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5 「ここから出ていく事ね」
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一瞬、ロアリン様が冗談を言ったのかと思った。
でも、彼女の表情から察するに、そうではなさそうだった。
ロアリン様は胸の前で腕を組み、なぜか勝ち誇ったような顔をしていた。
「私はまだ死にたくありませんので、その方法はありえません。ところで、ロアリン様がどうして私とレイシール様の関係を気にされるのですか?」
冷たい声で尋ねると、ロアリン様は腕を組んだまま答える。
「簡単なことよ。レイシール様を好きになったから言っているだけ」
「レイシール様を?」
「ええ。外見も中身も素敵な方だわ」
レイシール様の愛人候補がまた増えてしまった。
いつ、二人は関わりを持ったのかしら。
ロアリン様も私と同じで、王族の婚約者ということで、この城に滞在している。
城内で出会うことがあってもおかしくはない。
でも、いつも、レイシール様の近くには愛人がいるはずなのに、どうやって好きになるほどの関わりを持てるの?
とにかく、本人に尋ねてみることにする。
「……ロアリン様にはダニエル殿下がいらっしゃるでしょう? それなのにレイシール様のことを好きになったのですか?」
「ダニエル殿下との婚約は親が決めた相手ですわ。好きだというわけではなかったんです」
「そうかもしれませんが、お相手は第二王子殿下です。そのような言い方はどうかと思います」
「本人が気にしないのですから良いのです」
ロアリン様は鼻で笑った。
ロアリン様とダニエル殿下の仲は良くないのかしら?
だから、ロアリン様だけ、先に城に来られたの?
面倒なことになったわ。
こんな事なら、もっと早くに言ってくれれば良かったのに!
両陛下にご相談しなければならない案件じゃないの!
もう一度、話をしなければならないわ。
「ロアリン様とダニエル殿下との仲は、あまりよろしくないという認識で良いのでしょうか?」
「そうですわ。ダニエル殿下は仲良くしようとして努力はしてくれていましたが、レイシール様と比べたら魅力がないんです。それに、あのオレンジ色の瞳が気持ち悪いんです。ですから、あなたとはお似合いだと思いますわ」
「私の瞳もオレンジ色ですからね」
頷いてから、ロアリン様に尋ねてみる。
「オレンジ色の瞳の何がいけないと言うのです?」
「そんな事も知らないのですか? ……と言いたいところですが、あなたは他国の人間でしたわね」
ロアリン様は少し考えてから閉じた口を開く。
「これは言い伝えで本当だとは限りません。この国では歴史上、オレンジ色の瞳を持つ人間は改革をしていることが多いのです」
「改革、ですか」
安易な考えかもしれないけど、ダニエル殿下がレイシール様を王太子の座からひきずりおろす可能性があるということね。
だから、嫌っている?
両陛下の瞳はオレンジ色じゃなかった。
だから余計に真実味を帯びているのかもしれない。
それならそれで、真面目に動けば良いだけなのに。
「あなた、このままだと命を狙われるわよ。死にたくなければ、ここから出ていく事ね」
ロアリン様はハーフツインの髪を揺らして立ち去っていく。
命を狙われるだなんて最悪だわ。
しかも、私の命を狙っているのはロアリン様じゃないの。
全てを投げ出して逃げてみようか。
でも、何の関係もない人たちに迷惑をかけることになる。
といっても、自分の命がかかっているのだから、そんな悠長なことは言っていられないわ。
踵を返して、両陛下の側近の控室に向かう。
両陛下にもう一度、謁見を求めるためだった。
当たり前のことかもしれないが、今日はもう認められなかった。
明日には段取りをつけると言ってくれたので、命を狙われているという話だけ伝えてもらうようにお願いした。
そして、その日の晩、事件は起きる。
でも、彼女の表情から察するに、そうではなさそうだった。
ロアリン様は胸の前で腕を組み、なぜか勝ち誇ったような顔をしていた。
「私はまだ死にたくありませんので、その方法はありえません。ところで、ロアリン様がどうして私とレイシール様の関係を気にされるのですか?」
冷たい声で尋ねると、ロアリン様は腕を組んだまま答える。
「簡単なことよ。レイシール様を好きになったから言っているだけ」
「レイシール様を?」
「ええ。外見も中身も素敵な方だわ」
レイシール様の愛人候補がまた増えてしまった。
いつ、二人は関わりを持ったのかしら。
ロアリン様も私と同じで、王族の婚約者ということで、この城に滞在している。
城内で出会うことがあってもおかしくはない。
でも、いつも、レイシール様の近くには愛人がいるはずなのに、どうやって好きになるほどの関わりを持てるの?
とにかく、本人に尋ねてみることにする。
「……ロアリン様にはダニエル殿下がいらっしゃるでしょう? それなのにレイシール様のことを好きになったのですか?」
「ダニエル殿下との婚約は親が決めた相手ですわ。好きだというわけではなかったんです」
「そうかもしれませんが、お相手は第二王子殿下です。そのような言い方はどうかと思います」
「本人が気にしないのですから良いのです」
ロアリン様は鼻で笑った。
ロアリン様とダニエル殿下の仲は良くないのかしら?
だから、ロアリン様だけ、先に城に来られたの?
面倒なことになったわ。
こんな事なら、もっと早くに言ってくれれば良かったのに!
両陛下にご相談しなければならない案件じゃないの!
もう一度、話をしなければならないわ。
「ロアリン様とダニエル殿下との仲は、あまりよろしくないという認識で良いのでしょうか?」
「そうですわ。ダニエル殿下は仲良くしようとして努力はしてくれていましたが、レイシール様と比べたら魅力がないんです。それに、あのオレンジ色の瞳が気持ち悪いんです。ですから、あなたとはお似合いだと思いますわ」
「私の瞳もオレンジ色ですからね」
頷いてから、ロアリン様に尋ねてみる。
「オレンジ色の瞳の何がいけないと言うのです?」
「そんな事も知らないのですか? ……と言いたいところですが、あなたは他国の人間でしたわね」
ロアリン様は少し考えてから閉じた口を開く。
「これは言い伝えで本当だとは限りません。この国では歴史上、オレンジ色の瞳を持つ人間は改革をしていることが多いのです」
「改革、ですか」
安易な考えかもしれないけど、ダニエル殿下がレイシール様を王太子の座からひきずりおろす可能性があるということね。
だから、嫌っている?
両陛下の瞳はオレンジ色じゃなかった。
だから余計に真実味を帯びているのかもしれない。
それならそれで、真面目に動けば良いだけなのに。
「あなた、このままだと命を狙われるわよ。死にたくなければ、ここから出ていく事ね」
ロアリン様はハーフツインの髪を揺らして立ち去っていく。
命を狙われるだなんて最悪だわ。
しかも、私の命を狙っているのはロアリン様じゃないの。
全てを投げ出して逃げてみようか。
でも、何の関係もない人たちに迷惑をかけることになる。
といっても、自分の命がかかっているのだから、そんな悠長なことは言っていられないわ。
踵を返して、両陛下の側近の控室に向かう。
両陛下にもう一度、謁見を求めるためだった。
当たり前のことかもしれないが、今日はもう認められなかった。
明日には段取りをつけると言ってくれたので、命を狙われているという話だけ伝えてもらうようにお願いした。
そして、その日の晩、事件は起きる。
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