婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ

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プロローグ

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 約一ヶ月ほど前の事になりますが、伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは、幼い頃に決まった婚約者であるディーン・カンタスから、結婚したい相手ができたから、と婚約破棄を告げられました。

 そんな事になるであろう事は予測できていましたし、私自身にはダメージはなく、捨てられた令嬢として田舎でのんびり暮らすつもりでいましたが、そんな私に求婚して下さったのが、ラルフ・クラーク辺境伯様でした。

 ラルフ・クラーク様は魔力の高い人が持つと言われる紺色の髪と瞳を持ち、長身でがっしりとした体躯で女性の中でも小柄な私が彼と並ぶと、アンバランス感が尋常ではありません。
 ツリ目気味で怖そうなイメージはあるけれど、ため息が出るくらいに眉目秀麗なため、余計に私のような平凡な容姿の伯爵令嬢では近づきにくいのだけれど、なぜか、そんな方から私は猛烈なアプローチを受ける事になったのです。

 結婚の申し出をいただき何度かお断りしましたが、ラルフ様は権力を使われ、私は最終的に彼の婚約者となりました。
 これだけ言いますと、ラルフ様が暴君のように思われるかもしれませんが、そこまで悪い方ではなく、根は優しい方ですし、何より私には甘いという事はわかっています。
 私に甘いのであれば、結婚を嫌がる私の意思を無視して、なぜ婚約者にさせたのかは彼なりの事情があるようですが、それはまだ教えてもらっていません。

 ラルフ様のお屋敷に滞在して、お互いの事をよく知ってから結婚という流れになったのですが、そう上手くはいかなさそうです。

 なぜ、そんな事を思うかといいますと、屋敷に着いてすぐに、ラルフ様のお母様の所へご挨拶に伺った時、ラルフ様のいらっしゃらないところで、こんな事を言われたからです。

「嫌な思いをしたくなければ婚約を解消しなさい。あと、ラルフにこの事を話したら、あなたの家がどうなるかわかってますね?」

 家がどうなるのかわかりませんが、なんにしても、ラルフ様のお母様は、私とラルフ様が結婚する事を認めたくないようです。
 まあ、予想はしていたのですけれどもね。

 こんな事を言うと、自惚れていると言われるかもしれませんが、私に解消しろと言っても無駄なんですよ。
 破棄とは違い、解消は双方の意思になるはずです。
 ですけど、ラルフ様には婚約を解消する気が全くありませんから!
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