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4 「あなたが死ねばそれで終わりよ」
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ベラがレイシール様の愛人になったせいで、侍女もいなくなった。
その為、城で働いているメイドに、自分だけではできない事を頼まざるを得なくなってしまった。
メイド達は私のことをお飾りの婚約者だと思っている。
だからか、お願いしたことはやってくれても、どこか気怠げに仕事をしていた。
やってくれるだけ、有り難いと思わないといけないわ。
ベラとの一件から2日後、両陛下と留学を終えた第二王子のダニエル殿下が城に戻られた。
早速、両陛下に謁見を求めたところ、すぐに許可が下りて、謁見することになった。
レイシール様との話をしてみたところ、両陛下はレイシール様の性格を理解しておられて、婚約の解消は認められないと申し訳無さげに言ってきた。
それだけでなく、私にレイシール様を支えてあげてほしいとお願いしてきた。
多くの女性はレイシール様の虜になり、彼の言う通りに動いてしまう。
でも、私は違う。
元々、男性に興味のない高位貴族の女性を国内外で探していたら、私のような都合の良い存在が何人か見つかったのだそうだ。
そして、その中からレイシール様が私を選んだのだと言う。
「レイシール様は私のことを愛しているとおっしゃっていましたが、それは嘘ですわよね?」
私の質問に両陛下は苦笑して否定する。
「いや、あいつは本気のようだよ。もちろん、そう思いたくなる気持ちはわかる」
「こんな事を言ってはなんだけれど、あなた以外の候補も薦めてみたのよ。それなのにあなたを選んだの」
一体、どういう事なのかわからない。
やはり、顔が好みだっただけ?
それで、執着されているだなんて最悪だわ。
両陛下には、どうしても耐えられなくなった場合は相談に乗ってほしいとお願いして、謁見の間を辞去した。
嫌になるわ。
そう、はっきり言いたかったけど、相手は国王陛下だ。
さすがに口には出せなかった。
イライラする気持ちを抑える為、気分転換に中庭に出た。
時刻は昼過ぎだというのに、これから雨でも降るのか空が雲に覆われていて薄暗い。
「オレンジ色の瞳をあれだけ嫌っているのに、私に執着する理由は何なの?」
中庭の小道を歩きながら、誰にでもなく問いかけた。
そんな時、視線を感じて、不意に上を見上げる。
白亜の城の二階の窓から、動物が私を見つめているのに気がついた。
三角の耳と犬のようなマズルがある。
毛は薄いオレンジ色で、昔、助けたことのある動物に似ている気がした。
5年ほど前、私と同じ、オレンジ色の瞳を持つキツネという動物にそっくりな動物を助けたことがある。
なぜ、キツネだと断定できないのかというと、普通のキツネはコンとは鳴かない。
私が出会ったキツネは「コン、コーン」と鳴いていたから、新種の動物だったのかもしれない。
動物と見つめ合っていると、動物がいる隣の部屋のカーテンが開き、レイシール様とベラが仲睦まじげな姿を見せた。
嫌な気分になり、二人に気付かないふりをして、急いでその場から離れた。
部屋の前に帰って来ると、ロアリン様が彼女の侍女と一緒に私の帰りを待っていた。
私が声をかける前に話しかけてくる。
「婚約の解消はできましたの?」
「……いいえ。両陛下からも許可はおりませんでした」
「とにかく婚約の解消、もしくは破棄をしなさい!」
「……そうしたいのは山々ですが、何か良い手はあるのですか?」
「あるわ」
ロアリン様は頷いたかと思うと、とんでもない事を口にする。
「あなたが死ねばそれで終わりよ」
「はい?」
婚約の解消、もしくは破棄をする為に、なぜ、私が死ななければならないの?
その為、城で働いているメイドに、自分だけではできない事を頼まざるを得なくなってしまった。
メイド達は私のことをお飾りの婚約者だと思っている。
だからか、お願いしたことはやってくれても、どこか気怠げに仕事をしていた。
やってくれるだけ、有り難いと思わないといけないわ。
ベラとの一件から2日後、両陛下と留学を終えた第二王子のダニエル殿下が城に戻られた。
早速、両陛下に謁見を求めたところ、すぐに許可が下りて、謁見することになった。
レイシール様との話をしてみたところ、両陛下はレイシール様の性格を理解しておられて、婚約の解消は認められないと申し訳無さげに言ってきた。
それだけでなく、私にレイシール様を支えてあげてほしいとお願いしてきた。
多くの女性はレイシール様の虜になり、彼の言う通りに動いてしまう。
でも、私は違う。
元々、男性に興味のない高位貴族の女性を国内外で探していたら、私のような都合の良い存在が何人か見つかったのだそうだ。
そして、その中からレイシール様が私を選んだのだと言う。
「レイシール様は私のことを愛しているとおっしゃっていましたが、それは嘘ですわよね?」
私の質問に両陛下は苦笑して否定する。
「いや、あいつは本気のようだよ。もちろん、そう思いたくなる気持ちはわかる」
「こんな事を言ってはなんだけれど、あなた以外の候補も薦めてみたのよ。それなのにあなたを選んだの」
一体、どういう事なのかわからない。
やはり、顔が好みだっただけ?
それで、執着されているだなんて最悪だわ。
両陛下には、どうしても耐えられなくなった場合は相談に乗ってほしいとお願いして、謁見の間を辞去した。
嫌になるわ。
そう、はっきり言いたかったけど、相手は国王陛下だ。
さすがに口には出せなかった。
イライラする気持ちを抑える為、気分転換に中庭に出た。
時刻は昼過ぎだというのに、これから雨でも降るのか空が雲に覆われていて薄暗い。
「オレンジ色の瞳をあれだけ嫌っているのに、私に執着する理由は何なの?」
中庭の小道を歩きながら、誰にでもなく問いかけた。
そんな時、視線を感じて、不意に上を見上げる。
白亜の城の二階の窓から、動物が私を見つめているのに気がついた。
三角の耳と犬のようなマズルがある。
毛は薄いオレンジ色で、昔、助けたことのある動物に似ている気がした。
5年ほど前、私と同じ、オレンジ色の瞳を持つキツネという動物にそっくりな動物を助けたことがある。
なぜ、キツネだと断定できないのかというと、普通のキツネはコンとは鳴かない。
私が出会ったキツネは「コン、コーン」と鳴いていたから、新種の動物だったのかもしれない。
動物と見つめ合っていると、動物がいる隣の部屋のカーテンが開き、レイシール様とベラが仲睦まじげな姿を見せた。
嫌な気分になり、二人に気付かないふりをして、急いでその場から離れた。
部屋の前に帰って来ると、ロアリン様が彼女の侍女と一緒に私の帰りを待っていた。
私が声をかける前に話しかけてくる。
「婚約の解消はできましたの?」
「……いいえ。両陛下からも許可はおりませんでした」
「とにかく婚約の解消、もしくは破棄をしなさい!」
「……そうしたいのは山々ですが、何か良い手はあるのですか?」
「あるわ」
ロアリン様は頷いたかと思うと、とんでもない事を口にする。
「あなたが死ねばそれで終わりよ」
「はい?」
婚約の解消、もしくは破棄をする為に、なぜ、私が死ななければならないの?
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