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41 婚約者の元継母との話①

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 イアーラ様が連行された場所は、貴族しか泊まれない宿屋だった。
 セイ様は平民になって少し経つけれど、イアーラ様は離婚したばかりなのと、ルア侯爵夫妻がお金を出したため、ホテルで軟禁されている状態らしい。

 セイ様がいた留置場は白い石造りの建物で冷たい雰囲気を感じさせるものだったけれど、イアーラ様がいる宿屋は、掃除も行き届いていて、とても綺麗だった。

 任意の取り調べということもあるからかもしれないけれど、犯罪者の可能性があると思われる人間がいれられる場所とは思えなかった。

 部屋に近づいていくと、開け放たれている部屋の扉の前に黒の上下のスーツを着た男性二人が立っているのが見えた。

「……あちらの部屋になります」

 その部屋が私達を案内してくれた男性が手で示した部屋だった。
 スーツの男性にジェリー様が声を掛けようとすると、イアーラ様の声が聞こえてきた。

「だから言っているでしょう? 私は滞在していただけで、彼女が監禁されていたなんて知らないわ。あなた達、私のことよりもセイさんを取り調べてきなさいよ!」
「セイ様の取り調べはちゃんとされていますよ」

 ジェリー様がそう言って、一足早く部屋の中に入っていく。

 取り調べをしていた人達も、さすがにジェリー様を知っているらしく、何も言わずに入室を許可した。

 私が入っても良いのか躊躇っていると、ジェリー様が促してくれる。

「エル、君も話を聞きたいのだろう? 入っておいで」
「失礼します」

 躊躇いながらも入っていくと、窓際の安楽椅子に座っていたイアーラ様は、私を見て眉を寄せる。

「どうして。あなたがここにいるのよ。もしかして、お礼を言いに来たの?」
「お礼……とは?」
「お礼が必要でしょう。私がセイさんの罪を告発してあげたのよ? 感謝して当然のことだわ」
「そんなわけないでしょう。逆に迷惑なのですが……」
「……どういうこと?」

 イアーラ様の顔から笑みが消えて、訝しげなものになった。

「私は別に自分の出生のことで揉めたくなかったのです。あなたのやったことは、私にとっては迷惑なものでしかありません」
「な、なんですって……?」
「だから、私がここに来たのは、あなたにとって良いものではないと思いますよ」
「じゃあ、何をしに来たのよ!?」

 今日はこんな質問をよくされる日だわ。

 大きく息を吐いてから口を開く。

「お聞きしたいことがあるのですが」
「私に?」

 イアーラ様は眉を寄せて聞き返してきた。

「そうです。どうしてあなたは、今になって子供のいれかえを告発しようとしたのですか?」
「それは、やはり、黙っていてはいけないことだと思って……」
「今になって思ったのですか?」
「何が言いたいのよ!」

 イライラした様子のイアーラ様に答える。

「その話をいつ知ったのか知りたかったんです」
「かなり昔よ!」
「なら、なぜ、話を聞いた時に告発しようとしなかったのですか?」

 私の質問に対して、イアーラ様は何も答えずに睨んできた。

 それと同時に、室内にいた取り調べをしていた男性達は部屋を出ていき、扉を閉めた。
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