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15 「また、あしょんでくだしゃい」

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「別に魔法をかけられるのは私だけではありませんわ! ダニエル殿下! あなただって魔法は使えるはずです!」

 ロアリン様がとんちんかんな答えを返してきたので、ダニエル殿下は首を傾げる。

「意味がわからない。僕が君のウォークインクローゼットの中に忍び込んで、妖精を鳥かごに閉じ込め、話をすることができないように魔法をかけたと言いたのか? それは何のために?」
「えっ、あ、そ、それは」
「動揺しているのかもしれないが、その言い訳はあまりにも無理がある」

 ダニエル殿下に真面目な顔で言われたロアリン様は、羞恥心からなのか、顔が真っ赤になった。

「ダニエルでんか、ようせーしゃん。たすけましょう」

 ダニエル殿下のズボンの一部を軽く掴んで引っ張ると、しゃがみ込んで聞いてくる。

「殴られたところは大丈夫か?」
「すこし、ヒリヒリしましゅけど、だいじょーぶでしゅ。それよりも、よーせいさんでしゅ」
「そうだな」

 ダニエル殿下は私を片手で抱き上げて、ロアリン様は顔を真っ赤にした。

「そこの鳥かごの中にいる妖精は、君のものではないと言うんだな?」
「そうです! 私は何もしておりません! 全て侍女の仕業です!」

 あくまでも、ロアリン様はしらを切るつもりみたい。
 こんな人をいつまでも相手にしていられない。
 そう思ったのは、私だけではなく、ダニエル殿下も同じ気持ちのようだった。

「君の侍女には警察で話をしてもらう。いいね?」
「警察で、ですか?」
「それはそうだろ。侍女の君は王城警察の本部に行って、事情を話すんだ」

 ダニエル殿下に促されたロアリン様の侍女は「承知しました」と叫び、逃げるようにして部屋から出て行った。

「では、失礼する」

 片手には鳥かご、もう片方の手には私を抱きかかえたダニエル殿下が、ロアリン様に声を掛けた。
 すると、ロアリン様が訴えてきた。

「ダニエル殿下、今回の件は許せませんわ。侍女はもちろん悪いですが、暴れまわった、その子供も悪いのではないでしょうか?」
「そうだな。彼女はエアリー嬢の親戚だ。暴れすぎて迷惑をかけたと、エアリー嬢や兄上に伝えておこう」
「あ、ありがとうございます!」

 ロアリン様は、これで私とレイシール様の婚約が解消されると思い込んだようで、明るい笑顔を見せた。

 きっと、レイシール様はこれくらいのことで、私と婚約を解消してくれるようには思えない。

 そんなに簡単に解消してくれるなら困っていないわ。

「ねぇねぇ、ロアリンしゃま」

 私がロアリン様に話しかけたからか、歩き始めていたダニエル殿下が足を止めた。

「何よ!」
「しゃわるなっていわれてたのに、はこをけっちゃってごめんなしゃい。でもね、うしょをつくのはだめでしゅ。よいおとなになれましぇんよ」
「嘘なんてついてないわよ! 本当に生意気な子ね!」

 否定してきたロアリン様に笑顔で手を振る。

「バイバーイ! あしょんでくれてありがとーございましゅ! また、あしょんでくだしゃい!」
「遊ぶわけ無いでしょう! もう二度と来ないでちょうだい!」

 ロアリン様は叫び、ダニエル殿下が私たちを連れて部屋の外に出ると、すぐに鍵を締めてしまったのだった。

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