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22 「碌な人間じゃないわ!」

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「ど、どうしてエアリー様がここに!? もう、助けてもらえたのですか?」
「いいえ。私は落ちていませんから、助けてもらう必要はありません」
「で、では、誰が落ちたと言うんです!?」

 ロアリン様は焦った顔になって言ったあと、自分で確かめようと思ったのか、慌てて落とし穴を覗き込んだ。
 落とし穴の中には外灯の光が届いていないようで、ロアリン様は落ちたのが誰だか、すぐにはわからないみたいだった。

「立入禁止なのに入る人間なんて碌な人間じゃないわ!」
「おい! まさか、ロアリンがこの落とし穴を作ったのか?」
「そ、そんな……!」

 レイシール様の声が聞こえた瞬間、ロアリン様は悲痛な声を上げた。

「レイシール様が落ちたんです」

 とどめをさすように私が冷たく言うと、愛人が話を引き継ぐ。

「レイシール様はこの場所がお気に入りなんです。きっと、エアリー様がよくここにいらっしゃるからだと思います。だから、今日もこちらに来ていたんです」

 レイシール様の愛人にしては珍しい、清楚系の美人だった。
 そんな彼女は俯いて驚きの話をしてくれた。

 レイシール様がこのガゼボを気に入っているですって?
 ベラとの逢引も、気に入っているから、ガゼボでしていたの? 
 本当に考えていることがわからないわ。

 私に他の女性との仲の良いシーンを見させて、何が面白いって言うのよ?

 レイシール様の本音なんて知りたくもないので、今は話題を変える。

「そんなことはどうでもいいわ。城の敷地内で勝手にこんなことをして、レイシール様を落としてしまうなんて、どういう処罰がくだされるかわかりませんわね」

 呆れた顔をして愛人から、ロアリン様のほうに視線を向けた。
 ロアリン様は焦って、自分の関与を否定する。

「私はこの落とし穴を掘ってなんていません!」
「シャーロットは落とし穴を掘るようにと、あなたが言っていたと言っていましたわよ?」
「それは誤解ですわ! そうです! その子供が落とし穴に興味を持ったから、あそこに落とし穴が掘られたのではないでしょうか!」
 
 ロアリン様の言い訳は苦しいものだった。

「では、シャーロットがこの落とし穴を掘らせたと言うのですか?」
「ええ、そうです! 私に掘ってほしいとお願いしてきたんです!」

 ロアリン様は表情を明るくして叫んだ。

 このまま、シャーロットのやったことにしてしまおうと考えているようだった。
 
「エアリー嬢!」

 その時、ダニエル殿下の声が聞こえて振り返ると、私たちの会話が聞こえていたのか、彼は駆け寄ってきて話しかけてくる。

「シャーロットに証言させよう。子供の言うことだからこそ、信憑性もあるものだよ。特に、シャーロットは故意に嘘をつくような子じゃない」
「そんな! 子供の言うことを信用するって言うんですか!?」

 ダニエル殿下にロアリン様が噛みついた。

「君の言うとおり、シャーロットがこの落とし穴を掘れと言ったのなら、シャーロットは素直にそれを認めると思う」
「ダニエル殿下」

 騎士の一人がダニエル殿下に近づいて発言の許可を得てから口を開く。

「シャーロット様はこの落とし穴に人が落ちないかと気にしておられました。そんな方がこんな落とし穴を掘れだなんて言うとは思えません」
「ああ。だからこそ、シャーロットを連れてこないと駄目なんだ」

 そう言って、ダニエル殿下が私を見た。

 シャーロットの姿になって戻ってくれば良いのね!

「わかりました。部屋に戻ってシャーロットを呼んできます!」

 騒ぎを聞きつけてやって来ていたメイドたちが、自分が代わりに呼びにいくと言ってくれたけれど、掃除以外で自分の部屋に入られるのは苦手だからと断り、急いで部屋に戻った。
 部屋に戻ると、コーンスープとシャーロット用の服が、デルトロさんによって、すでに用意されていた。
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