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35 元妹の策略

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「何よ、最初からそうしていれば良かったのよ! そうすれば、私だってこんなにイライラしなくてすんだのに!」

 レジーノ様はよほど嬉しいのか体を震わせながら言った。

「色々と事情がありまして。レジーノ様の望みを叶えるには準備が必要だったんです。お許しください。ですので、今日はもう、部屋にお帰りになってもらって結構ですよ」
「で、でも、ジェラルド様にご挨拶しなくっちゃ!」

 何も知らないレジーノ様はソワソワした様子で、応接室の扉のほうを見つめるので、近くにいたメイドにお願いする。

「悪いけれど、レジーノ様をお部屋まで連れていってさしあげる? きっと、セイ様のことが心配で眠れていないと思うの。今もそのせいで興奮状態にあるんだわ」
「な、何を言ってるのよ!? 私はちゃんと寝てるわよ!」
「実の母親が今、どうなっているのかわからないのに、ぐっすり眠れるのですか?」
「そ、それは……っ!」

 ぐっすり眠ったといえば、母のことをまったく心配していないように聞こえるし、眠れていないと答えたら、部屋に戻れと言われるので、なんと答えたら良いのか迷っているみたいだった。

「お疲れでしょうから、お部屋に戻ってお眠りください。レジーノ様の思うようになったのですから、もう満足でしょう?」
「それはまあ、そうなんだけれど、でも、何だか気になるわ」
「これ以上、ワガママを言わないでくださいね? さすがにお父様も閣下も許さないと思いますよ」
「ちょっと待って! 本当に婚約者を変更してくれるのよね?」
「もちろんです。では、失礼します」

 さすがにレジーノ様が疑っているように見えたので、これ以上、長く話してボロを出したくなかった私は、笑顔を作って応接室の中に戻って鍵を閉めた。

 最初、レジーノ様は必死に扉を開けようとしていたけれど、鍵がかけられていることにさすがに気付いたことと鍵を開けて廊下に出て行ったお父様に叱られたことにより、諦めてメイドと共に部屋に帰っていった。
 ため息を吐いて部屋に戻ってきた、お父様が聞いてくる。

「上手くいったか?」
「一応は……。というわけで、申し訳ございませんが、お父様」
「わかってる。サインをすればいいんだろう? 全く面倒だな。一度、お前たちの婚約を解消し、その後、新たに相手を入れ替えて契約。そこでレジーノに婚約者を奪わせて、契約のし直しか」
「最初は一度、ジェリー様にレジーノ様との婚約を受け入れてもらってから、テイン様が私に言ったように夢を見させてあげたと、私の口から言おうかと思っていましたが、それだとレジーノ様とレベルが同じになりますから」

 心配そうに聞いてきたお父様に理由を伝えると、納得してくれたのか、置いてあったペンを手にとって、用意してあった新たな紙にサインをしてくれた。

 それを確認したジェリー様が口を開く。

「さて、お望み通り婚約者の変更をしたけれど、相手が変わっていないと知った時のレジーノ嬢の反応はどうなんだろうな」
「どうせなら、テイン様も一緒にお呼びして話が出来たらと思います」
「わかっている。ただ、テインは一応、伯爵家に勉強のために出しているから、相手の都合を考えると、急に休みを取ることはできない。だから、こちらから先に連絡をいれておきたいから少し時間をくれないか」
「承知しました。夢を見させてあげましょう。私は嘘は言っていませんし、それまでにどうしても気になるなら、レジーノ様も何か言ってくるでしょう」

 頷いてから、ジェリー様の隣に座ると、私がヨウビル公爵家に移ってからの話をすることになった。

 式や入籍はもう少し後にすることになるけれど、最終的に結婚すればヨウビル公爵家に住むことになる。
 閣下はセイ様とイアーラ様の件が落ち着いたら、ジェリー様に仕事の引き継ぎをして、静養地でのんびりすると言っておられるのだそうだけれど、私的には同居は嫌ではないから、改めて話をすることになっている。

 問題なのはイアーラ様だ。
 私がヨウビル公爵邸に移るまでに閣下と離婚してもらわなければならない。
 閣下と住むことに不満はないけれど、イアーラ様と一緒には住みたくないもの。

 父に関しては、私が何もしなくてもソルトがどうにかするだろうから、私が片付けなければいけない問題はあと2つ。
 イアーラ様と閣下の離婚については閣下にお任せするとして、イアーラ様の罪を暴くことと、レジーノ様への だ。



※次話はレジーノ視点になります。
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