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42 婚約者の元継母との話②
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※いじめについての胸糞発言があります。
苦手な方はお控えくださいませ。
取り調べをしていた人達が出ていくと、しんと部屋の中が静まり返った。
ジェリー様はとりあえず、私を見守ってくれるようで、黙って、私の横に立ってくれている。
「その時は幸せそうだったから良いと思ったのよ……」
「そんな答えでは納得いきません。あなたはセイ様に裏切られたから、同じようにセイ様を売ったんだけですよね?」
「うるさいわね! 私は何も悪くないわ!」
イアーラ様は椅子から立ち上がって叫ぶ。
「セイが勝手に使用人達を使って、子供を入れ替えさせたのよ! 私はそれを聞いただけ! 何も悪くないわ!」
「だから、それをいつ聞いたのです?」
「彼女が病院を出てからすぐのことだけれど……?」
イアーラ様が訝しげな顔で答えた。
どうして、時期を知りたがるのかが分からないみたいだった。
知っていて言わなかったというだけなら、まさか、その時はそうだと思っていなかったと言えば良いし、罪に問われることはないので、イアーラ様としては余裕なのだと思う。
ただ、私がこの質問をしたのは、イアーラ様の罪がどうこうという話ではない。
「そうですか……。答えていただき、ありがとうございます」
「何よ。その時に言えば良かったのにって? 言うわけないじゃないの、そんな楽しい話を! だって、ありえないでしょう? 子供を取りかえるのよ? 以前、いじめていた女の子供を好き勝手できるなんてなんて楽しいの!」
「最低だな」
イアーラ様の言葉を聞いたジェリー様が呟いた。
すると、イアーラ様は鼻で笑う。
「ジェラルド様にはわからないでしょうね。あなたはソワレ様の子供ですもの。ソワレ様はいじめられていましたし、いじめをするような子には育てなかったでしょう」
そこで一度言葉を止めたあと、イアーラ様は笑いながら続ける。
「私だってやりたくてやったわけじゃなかったんです。でも、一度、味わった興奮はくせになるのです。私の一言で不幸になっていくんですのよ? それは、私にそんな力があるからなのです! だから、あの女も死んだのよ!」
「意味がわからない。そんな力とは何だ?」
「人に崇められる力です。私は選ばれた者なの。だから、何をしても許されるのです」
「そんなわけないだろう!」
「そんなわけないわ!」
ジェリー様と私のイアーラ様の言葉を否定する声が重なった。
イアーラ様は怒りをあらわにしている私達を見て言う。
「いじめられた側はそう言うでしょう。痛みを知っているからね。でも、私はその痛みを知らないんです。だから、人の気持ちを考えろと言われてもわからないのよ」
「……わかろうともしていないんでしょう?」
私が尋ねると、イアーラ様は頷く。
「そうね。私には絶対にありえないことだから」
「……それはどうかな」
「……何が言いたいの?」
イアーラ様が尋ねると、ジェリー様は冷たい笑みを浮かべて答える。
「あなたはルワ侯爵夫妻を脅していたようだが、司法取引をした結果、あなたが、セイを拉致監禁するように指示したと話した」
「……嘘でしょう!? そんな!」
「嘘じゃない。だから、あなたは捕まるんだ」
「嫌よ、そんな……! どうして、話したりするのよ! 侯爵達は馬鹿なの!?」
「馬鹿なんかじゃない。賢いんだよ。自分達のダメージが最小で済むようにしたんだ」
ジェリー様の言葉を聞いたイアーラ様の体がガタガタと震え始めた。
「私はどうなるの!?」
「あなたには特別な罰を用意してある。これについては、父から連絡があると思うから、楽しみにしておいてくれ」
ジェリー様が答えたタイミングで、ヨウビル公爵閣下が中に入ってきた。
「父上、良いタイミングです」
「話が聞こえていたからな」
「高級宿なのに筒抜けですか」
ジェリー様が苦笑すると、閣下は私の方に顔を向ける。
「聞きたいことはもうないか?」
「はい。結局、イアーラ様は自分がやったことの意味を理解していても後悔したりしていません。それがわかったので、彼女がどうなっても、私は気にせずにいられます」
「ちょっと待ちなさい! そんな言い方はないでしょう!」
イアーラ様は閣下が現れたことにも驚いているけれど、自分がこれからどうなるのか不安でたまらないようだった。
「イアーラ、君には今まで私の夫人でいてくれたお礼に楽な罰にしてもらうことにする」
「ら、楽な……罰?」
イアーラ様の不安そうにしていた表情が少しだけ緩んだ。
「そうだ。君には隣国の国王の側室になってもらう」
「なんですって!?」
イアーラ様の表情が悲痛なものに変わった。
それもそのはず。
隣国の国王陛下には複数の側室がおり、側室になった順番に側室同士だけで通じる権力があたえられているらしい。
だから、新入りは何をされるかわからない。
側室の間で争いが激しく、側室だけが住む離れでは、いじめだけでなく、つい最近、殺人までもが起こっていたからだった。
※次話はイアーラsideです。
苦手な方はお控えくださいませ。
取り調べをしていた人達が出ていくと、しんと部屋の中が静まり返った。
ジェリー様はとりあえず、私を見守ってくれるようで、黙って、私の横に立ってくれている。
「その時は幸せそうだったから良いと思ったのよ……」
「そんな答えでは納得いきません。あなたはセイ様に裏切られたから、同じようにセイ様を売ったんだけですよね?」
「うるさいわね! 私は何も悪くないわ!」
イアーラ様は椅子から立ち上がって叫ぶ。
「セイが勝手に使用人達を使って、子供を入れ替えさせたのよ! 私はそれを聞いただけ! 何も悪くないわ!」
「だから、それをいつ聞いたのです?」
「彼女が病院を出てからすぐのことだけれど……?」
イアーラ様が訝しげな顔で答えた。
どうして、時期を知りたがるのかが分からないみたいだった。
知っていて言わなかったというだけなら、まさか、その時はそうだと思っていなかったと言えば良いし、罪に問われることはないので、イアーラ様としては余裕なのだと思う。
ただ、私がこの質問をしたのは、イアーラ様の罪がどうこうという話ではない。
「そうですか……。答えていただき、ありがとうございます」
「何よ。その時に言えば良かったのにって? 言うわけないじゃないの、そんな楽しい話を! だって、ありえないでしょう? 子供を取りかえるのよ? 以前、いじめていた女の子供を好き勝手できるなんてなんて楽しいの!」
「最低だな」
イアーラ様の言葉を聞いたジェリー様が呟いた。
すると、イアーラ様は鼻で笑う。
「ジェラルド様にはわからないでしょうね。あなたはソワレ様の子供ですもの。ソワレ様はいじめられていましたし、いじめをするような子には育てなかったでしょう」
そこで一度言葉を止めたあと、イアーラ様は笑いながら続ける。
「私だってやりたくてやったわけじゃなかったんです。でも、一度、味わった興奮はくせになるのです。私の一言で不幸になっていくんですのよ? それは、私にそんな力があるからなのです! だから、あの女も死んだのよ!」
「意味がわからない。そんな力とは何だ?」
「人に崇められる力です。私は選ばれた者なの。だから、何をしても許されるのです」
「そんなわけないだろう!」
「そんなわけないわ!」
ジェリー様と私のイアーラ様の言葉を否定する声が重なった。
イアーラ様は怒りをあらわにしている私達を見て言う。
「いじめられた側はそう言うでしょう。痛みを知っているからね。でも、私はその痛みを知らないんです。だから、人の気持ちを考えろと言われてもわからないのよ」
「……わかろうともしていないんでしょう?」
私が尋ねると、イアーラ様は頷く。
「そうね。私には絶対にありえないことだから」
「……それはどうかな」
「……何が言いたいの?」
イアーラ様が尋ねると、ジェリー様は冷たい笑みを浮かべて答える。
「あなたはルワ侯爵夫妻を脅していたようだが、司法取引をした結果、あなたが、セイを拉致監禁するように指示したと話した」
「……嘘でしょう!? そんな!」
「嘘じゃない。だから、あなたは捕まるんだ」
「嫌よ、そんな……! どうして、話したりするのよ! 侯爵達は馬鹿なの!?」
「馬鹿なんかじゃない。賢いんだよ。自分達のダメージが最小で済むようにしたんだ」
ジェリー様の言葉を聞いたイアーラ様の体がガタガタと震え始めた。
「私はどうなるの!?」
「あなたには特別な罰を用意してある。これについては、父から連絡があると思うから、楽しみにしておいてくれ」
ジェリー様が答えたタイミングで、ヨウビル公爵閣下が中に入ってきた。
「父上、良いタイミングです」
「話が聞こえていたからな」
「高級宿なのに筒抜けですか」
ジェリー様が苦笑すると、閣下は私の方に顔を向ける。
「聞きたいことはもうないか?」
「はい。結局、イアーラ様は自分がやったことの意味を理解していても後悔したりしていません。それがわかったので、彼女がどうなっても、私は気にせずにいられます」
「ちょっと待ちなさい! そんな言い方はないでしょう!」
イアーラ様は閣下が現れたことにも驚いているけれど、自分がこれからどうなるのか不安でたまらないようだった。
「イアーラ、君には今まで私の夫人でいてくれたお礼に楽な罰にしてもらうことにする」
「ら、楽な……罰?」
イアーラ様の不安そうにしていた表情が少しだけ緩んだ。
「そうだ。君には隣国の国王の側室になってもらう」
「なんですって!?」
イアーラ様の表情が悲痛なものに変わった。
それもそのはず。
隣国の国王陛下には複数の側室がおり、側室になった順番に側室同士だけで通じる権力があたえられているらしい。
だから、新入りは何をされるかわからない。
側室の間で争いが激しく、側室だけが住む離れでは、いじめだけでなく、つい最近、殺人までもが起こっていたからだった。
※次話はイアーラsideです。
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