蹴りを入れられました。
「な、なんで蹴るんですか」
「リノア様にそんな言葉を聞かせるな」
「リノアが怖がったらどうする」
もう、何を言おうとしておられたかわかってしまいましたが…。
「ちゃんと仕事をしろ。俺はリノアを連れて行く」
「兄さん! 待ってください! そんな、嘘ですよね! 俺は兄さんのために!」
「俺はそんな事を望んでいない」
ラルフ様はきっぱりと答えると、私の肩を抱いて、部屋を出るように促されました。
「ラルフ様、私、忘却魔法を使えるという方とお話をしたいのですが」
フレイ様に関してはラルフ様達にお願いする事にして、私は私で出来る事をしたら良いですよね?
「女性に見せるものではありませんね。さあ、医者を呼びますから、リノア様の部屋に戻りましょう。いや、腕の良い魔法使いがいますから、そちらに診させましょう。すぐに治してくれますよ」
「ケイン様、このままにしては行けません。ラルフ様と一緒に行きます」
言ってから、ラルフ様の方を振り返ると、とても怖い顔をされていて、冷酷だとか、悪い噂が流れてしまう理由もわかる気がしました。
厳しい対処は必要ですが、フレイ様が謝らないといけない相手は、ラルフ様だけじゃありません。
被害にあった女性の方々です。
ラルフ様の後ろに歩み寄り、彼の背中の服を引っ張る。
「なんだ!」
こちらに振り返って怒鳴られるので、びくりとすると、ラルフ様の表情が歪み、なぜか抱きしめてこられました。
「ラ、ラルフ様!?」
「すまない」
「あ、あの、いきなり、なんなんですか!?」
パニックに陥っていると、ケイン様の声が聞こえます。
「リノア様がさっきの怒鳴り声に驚いて逃げないようにしているんだと思います」
「逃げませんよ! だから離れてください!」
抱きしめられた事により、頬の痛みがどこかへ飛んでしまったので、多少のメリットはありましたが、やはり恥ずかしいのです。
「どうして兄さん、そんな女を…」
「まだ言うのか、お前は…」
ラルフ様は私の身体を離したあと、フレイ様を睨みつけて言うと、廊下の方に顔を向け叫びます。
「誰かいないか!」
「どうされましたか!」
すぐに反応があり、部屋の前の廊下に現れたのはケイン様と同じように腰に剣を携え、身体には防具をつけた屈強そうな騎士らしき方でした。
その方は私の姿を見るなり、なぜか表情を明るくさせて言います。
「リノア様じゃないですか! 昨日に来られたのは知っていたんですが、俺は別邸の警備担当なので、お会いできないかもしれないなんて嘆いていたんですよ!」
「え、えーと?」
どうやらこの方は私の事を知っていらっしゃるようですが、申し訳ないのですが、私の記憶にはないのです。
失礼な事を言ってしまえば、騎士の方は個人を認識しない限り、皆さんの区別がつかないのです。
「どうしてお前がリノアを知っている、というか、もしや、お前たち、覚えてるのか?」
「バレたか」
ラルフ様が騎士の方とケイン様を交互に睨みつけて言うと、ケイン様が呟かれました。
「あー、まあ、いいじゃないですか! リノア様にお世話になった事には変わりありません。俺達はリノア様の為にって、頬が赤いじゃないですか!」
「ダラス、リノア様がひいてるだろ!」
「でも隊長! 誰がリノア様に」
扉がないからか、ケイン様にダラスと呼ばれた騎士の方は部屋に無断で入ってくると、腰を折り曲げて私の顔を覗き込みながら叫ぶと、ラルフ様が無言でフレイ様を睨み、ケイン様がフレイ様を指差しました。
「ラルフ様の婚約者に…、しかもリノア様に手をあげるなんて」
ダラス様がなぜかとても怒り出したので、お気持ちはありがたいですが困ってしまいます。
この方に心配してもらうような事を私はした覚えがないのです。
「あの、失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
「リノア様が俺を覚えていらっしゃらなくて当然です! ですから気になさらないで下さい」
「あ、ありがとうございます」
忘却の魔法でしたら、術者が解除するか、他人が解除する場合は解除条件があったはず。
いつか、解除していただいた時に、ダラス様の事も思い出したいものです。
「ダラス、フレイを地下に連れて行け」
「承知しました」
「そんな!」
ラルフ様の言葉にダラス様は一瞬にして表情を真剣なものに変えて頷かれましたが、フレイ様は悲鳴に近い声を上げられました。
「地下には何が?」
気になってケイン様とダラス様に聞いてみると、ダラス様が豪快に笑いながら答えてくれます。
「地下には牢屋や拷問べ」
「やめろ」
ラルフ様とケイン様が同時に防具の上からではありますが、ダラス様のお腹に蹴りを入れられました。
「な、なんで蹴るんですか」
「リノア様にそんな言葉を聞かせるな」
「リノアが怖がったらどうする」
もう、何を言おうとしておられたかわかってしまいましたが…。
「ちゃんと仕事をしろ。俺はリノアを連れて行く」
「兄さん! 待ってください! そんな、嘘ですよね! 俺は兄さんのために!」
「俺はそんな事を望んでいない」
ラルフ様はきっぱりと答えると、私の肩を抱いて、部屋を出るように促されました。
「ラルフ様、私、忘却魔法を使えるという方とお話をしたいのですが」
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