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29 「エアリーは僕のものだ!」

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「ベラと……、それから、新しい愛人のミュウミュウだったか?」

 レイシール様は訝しげな顔をして、髪の毛や衣服が乱れている、ベラとミュウミュウを見た。

「こ、これは、その、何でもありません!」

 ベラが作り笑顔を浮かべ、髪と服を整えてから、レイシール様にすり寄る。

「レイシール様にかまっていただけないから、二人で慰め合っていたのです」
「そ、そうですわ! 私なんて今日来たばかりですのに、お相手してもらえなくて、とてもさみしかったんです。そうしますと、先輩が色々と教えてくださいまして」

 ミュウミュウはレイシール様の隣にいた愛人を押しのけて、彼にすり寄った。

 愛人は諦めた様子で、ダニエル殿下に頭を下げ、私には笑顔で手を振ってから去っていった。

 ベラが来てから、こういうことには慣れているのかもしれない。
 下手に揉めて、ベラに目を付けられて追い出されるのが嫌なのでしょうね。

 このことも何とかしなくちゃいけないわ。

 ベラはロアリン様がいなくなってから、少し大人しくなっている。
 だから、今のところは新たに愛人が減った話は聞いていない。
 やり過ぎると自分も危ないということに気が付いたのかもしれない。
 そう考えると、ベラとレイシール様はお似合いのような気もしてくる。

「兄上、これ以上、愛人を増やすのはやめておいてはいかがです?」
「うるさいな。もう、愛人はベラも含めて10人をきってるんだぞ? 足りないじゃないか」
「10人もいりませんよ」

 ダニエル殿下が呆れた顔をして言うと、レイシール様はにやりと笑う。

「ダニエル、もしかして羨ましいのか? 僕ばかりモテていることが気に食わないのか?」
「いいえ」

 ダニエル殿下は、はっきりと否定した後に大きなため息を吐いた。
 そして、私に優しく話しかけてくる。

「部屋に戻ろうか」
「はい。それにちても、レイシールしゃまのおへやをまもるきしたちは、どこへいってしまったのでしょう?」

 ダニエル殿下の騎士は扉の前で黙って何も言わない。
 でも、レイシール様の部屋の前には誰もおらず、ベラとミュウミュウが喧嘩しているだけだったのだ。

「さあな。僕の部屋の前の騎士に任せて、休憩でもしているんじゃないか?」
「しょくむたいまんでしゅわね」
「おい、ダニエル!」

 呼び止められたダニエル殿下は、あからさまに嫌そうな顔をして立ち止まり、レイシール様のほうに顔を向けた。

 レイシール様は私を指差して叫ぶ。

「お前はその子供と仲良くしているようだな?」
「……それが何か?」
「最初は幼女趣味なのかと疑ったが、最近は違うということに気が付いたんだ」
「何が言いたいんです?」
「ダニエル、お前はエアリーのことを狙っているんだろう!?」
「はあ?」

 私とダニエル殿下が同時に聞き返した。
 でも、レイシール様は私たちの様子などおかまいなしに話を続ける。

「残念だったな、ダニエル! エアリーは僕のものだ! お前には絶対に渡さない!」
「ちがいましゅ。こんやくしゃなだけであって、レイシールしゃまのものじゃないでしゅ!」

 シャーロットの姿のままで、私は思わず叫んでしまった。
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