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20 「落とし穴に落ちたらしいよ」
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相手がロアリン様だとわかった時点で、私は扉を開けずに話をする。
「私の命を狙っている、ロアリン様が何の御用ですか?」
「ちょっと待ってください。私が何をしたと言うんですの? それに私は妖精を閉じ込めたと疑われているだけで、あなたの命を狙ったりなんかしておりません」
「シャーロットやダニエル殿下から、お話を聞きましたので信じられませんわ」
冷たく答えると、ロアリン様が不思議そうな声で尋ねてくる。
「どうして、私があなたを殺そうとしたと思ったんですの? 毒は何者かの仕業ですわよね? それに、あの子供から何を聞いたかわかりませんが、子供の言うことを信じるんですの?」
「子供は正直ですから。それに、あなたは魔法を使えるようですから、毒の魔法だって使えるのでしょう?」
「使えません! 教えてもらえませんでしたから!」
ロアリン様は強い口調で否定してきた。
一緒にロアリン様と留学していたダニエル殿下から聞いたところ、人の死につながるような魔法は魔導士に弟子入りしない限り、教えてもらえないとのことだった。
ロアリン様は弟子入りしようとしたみたいだけど、魔導士のほうから断られたと聞いた。
だから、妖精で魔法が使えるエディールさんに毒の魔法を頼んで、私やダニエル殿下を殺そうとした。
「それを証明できるものはありませんわよね?」
「では、ちゃんと顔を見て話しましょう! だから、中庭で少し散歩しませんか?」
後ろを振り返って窓の外を見てみると、もう薄暗かった。
今から出て行って散歩するとなると、かなり暗くなってしまう。
「申し訳ございませんがお断りしますわ」
「お願いします! 話をしたいんです!」
「なら、今だって話をできていますでしょう? このままどうぞ?」
「中庭のほうがゆっくり話せると思うんですの!」
ロアリン様は必死だった。
もしかして、落とし穴に私を落とすつもりなのかしら。
それだけじゃなく、部屋の中からは中庭のほうはあまり見ないし、落とし穴を掘っていた付近には個人の部屋はない。
もしかしたら、落とした後に生き埋めにしようと思っている可能性がある。
まだ、私を殺すつもりなのかしら。
とにかく、今日は付き合いたくないわ。
「なら、明日の朝ではいかがでしょう?」
「わ、わかりました! 必ず、明日の朝、中庭のガゼボに来てくださいね!」
「何時に行けば良いですか?」
「早い時間が良いですわ! 朝の7時なんてどうでしょう?」
「わかりました。朝の7時にガゼボに向かいます」
私が了承の意を伝えると、ロアリン様の声が一気に明るくなった。
「絶対よ! 絶対に来てくださいね! 絶対に遅れないでください!」
「わかりました」
ロアリン様は私の返事を聞くと、コツコツとヒールの音を軽快に響かせて遠ざかっていった。
ロアリン様の足音が聞こえなくなったところで、デルトロさんが尋ねてくる。
「本当に行くの?」
「行こうとは思っています。絶対に落とし穴に落ちたりなんかしませんけど」
「それはそうだよね。っていうか、あの落とし穴に落ちる人いる? たぶん、メイドたちは皆に危険だと伝えてるんだろ?」
「そうだと思いますけど」
私が頷いた時、転移魔法はまだ使えないけれど、城の敷地内はウロウロできるエディールさんが、コツコツと部屋の外から窓を叩いているのが見えた。
「おかえりなさい、エディールさん。どこかへ出かけていたんですか?」
窓を開けて中に招き入れると、エディールさんは大きく頷き、デルトロさんのほうを見つめた。
二人は念話をしたみたいで、デルトロさんが急に噴き出した。
「本当に!? あはは! 君は止めなかったの!?」
デルトロさんはお腹を抱えて笑った後に、私のほうに目を向けて言う。
「レイシールが落とし穴に落ちたらしいよ」
「レイシール様が!?」
デルトロさんに通訳してもらったところ、レイシール様が愛人の一人とガゼボに向かっていたらしい。
そこで、エディールさんは愛人の髪を引っ張るなどして、愛人だけは落とし穴の手前で足を止めさせた。
けれど、レイシール様はそのまま進んで、落とし穴に落ちたということだった。
「私の命を狙っている、ロアリン様が何の御用ですか?」
「ちょっと待ってください。私が何をしたと言うんですの? それに私は妖精を閉じ込めたと疑われているだけで、あなたの命を狙ったりなんかしておりません」
「シャーロットやダニエル殿下から、お話を聞きましたので信じられませんわ」
冷たく答えると、ロアリン様が不思議そうな声で尋ねてくる。
「どうして、私があなたを殺そうとしたと思ったんですの? 毒は何者かの仕業ですわよね? それに、あの子供から何を聞いたかわかりませんが、子供の言うことを信じるんですの?」
「子供は正直ですから。それに、あなたは魔法を使えるようですから、毒の魔法だって使えるのでしょう?」
「使えません! 教えてもらえませんでしたから!」
ロアリン様は強い口調で否定してきた。
一緒にロアリン様と留学していたダニエル殿下から聞いたところ、人の死につながるような魔法は魔導士に弟子入りしない限り、教えてもらえないとのことだった。
ロアリン様は弟子入りしようとしたみたいだけど、魔導士のほうから断られたと聞いた。
だから、妖精で魔法が使えるエディールさんに毒の魔法を頼んで、私やダニエル殿下を殺そうとした。
「それを証明できるものはありませんわよね?」
「では、ちゃんと顔を見て話しましょう! だから、中庭で少し散歩しませんか?」
後ろを振り返って窓の外を見てみると、もう薄暗かった。
今から出て行って散歩するとなると、かなり暗くなってしまう。
「申し訳ございませんがお断りしますわ」
「お願いします! 話をしたいんです!」
「なら、今だって話をできていますでしょう? このままどうぞ?」
「中庭のほうがゆっくり話せると思うんですの!」
ロアリン様は必死だった。
もしかして、落とし穴に私を落とすつもりなのかしら。
それだけじゃなく、部屋の中からは中庭のほうはあまり見ないし、落とし穴を掘っていた付近には個人の部屋はない。
もしかしたら、落とした後に生き埋めにしようと思っている可能性がある。
まだ、私を殺すつもりなのかしら。
とにかく、今日は付き合いたくないわ。
「なら、明日の朝ではいかがでしょう?」
「わ、わかりました! 必ず、明日の朝、中庭のガゼボに来てくださいね!」
「何時に行けば良いですか?」
「早い時間が良いですわ! 朝の7時なんてどうでしょう?」
「わかりました。朝の7時にガゼボに向かいます」
私が了承の意を伝えると、ロアリン様の声が一気に明るくなった。
「絶対よ! 絶対に来てくださいね! 絶対に遅れないでください!」
「わかりました」
ロアリン様は私の返事を聞くと、コツコツとヒールの音を軽快に響かせて遠ざかっていった。
ロアリン様の足音が聞こえなくなったところで、デルトロさんが尋ねてくる。
「本当に行くの?」
「行こうとは思っています。絶対に落とし穴に落ちたりなんかしませんけど」
「それはそうだよね。っていうか、あの落とし穴に落ちる人いる? たぶん、メイドたちは皆に危険だと伝えてるんだろ?」
「そうだと思いますけど」
私が頷いた時、転移魔法はまだ使えないけれど、城の敷地内はウロウロできるエディールさんが、コツコツと部屋の外から窓を叩いているのが見えた。
「おかえりなさい、エディールさん。どこかへ出かけていたんですか?」
窓を開けて中に招き入れると、エディールさんは大きく頷き、デルトロさんのほうを見つめた。
二人は念話をしたみたいで、デルトロさんが急に噴き出した。
「本当に!? あはは! 君は止めなかったの!?」
デルトロさんはお腹を抱えて笑った後に、私のほうに目を向けて言う。
「レイシールが落とし穴に落ちたらしいよ」
「レイシール様が!?」
デルトロさんに通訳してもらったところ、レイシール様が愛人の一人とガゼボに向かっていたらしい。
そこで、エディールさんは愛人の髪を引っ張るなどして、愛人だけは落とし穴の手前で足を止めさせた。
けれど、レイシール様はそのまま進んで、落とし穴に落ちたということだった。
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