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31 「どうしてそんなことになるんだ!?」

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「だ、だめでしゅ!」

 ダニエル殿下にしがみついて叫ぶ。

「エアリーしゃまは、ダニエルでんかには、あいじんではなくて、ちゃんとした、おちゅきあいのほうがよいと」

 そこまで言って、自分の言っている意味に気がついて慌てる。

「あ、あのっ、あいじんでは、ダニエルでんかに、ふせーじつですからっ!」

 事情を知らないレイシール様たちは、私が慌てている様子を見て不思議そうにしている。

 でも、ダニエル殿下はそうではない。
 私がエアリーだとわかっているから、きょとんとした顔で私を見た後に、突然、噴き出した。

「で、でんか?」
「ははっ! そうか。それは光栄だな。シャーロットがそう言ってくれるんなら、両陛下に相談してみることにするよ」
「あ、あのでしゅね! ふかいいみはありましぇんので、しんけんにかんがえてくだしゃらなくてもよいのでしゅよ!」
「わかってるよ。シャーロットはエアリー嬢のことを考えて言ってくれたんだよな?」
「……そうでしゅ。あとは、ダニエル殿下のためでしゅ。ダニエルでんかは、あいじんなんてだめでしゅ」
「そうだよな。ありがとう」

 ダニエル殿下は私の背中を優しく撫でた後に、レイシール様に話しかける。

「兄上はエアリー嬢を大切にできないようですから、僕が愛人ではなく、彼女の婚約者に立候補させてもらいます。婚約者の変更が嫌ならば、エアリー嬢から婚約破棄をされないように頑張ってください。もう手遅れかもしれませんが」
「ちょ、ちょっと待て! どうしてそんなことになるんだ!?」
「兄上がエアリー嬢を大事にしないからです」

 ダニエル殿下はレイシール様を軽くあしらうと、止めていた足を進め始める。

「あ、あの、ダニエルでんか」
「どうしたのかな?」
「ほ、ほんとうにわたしのこんやくしゃになろうとおもってくだしゃっているのですか?」
「ああ、駄目かな? ロアリン嬢との婚約は破棄されたから、僕には婚約者がいないんだ。君とは話しやすいし良いかなと思ったんだ」
「わたしにとってはありがたいおはなしでしゅが、りょうへいかは、ゆるちてくだしゃるでしょうか?」

 両陛下は私とレイシール様の婚約の解消を認めてくれなかった。
 ダニエル殿下は今のところは国王の座を継がれる予定はない。
 そうなると、私を次の国王の妻にと考えている両陛下は、今回も認めてくれるはずがない。

 そう思っていた。
 でも、私の予想は良い意味で外れてくれた。

 両陛下は、私とレイシール様の婚約を解消すれば、私をダニエル殿下の婚約者にしても良いと許可を出してくれたのだった。

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