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19 「排除するに決まっているでしょう」
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「何なのよ! この子供は! 本当に忌々しい! 私の邪魔ばかりして!」
「申し訳ございません、ロアリン様! すぐに移動いたします! シャーロット様、ここはロアリン様がお使いになるようです。違うところで美味しいコーンスープを飲みましょうね?」
メイドが慌てて私を抱きかかえようとした。
でも、ここは子供のパワーを十分に発揮させることにした。
「いやあ! シャーロットはここでたべりゅってきめたもん! ここじゃないといやだもん! しょれに、エアリーおねえしゃまはここは、よいばしょだっていってたもん! だから、ここでたべりゅもん!」
「シャーロット様、どうしたんです? いつもは、そんなワガママは言わないでしょう?」
「だって、ここがいいんだもん!」
「ああ、そう! 勝手にしなさい!」
ロアリン様は投げ捨てるように言うと、メイドを睨みつける。
「ちょっと! 今からここで作業をするけれど邪魔させないようにしてちょうだい! それから、他の人間に今やっていることを言うんじゃないわよ! 特にエアリー様とベラにはね!」
ロアリン様は舌打ちをして、メイドたちに向かって叫んだあと、連れてきていた男性たちに指示をする。
「ここに落とし穴を掘って頂戴!」
「……おとしあな?」
「うるさいわよ! あなたは黙って、コーンスープでも何でも飲んでなさい!」
「んー。今はコーンシュープよりも、ロアリンしゃまがきになる」
チヤホヤされているのに慣れているから、自分をかまってくれないロアリン様が気になってしょうがないふりをする。
メイドと一緒にロアリン様に近づくと、彼女は怒りの表情になった。
「あなた、先日、私にしたことをもう忘れたって言うの!? このままでは、ダニエル殿下との婚約は解消されるのよ! そんなことになったら、レイシール様に会えなくなってしまうじゃない!」
ロアリン様は頭を抱えて話を続ける。
「レイシール様と結ばれるのは、この私なのよ! ベラにレイシール様の子供ができる前に、エアリー様とベラを!」
「……どうしゅるの?」
「排除するに決まっているでしょう」
素直にロアリン様は答えたけれど、すぐに焦った顔になった。
「あなたに教える必要はないでしょう! 早くガゼボの中に戻りなさい!」
「……ここに、おとしあなをつくりゅの?」
「……そうよ」
ロアリン様は小さな声だけど、律儀に返事をしてくれた。
その後は、改めて男性たちに指示をして、落とし穴を掘る作業を進めさせようとする。
「子供がチョロチョロしているけど気にしないで!」
「シャーロットもおとしあな、つくりたい」
「違うところで作りなさい。あ、そうだわ。誰がこの落とし穴を作ったのか聞かれたら、この子供のせいにすればいいんだわ」
ロアリン様は心の声がダダ漏れだった。
こんな大掛かりな落とし穴を子供は考えたりしないでしょう……。
魔法が使えるからか、彼女はかなり強気のようだった。
ダニエル殿下が、コーンスープを飲んだら、キツネになるという魔法をかけられてしまってから、両陛下とレイシール様は状態異常の魔法にかからないように魔道具を持ち歩いているらしい。
だから、両陛下とレイシール様はロアリン様に惑わされない。
だけど、他の人間はそうではないから困ったものだった。
それにしても、落とし穴を掘って私やベラを落とそうだなんて馬鹿げている。
あまりにも馬鹿馬鹿しいので興味をなくした私は、ガゼボの中に戻り、メイドに小声でお願いする。
「あしょこ、しらないひとがとおったら、あぶないから、とおっちゃだめって、みんなにつたえてほしいでしゅ」
「シャーロット様はお優しいですね。必ず伝えるようにいたしますね」
話を聞いてくれたメイドも、こんな所に落とし穴なんて、と思っていたみたいだった。
小声で頷いたあと、他のメイドに一声かけて、私が声を掛けたメイドは、ガゼボから離れていく。
私やベラが引っかかるよりも、警備している人たちが落とし穴に落ちそうだけど、それは考えているのかしら。
その後、コーンスープを飲み終えた私は、お昼寝をすると言って、部屋に戻った。
私の部屋でシャーロットも寝ている設定になっている。
だから、メイドは私のふりをしてくれているデルトロさんにシャーロットを預けると「夕食の少し前にご連絡いたします」と言って部屋から出て行った。
服を脱いで、元の姿に戻るまで、ベッドで昼寝をすることにした。
数時間後、目を覚ました時には外はすっかり暗くなっていて、私も元の姿に戻っていた。
服に着替え終わったところで、扉がノックされた。
夕食の時間かと思って返事をすると、私の部屋にやってきたのはメイドではなく、ロアリン様だとわかった。
「申し訳ございません、ロアリン様! すぐに移動いたします! シャーロット様、ここはロアリン様がお使いになるようです。違うところで美味しいコーンスープを飲みましょうね?」
メイドが慌てて私を抱きかかえようとした。
でも、ここは子供のパワーを十分に発揮させることにした。
「いやあ! シャーロットはここでたべりゅってきめたもん! ここじゃないといやだもん! しょれに、エアリーおねえしゃまはここは、よいばしょだっていってたもん! だから、ここでたべりゅもん!」
「シャーロット様、どうしたんです? いつもは、そんなワガママは言わないでしょう?」
「だって、ここがいいんだもん!」
「ああ、そう! 勝手にしなさい!」
ロアリン様は投げ捨てるように言うと、メイドを睨みつける。
「ちょっと! 今からここで作業をするけれど邪魔させないようにしてちょうだい! それから、他の人間に今やっていることを言うんじゃないわよ! 特にエアリー様とベラにはね!」
ロアリン様は舌打ちをして、メイドたちに向かって叫んだあと、連れてきていた男性たちに指示をする。
「ここに落とし穴を掘って頂戴!」
「……おとしあな?」
「うるさいわよ! あなたは黙って、コーンスープでも何でも飲んでなさい!」
「んー。今はコーンシュープよりも、ロアリンしゃまがきになる」
チヤホヤされているのに慣れているから、自分をかまってくれないロアリン様が気になってしょうがないふりをする。
メイドと一緒にロアリン様に近づくと、彼女は怒りの表情になった。
「あなた、先日、私にしたことをもう忘れたって言うの!? このままでは、ダニエル殿下との婚約は解消されるのよ! そんなことになったら、レイシール様に会えなくなってしまうじゃない!」
ロアリン様は頭を抱えて話を続ける。
「レイシール様と結ばれるのは、この私なのよ! ベラにレイシール様の子供ができる前に、エアリー様とベラを!」
「……どうしゅるの?」
「排除するに決まっているでしょう」
素直にロアリン様は答えたけれど、すぐに焦った顔になった。
「あなたに教える必要はないでしょう! 早くガゼボの中に戻りなさい!」
「……ここに、おとしあなをつくりゅの?」
「……そうよ」
ロアリン様は小さな声だけど、律儀に返事をしてくれた。
その後は、改めて男性たちに指示をして、落とし穴を掘る作業を進めさせようとする。
「子供がチョロチョロしているけど気にしないで!」
「シャーロットもおとしあな、つくりたい」
「違うところで作りなさい。あ、そうだわ。誰がこの落とし穴を作ったのか聞かれたら、この子供のせいにすればいいんだわ」
ロアリン様は心の声がダダ漏れだった。
こんな大掛かりな落とし穴を子供は考えたりしないでしょう……。
魔法が使えるからか、彼女はかなり強気のようだった。
ダニエル殿下が、コーンスープを飲んだら、キツネになるという魔法をかけられてしまってから、両陛下とレイシール様は状態異常の魔法にかからないように魔道具を持ち歩いているらしい。
だから、両陛下とレイシール様はロアリン様に惑わされない。
だけど、他の人間はそうではないから困ったものだった。
それにしても、落とし穴を掘って私やベラを落とそうだなんて馬鹿げている。
あまりにも馬鹿馬鹿しいので興味をなくした私は、ガゼボの中に戻り、メイドに小声でお願いする。
「あしょこ、しらないひとがとおったら、あぶないから、とおっちゃだめって、みんなにつたえてほしいでしゅ」
「シャーロット様はお優しいですね。必ず伝えるようにいたしますね」
話を聞いてくれたメイドも、こんな所に落とし穴なんて、と思っていたみたいだった。
小声で頷いたあと、他のメイドに一声かけて、私が声を掛けたメイドは、ガゼボから離れていく。
私やベラが引っかかるよりも、警備している人たちが落とし穴に落ちそうだけど、それは考えているのかしら。
その後、コーンスープを飲み終えた私は、お昼寝をすると言って、部屋に戻った。
私の部屋でシャーロットも寝ている設定になっている。
だから、メイドは私のふりをしてくれているデルトロさんにシャーロットを預けると「夕食の少し前にご連絡いたします」と言って部屋から出て行った。
服を脱いで、元の姿に戻るまで、ベッドで昼寝をすることにした。
数時間後、目を覚ました時には外はすっかり暗くなっていて、私も元の姿に戻っていた。
服に着替え終わったところで、扉がノックされた。
夕食の時間かと思って返事をすると、私の部屋にやってきたのはメイドではなく、ロアリン様だとわかった。
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