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2 妹の考えが気に入らない姉
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「ねえ、本当にそんな縁談を受けるつもりなの?」
弟のソルトの仕事の手伝いをしている時に、お姉様は執務室にやって来て、私に聞いてきた。
なぜ、私がソルトの仕事を手伝っているのかというと、お姉様とテイン様に裏切られた、あの数日後に両親の乗った馬車が事故にあったからだ。
命に別状はなかったものの、両親は現在、病院に入院している。
そのため、お父様の仕事を代わりにすることになったソルトは学園を休み、元々、お父様の助手として働くつもりだった私が、ソルトの助手になっている。
ソルトは両親の事故を聞いた時「ミリエル姉さんに酷いことをするから罰が当たったんだ」と呟くくらいに、テイン様との件を怒ってくれていた。
でも、私もそうだと思ってしまった。
なぜなら、不自然な事故だったから。
お母様は、お姉様を喜ばせるために私には黙っていたのだから、悪趣味としか言いようがないし、お父様は無関心すぎる。
この傷が癒えるまでは、絶対に許せないし許さない。
お見舞いはお姉様に任せて、私とソルトは行かないつもりだ。
「ねえ、聞いてるの?」
もう一度、お姉様に話しかけられて返事をする。
「聞いています。縁談を受けると返事をすでにしておりますが?」
「ちょっと待って。年が離れすぎてるんじゃない?」
「この年で婚約者がいないのですから、そういう方にしか出会えなくてもおかしくないと思っております」
ソルトはこの家を継いだら、両親を追い出すから一緒に住もうと言ってくれている。
でも、ソルトにだってお嫁さんが必要だし、相手の女性が私を住まわせるだなんて嫌がる可能性もあるから、あてにしてはいけない。
病気や障害があるならまだしも、健康なのであれば、弟に頼って生きていきたくない。
貴族として暮らしたことしかない私には、平民の世界は厳しい。
だから、結婚する相手を選り好みしてはいけないし、お姉様にこれ以上、奪われるわけにはいかない。
とにかく、お姉様の影に怯えずに、平穏に暮らしたい。
私の婚約者になる人は、シーフ様という人で、私の祖父よりも年齢が上の方だ。
とても優しそうなお爺さんで、見た目は好印象だった。
シーフ様は元伯爵で、今は爵位はないけれど、かなりの資産家なので、私が死ぬまで遊んで暮らせる、お金は十分にあるんだそう。
私がテイン様にフラレた話は、お姉様が社交界に言いふらしてしまったから、多くの人に知れ渡っていて、その話を聞いたシーフ様が私を気の毒に思ってくれて、声を掛けてくださったらしい。
なぜ、貴族ではないのに社交場の話を知っているのかと聞くと「知り合いがいるからだよ」と笑って言っただけで、詳しい話はしてくださらなかった。
そして、妻になるといっても、ただ、シーフ様の話し相手になるだげで良いと言ってくれた。
少し前に奥様が亡くなられたあとは寂しくて、生きていくのも辛かったらしい。
だから、邸内では孫のように扱ってくれると言ってくれた。
シーフ様が亡くなったあとは、再婚しても良いと言ってくださっている。
財産も好きなように使ったら良いとも言ってくださっているので、そのまま、一人でひっそりと暮らしていけたら良いと思う。
ある意味、幸せな結婚だ。
シーフ様は介護が必要だけれど、それは使用人がやってくれる。
私に出来ることは、シーフ様に少しでも楽しい時間を過ごしてもらうだけだ。
「納得いかないわ。お祖父様より年上なのに、どうして、そんな人のところにお嫁にいこうとするのよ! 私が知らない何かがあるのね……!」
しばらく相手にしないでいると、お姉様はそう叫んで、執務室から出ていった。
「……レジーノは何をするつもりなんでしょうか?」
「ソルト、あの人は一応、あなたのお姉様なのよ?」
「あんな人、姉だと思ったことなんて一度もありません。僕の家族は僕を生んでくれた母とミリエル姉さんだけです」
お父様を若くしただけと思えるくらいにそっくりなソルトは、眉を寄せて答えた。
「ありがとう。嬉しいわ」
「でも、本当にいいんですか? 資産家にはなれますけど、貴族ではなくなりますよ」
「いいのよ。私はお姉様に邪魔されずに幸せに暮らせたら良いのだから」
この時の私は、さすがのお姉様もシーフ様を私から奪おうとはしないと思っていた。
けれど、お姉様の執念がすごかったことを、数日後に思い知らされることになる。
弟のソルトの仕事の手伝いをしている時に、お姉様は執務室にやって来て、私に聞いてきた。
なぜ、私がソルトの仕事を手伝っているのかというと、お姉様とテイン様に裏切られた、あの数日後に両親の乗った馬車が事故にあったからだ。
命に別状はなかったものの、両親は現在、病院に入院している。
そのため、お父様の仕事を代わりにすることになったソルトは学園を休み、元々、お父様の助手として働くつもりだった私が、ソルトの助手になっている。
ソルトは両親の事故を聞いた時「ミリエル姉さんに酷いことをするから罰が当たったんだ」と呟くくらいに、テイン様との件を怒ってくれていた。
でも、私もそうだと思ってしまった。
なぜなら、不自然な事故だったから。
お母様は、お姉様を喜ばせるために私には黙っていたのだから、悪趣味としか言いようがないし、お父様は無関心すぎる。
この傷が癒えるまでは、絶対に許せないし許さない。
お見舞いはお姉様に任せて、私とソルトは行かないつもりだ。
「ねえ、聞いてるの?」
もう一度、お姉様に話しかけられて返事をする。
「聞いています。縁談を受けると返事をすでにしておりますが?」
「ちょっと待って。年が離れすぎてるんじゃない?」
「この年で婚約者がいないのですから、そういう方にしか出会えなくてもおかしくないと思っております」
ソルトはこの家を継いだら、両親を追い出すから一緒に住もうと言ってくれている。
でも、ソルトにだってお嫁さんが必要だし、相手の女性が私を住まわせるだなんて嫌がる可能性もあるから、あてにしてはいけない。
病気や障害があるならまだしも、健康なのであれば、弟に頼って生きていきたくない。
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だから、結婚する相手を選り好みしてはいけないし、お姉様にこれ以上、奪われるわけにはいかない。
とにかく、お姉様の影に怯えずに、平穏に暮らしたい。
私の婚約者になる人は、シーフ様という人で、私の祖父よりも年齢が上の方だ。
とても優しそうなお爺さんで、見た目は好印象だった。
シーフ様は元伯爵で、今は爵位はないけれど、かなりの資産家なので、私が死ぬまで遊んで暮らせる、お金は十分にあるんだそう。
私がテイン様にフラレた話は、お姉様が社交界に言いふらしてしまったから、多くの人に知れ渡っていて、その話を聞いたシーフ様が私を気の毒に思ってくれて、声を掛けてくださったらしい。
なぜ、貴族ではないのに社交場の話を知っているのかと聞くと「知り合いがいるからだよ」と笑って言っただけで、詳しい話はしてくださらなかった。
そして、妻になるといっても、ただ、シーフ様の話し相手になるだげで良いと言ってくれた。
少し前に奥様が亡くなられたあとは寂しくて、生きていくのも辛かったらしい。
だから、邸内では孫のように扱ってくれると言ってくれた。
シーフ様が亡くなったあとは、再婚しても良いと言ってくださっている。
財産も好きなように使ったら良いとも言ってくださっているので、そのまま、一人でひっそりと暮らしていけたら良いと思う。
ある意味、幸せな結婚だ。
シーフ様は介護が必要だけれど、それは使用人がやってくれる。
私に出来ることは、シーフ様に少しでも楽しい時間を過ごしてもらうだけだ。
「納得いかないわ。お祖父様より年上なのに、どうして、そんな人のところにお嫁にいこうとするのよ! 私が知らない何かがあるのね……!」
しばらく相手にしないでいると、お姉様はそう叫んで、執務室から出ていった。
「……レジーノは何をするつもりなんでしょうか?」
「ソルト、あの人は一応、あなたのお姉様なのよ?」
「あんな人、姉だと思ったことなんて一度もありません。僕の家族は僕を生んでくれた母とミリエル姉さんだけです」
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「ありがとう。嬉しいわ」
「でも、本当にいいんですか? 資産家にはなれますけど、貴族ではなくなりますよ」
「いいのよ。私はお姉様に邪魔されずに幸せに暮らせたら良いのだから」
この時の私は、さすがのお姉様もシーフ様を私から奪おうとはしないと思っていた。
けれど、お姉様の執念がすごかったことを、数日後に思い知らされることになる。
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