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11 母の秘密
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ルドルフ様とはパーティー会場に入ったところで別れ、ジェリー様とは付かず離れずの距離を保ちつつ、情報収集することになった。
大体の目星はつけてきていて、お母様の同級生だった、現在の子爵夫人と伯爵夫人がターゲットだった。
大人しい二人組で、ジェラルド様のお母様とは友人関係だったらしい。
ただ、ソワレ様が私のお母様達と付き合うようになってからは、疎遠になっているようだった。
「ごきげんよう」
パーティー会場の隅で話をしている二人に話しかけると、私の顔を見た瞬間、二人は怯えた顔をした。
私とお二人は初対面だし、怖がられる意味がわからない。
気にしないようにして笑顔で話をする。
「あの、少し、お話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「な、な、何も話すことなんてありませんわ!」
二人は身を寄せ合って首を横に振る。
どうして、こんなに怯えてるのかしら?
「どうかしたのか?」
ジェリー様とルドルフ様が私達の様子に気がついたのか、様子を見に来てくださった。
「あの、実はお二人と話をしようかと思ったのですが……」
「申し訳ございません、話すことはないのです。もし、どうしてもと仰るのでしたら、ヨウビル公爵夫人から余計なことは話すなと言われたとしか……」
伯爵夫人が体を震わせて言った。
「あなた達のことは、イアーラに言うつもりはない。僕は彼女に嫌われているし、僕も彼女を好きじゃないから心配しなくていい。何かあれば、僕が何とかする」
ジェリー様の言葉を聞いた二人の表情が少しだけ緩む。
「私も母のことが嫌いなんです。母が昔、何か悪いことをしたというなら罪を償わせるようにしたいんです。どうか、知っている範囲でかまいませんので、母の過去を教えていただけないでしょうか」
頭を下げると、二人の慌てた声が聞こえる。
「頭を上げてください! 私達も現在のヨウビル公爵夫人達のことが怖くて、ずっと言えなかったのですから……」
そうして、二人と私は、パーティー会場の外にある休憩室の一室に移動して話をすることになった。
話の内容は我が母ながら、酷いものだった。
もしかしたら、そうではないかと思ってはいたけれど、ソワレ様をいじめるように仕向けたのは、母やイアーラ様だった。
二人はソワレ様に嫉妬して、ソワレ様に関する嫌な噂を流した。
そして、それを信じた人達がいじめを開始した。
ヨウビル公爵閣下に愛されているということでの嫉妬も、もちろんあったのだと思うけれど、ソワレ様がいじめられるようになった理由はそれだけではなかったのだ。
母達はソワレ様の心を追い詰めた。
当時、友人だった二人はソワレ様を慰めようとしたけれど、それを母達が許さなかった。
ソワレ様と友達でいるというのなら、いじめのターゲットを彼女達にすると脅したのだ。
当時の二人は子爵令嬢で、母達は伯爵令嬢だったから上下関係的なものでも逆らえなかったし、二人もいじめられるのが怖かった。
普通の人はそんなものだ。
ただ、いじめられているソワレ様を見て、やはり、これではいけないと彼女達が思って動き出すと、今度は母達があからさまに、ソワレ様の味方につくようになったのだそうだ。
ソワレ様は母達に感謝して、母達と過ごすようになり、彼女達とは疎遠になった。
「ソワレ様が亡くなったと聞いた時、もしかしたらと思ったのですが……」
子爵夫人はハンカチでこぼれてきた涙を拭いてから続ける。
「ソワレ様はイアーラ様達に殺されたのではないかと思ってしまったのです。セイ様達はそんな方でしたから……」
セイというのは母の名前だ。
母達は最低だった。
第三者にいじめをさせて、その原因を作ったくせに、ソワレ様に近付き、彼女を守る行動をとった。
わかっていたことだったのに腹がたった。
きっと、その時の母は、ソワレ様を見て、隠れて笑っていたんでしょうね。
そんな人の血が私の中に流れているのかと思うと、本当に嫌な気分になった。
「あの、ミリエル様……」
「は、はい」
「余計なお世話かもしれませんが、お伝えしたいことがあります」
「……何でしょうか?」
「ミリエル様はどちらでお生まれになりましたか?」
予想もしていなかった質問に驚きつつも素直に答える。
「母の体調が良くなかったので、屋敷ではなく、病院で生まれたと聞いています」
「……もし、セイ様を自分の母だと思いたくないのであれば、その日のことをお調べになったほうが良いかと思われます」
意味深な言葉に、私はなんと言葉を返せば良いのかわからなかった。
大体の目星はつけてきていて、お母様の同級生だった、現在の子爵夫人と伯爵夫人がターゲットだった。
大人しい二人組で、ジェラルド様のお母様とは友人関係だったらしい。
ただ、ソワレ様が私のお母様達と付き合うようになってからは、疎遠になっているようだった。
「ごきげんよう」
パーティー会場の隅で話をしている二人に話しかけると、私の顔を見た瞬間、二人は怯えた顔をした。
私とお二人は初対面だし、怖がられる意味がわからない。
気にしないようにして笑顔で話をする。
「あの、少し、お話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「な、な、何も話すことなんてありませんわ!」
二人は身を寄せ合って首を横に振る。
どうして、こんなに怯えてるのかしら?
「どうかしたのか?」
ジェリー様とルドルフ様が私達の様子に気がついたのか、様子を見に来てくださった。
「あの、実はお二人と話をしようかと思ったのですが……」
「申し訳ございません、話すことはないのです。もし、どうしてもと仰るのでしたら、ヨウビル公爵夫人から余計なことは話すなと言われたとしか……」
伯爵夫人が体を震わせて言った。
「あなた達のことは、イアーラに言うつもりはない。僕は彼女に嫌われているし、僕も彼女を好きじゃないから心配しなくていい。何かあれば、僕が何とかする」
ジェリー様の言葉を聞いた二人の表情が少しだけ緩む。
「私も母のことが嫌いなんです。母が昔、何か悪いことをしたというなら罪を償わせるようにしたいんです。どうか、知っている範囲でかまいませんので、母の過去を教えていただけないでしょうか」
頭を下げると、二人の慌てた声が聞こえる。
「頭を上げてください! 私達も現在のヨウビル公爵夫人達のことが怖くて、ずっと言えなかったのですから……」
そうして、二人と私は、パーティー会場の外にある休憩室の一室に移動して話をすることになった。
話の内容は我が母ながら、酷いものだった。
もしかしたら、そうではないかと思ってはいたけれど、ソワレ様をいじめるように仕向けたのは、母やイアーラ様だった。
二人はソワレ様に嫉妬して、ソワレ様に関する嫌な噂を流した。
そして、それを信じた人達がいじめを開始した。
ヨウビル公爵閣下に愛されているということでの嫉妬も、もちろんあったのだと思うけれど、ソワレ様がいじめられるようになった理由はそれだけではなかったのだ。
母達はソワレ様の心を追い詰めた。
当時、友人だった二人はソワレ様を慰めようとしたけれど、それを母達が許さなかった。
ソワレ様と友達でいるというのなら、いじめのターゲットを彼女達にすると脅したのだ。
当時の二人は子爵令嬢で、母達は伯爵令嬢だったから上下関係的なものでも逆らえなかったし、二人もいじめられるのが怖かった。
普通の人はそんなものだ。
ただ、いじめられているソワレ様を見て、やはり、これではいけないと彼女達が思って動き出すと、今度は母達があからさまに、ソワレ様の味方につくようになったのだそうだ。
ソワレ様は母達に感謝して、母達と過ごすようになり、彼女達とは疎遠になった。
「ソワレ様が亡くなったと聞いた時、もしかしたらと思ったのですが……」
子爵夫人はハンカチでこぼれてきた涙を拭いてから続ける。
「ソワレ様はイアーラ様達に殺されたのではないかと思ってしまったのです。セイ様達はそんな方でしたから……」
セイというのは母の名前だ。
母達は最低だった。
第三者にいじめをさせて、その原因を作ったくせに、ソワレ様に近付き、彼女を守る行動をとった。
わかっていたことだったのに腹がたった。
きっと、その時の母は、ソワレ様を見て、隠れて笑っていたんでしょうね。
そんな人の血が私の中に流れているのかと思うと、本当に嫌な気分になった。
「あの、ミリエル様……」
「は、はい」
「余計なお世話かもしれませんが、お伝えしたいことがあります」
「……何でしょうか?」
「ミリエル様はどちらでお生まれになりましたか?」
予想もしていなかった質問に驚きつつも素直に答える。
「母の体調が良くなかったので、屋敷ではなく、病院で生まれたと聞いています」
「……もし、セイ様を自分の母だと思いたくないのであれば、その日のことをお調べになったほうが良いかと思われます」
意味深な言葉に、私はなんと言葉を返せば良いのかわからなかった。
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