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10 一人でここに来たとは言っていませんよ?
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※ 不快になる表現があります。読み飛ばしいただいても結構です。
「君だって自分で思わないか? どうせ、ラルフ兄さんの外見や地位で婚約者になる事を決めたんだろ!」
「婚約を決められたのはラルフ様ですよ」
「じゃあ、どうして断らないんだよ! ラルフ兄さんにふさわしいのは君みたいな、どこにでもいそうな令嬢じゃない! ミラルル姉さまや母上の様な人だ!」
「あらあら」
ラルフ様の事が大好きなだけかと思っていましたが、お母様やお姉様の事も大好きなのですね。
それは悪いことではありません。
現に、私は弟のヒナタをとても可愛がっていますし、ヒナタはヒナタで婚約者の次に私が、可愛いだなんて嬉しい事を言ってくれます。
姉弟全てが仲が良いとは限りませんし、フレイ様のように家族が大好きなのは、私としてはとても良い事だと思われます。
ですから、それを止める気持ちは全くないのですけれど、このような家族のお家にお嫁に行くというのは勇気がいりますね。
だって、部外者扱いされる事は間違いありませんもの。
私はヒナタの心に決めた人であれば、よっぽどの方でない限り仲良くなりたいですし、幸せになってほしいとも思いますが、フレイ様達はそんな感じではなさそうですし…。
いつでも逃げれるようにと扉の前に立っていた私でしたが、フレイ様は近付いてくると、私の手を引っ張り、なぜかベッドの方へ連れて行こうとします。
「あの、手をはなしていただけますか」
「何を言ってるんだよ。どうせ、その気で来たんだろう?」
「何を言っているかという台詞はこちらの台詞です。それに何を考えていらっしゃるんです?」
部屋の外に聞こえるように大きな声で言うと、フレイ様は舌打ちをしたあと、私の腕をつかんだまま扉の方に行き、鍵を締めてしまわれました。
抵抗されて逃げられたら困るとでも思ったのでしょう。
そんな事を考える余裕があるなら、最初からこんな事をしたって意味がない事くらいわかるでしょうに。
ため息をつきながら、空いている方の手で着ているワンピースのポケットから魔道具を取り出して、バレないように強く握りしめる。
「さっきも言ったが、どうせ他の令嬢と同じでラルフ兄さんの地位や顔が目当てなんだろう? 僕は顔はラルフ兄さんに似てると言われてるんだ」
「顔は似ておられるのかもしれませんが、性格はちっとも似ておられませんね」
「それはそうだよ! 兄さんのほうが素晴らしいんだから!」
うーん。
お兄様愛が強すぎやしないでしょうか。
まあ、カーミラ様もあんな感じでしたし、想像がつかないわけでもなかったのですが。
「お話はそれだけですか? ラルフ様には私がフレイ様のお部屋にやって来た事、伝えてくださってかまいませんよ?」
「ちょっと待て!」
フレイ様は私より背丈が少し高いくらいの華奢な男性ですが、私の手首を掴む手の力はやはり男性のものです。
「フレイ様はおいくつでしたっけ?」
「18だ」
「あら、私よりも年上なのですね」
「なんだよ! 背が低いからって馬鹿にしてるのか!」
そういうつもりではなかったのですが、どうやら背が低い事がコンプレックスだったようで、フレイ様は私をベッドの上に押し倒して言いました。
「物分りが良さそうだったから、何もせずに返してあげようと思ったけど気が変わったよ。君をきずものにして、二度とラルフ兄さんの前に立てないようにしてやる」
「きずもの?」
「そうだよ。背は足りないけど、僕の顔立ちはラルフ兄さんと似てるって言ったろ? だから感謝しろよ」
フレイ様がにやりと笑います。
「嫌ですよ。別にラルフ様の顔を好きになって婚約者になったわけではありません。なぜかわかりませんが、ラルフ様が私を選んでくださったんです」
「お前! ラルフ兄さんを馬鹿にするのか!」
「馬鹿にしているのはあなたです! こんな事をすればするほど、ラルフ様の評判が悪くなるのがわからないんですか!」
「口答えするな!」
首を軽くしめられましたが、まだ大丈夫です。
それよりも、これだけは言わせていただきたいのです。
「きずものという発言を撤回して下さい」
「は?」
「もし、あなたがご令嬢の大切なものを無理やり奪ったというのなら、きずものという言葉は撤回して下さい! あなたの言う様に頭が足りなかったのかもしれませんが、彼女達なりにあなたと仲良くなろうとしてここに来られたはずです!」
自分で誘惑したならまだしも、無理やりされたものなら、傷つけた人が悪いのです!
「嫌だって言ったら?」
「困るのはあなたです」
だって、私は一人でここに来たとは言っていませんよ?
「君だって自分で思わないか? どうせ、ラルフ兄さんの外見や地位で婚約者になる事を決めたんだろ!」
「婚約を決められたのはラルフ様ですよ」
「じゃあ、どうして断らないんだよ! ラルフ兄さんにふさわしいのは君みたいな、どこにでもいそうな令嬢じゃない! ミラルル姉さまや母上の様な人だ!」
「あらあら」
ラルフ様の事が大好きなだけかと思っていましたが、お母様やお姉様の事も大好きなのですね。
それは悪いことではありません。
現に、私は弟のヒナタをとても可愛がっていますし、ヒナタはヒナタで婚約者の次に私が、可愛いだなんて嬉しい事を言ってくれます。
姉弟全てが仲が良いとは限りませんし、フレイ様のように家族が大好きなのは、私としてはとても良い事だと思われます。
ですから、それを止める気持ちは全くないのですけれど、このような家族のお家にお嫁に行くというのは勇気がいりますね。
だって、部外者扱いされる事は間違いありませんもの。
私はヒナタの心に決めた人であれば、よっぽどの方でない限り仲良くなりたいですし、幸せになってほしいとも思いますが、フレイ様達はそんな感じではなさそうですし…。
いつでも逃げれるようにと扉の前に立っていた私でしたが、フレイ様は近付いてくると、私の手を引っ張り、なぜかベッドの方へ連れて行こうとします。
「あの、手をはなしていただけますか」
「何を言ってるんだよ。どうせ、その気で来たんだろう?」
「何を言っているかという台詞はこちらの台詞です。それに何を考えていらっしゃるんです?」
部屋の外に聞こえるように大きな声で言うと、フレイ様は舌打ちをしたあと、私の腕をつかんだまま扉の方に行き、鍵を締めてしまわれました。
抵抗されて逃げられたら困るとでも思ったのでしょう。
そんな事を考える余裕があるなら、最初からこんな事をしたって意味がない事くらいわかるでしょうに。
ため息をつきながら、空いている方の手で着ているワンピースのポケットから魔道具を取り出して、バレないように強く握りしめる。
「さっきも言ったが、どうせ他の令嬢と同じでラルフ兄さんの地位や顔が目当てなんだろう? 僕は顔はラルフ兄さんに似てると言われてるんだ」
「顔は似ておられるのかもしれませんが、性格はちっとも似ておられませんね」
「それはそうだよ! 兄さんのほうが素晴らしいんだから!」
うーん。
お兄様愛が強すぎやしないでしょうか。
まあ、カーミラ様もあんな感じでしたし、想像がつかないわけでもなかったのですが。
「お話はそれだけですか? ラルフ様には私がフレイ様のお部屋にやって来た事、伝えてくださってかまいませんよ?」
「ちょっと待て!」
フレイ様は私より背丈が少し高いくらいの華奢な男性ですが、私の手首を掴む手の力はやはり男性のものです。
「フレイ様はおいくつでしたっけ?」
「18だ」
「あら、私よりも年上なのですね」
「なんだよ! 背が低いからって馬鹿にしてるのか!」
そういうつもりではなかったのですが、どうやら背が低い事がコンプレックスだったようで、フレイ様は私をベッドの上に押し倒して言いました。
「物分りが良さそうだったから、何もせずに返してあげようと思ったけど気が変わったよ。君をきずものにして、二度とラルフ兄さんの前に立てないようにしてやる」
「きずもの?」
「そうだよ。背は足りないけど、僕の顔立ちはラルフ兄さんと似てるって言ったろ? だから感謝しろよ」
フレイ様がにやりと笑います。
「嫌ですよ。別にラルフ様の顔を好きになって婚約者になったわけではありません。なぜかわかりませんが、ラルフ様が私を選んでくださったんです」
「お前! ラルフ兄さんを馬鹿にするのか!」
「馬鹿にしているのはあなたです! こんな事をすればするほど、ラルフ様の評判が悪くなるのがわからないんですか!」
「口答えするな!」
首を軽くしめられましたが、まだ大丈夫です。
それよりも、これだけは言わせていただきたいのです。
「きずものという発言を撤回して下さい」
「は?」
「もし、あなたがご令嬢の大切なものを無理やり奪ったというのなら、きずものという言葉は撤回して下さい! あなたの言う様に頭が足りなかったのかもしれませんが、彼女達なりにあなたと仲良くなろうとしてここに来られたはずです!」
自分で誘惑したならまだしも、無理やりされたものなら、傷つけた人が悪いのです!
「嫌だって言ったら?」
「困るのはあなたです」
だって、私は一人でここに来たとは言っていませんよ?
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