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次の日、ビアラがまたロードウェル家に行くというので、不安になった私は彼女に付いていきたいと申し出た。
「仕事の邪魔になるかもしれないけど、私も一緒に行くわ!」
「駄目よ、エアリス。あなたが来たらトゥッチさんを喜ばせるだけじゃない」
「そうかもしれないけど、また、あの家に行って邪気にやられたらどうするの!」
「それは私もわかってるわ。落ち着いたら自分でも補助魔法を覚えるつもり。だから、今日は別邸の方に行こうかと思って」
「なら、私も行ってもいいでしょ?」
「エドワード様がいいって言うならね。ただ、あなたが来ていると知ったら、トゥッチさんはお仕掛けてきそうだけど? それと、別邸にはイザメル様がいるけど大丈夫なの?」
心配げな顔をするビアラに、笑顔で答える。
「ビアラもお祖父様達もついてるから大丈夫よ。立ち向かえるわ! それにイザメル様には言いたい事や聞きたい事もあるし」
「何を聞くつもりなの?」
「魔法使いを嫌いなのは個人の勝手だとしても、どうして私を執拗に狙うのかわからなくて…」
「あなたのお祖父様達が有名だったからかもしれないわね」
「やっぱり、そうなのかしら?」
「今は、それくらいしか考えられないわ。もし、エドワード様が許可されなかったら、私が代わりに聞いてきてあげる」
ビアラに言われて、彼女に絶対に一人で先に行かないで、と念押ししてから、エドにお願いをしにいったら、やはり駄目だと言われた。
「自分から危ない橋を渡りに行ってどうするんだよ」
「でも、このままじゃ、ビアラが危ない気がする」
「…何か気になる事でもあるのか?」
私が不安そうにしているのが気になるのか、エドが聞いてきたので素直に答える。
「だって、オルザベートはエドを殺そうとしたのよ? ビアラの事をそう思ってもおかしくない。あの子、学生時代の時から、何かとビアラの悪口を言ってたから」
「…君をとられると思ったからか」
「そうなのかもしれない。オルザベートがビアラの噂を教えてくれたんだけど、全て嘘だったのよね。今、思えば、それだけ、ビアラを私から引き離したかったんだわ」
「その時の君は彼女に何も言わなかったの?」
「オルザベートに? どうしてそんな嘘をつくのかって?」
聞き返すと、エドが無言で頷く。
「オルザベートが私に話すビアラの悪口は本人に聞かなくてもわかるくらい、ひどい嘘だったの。だから、信じる気にもならなくて、彼女に言わせるだけ言わせてたの」
「僕の事は信じなかったのに?」
「だって、その頃、あなたは私の近くにいなかったんでしょう? あなたがどんな生活を送ってたかなんて、その時の私にはわからなかったんだと思う」
別に責めるつもりはないけれど、言い返してみたら、エドは少しだけ拗ねる様な顔をした。
信じてもらえなかった事が気に入らない気持ちはわかるけれど、あの時の私は今よりも子供だったんだから、そこは許してほしい。
「エドはもう公爵令息じゃなくて、公爵なんでしょう? そんな顔しないで。もし、次にそんな事を言われたら、ちゃんと確認するから」
「……わかったよ。ただ、君をロードウェル家に行かせる訳にはいかないし、ミゼライト嬢に関しても一人で危険な場所に行かせる訳にもいかない」
「たぶん、仲間の人と行くんじゃないかと思うけど…」
「ディランから連絡が来たんだ。彼はミゼライト嬢を巻き込んだ事をすごく怒ってる」
エドが遠い目をして言うから、思わず笑ってしまう。
「そりゃあそうでしょうね。という事で、私も行ってもいい!?」
「という事でって、どういう事だよ」
「私とビアラの立場は似たようなものだと思うの。何よりも原因は私だし」
「……行くのは行ってもいいけど、条件がある」
「何?」
聞き返した私に、エドが嫌そうな顔をしながらも提案してくれた内容に、私は思わず聞き返す。
「上手くいくかしら?」
「上手くいかせる。これ以上、長引かせたくないから、こうなったら一気に攻める。ある人の行方がわかって話を聞けたから、だいぶ有利にはなってると思うよ」
「ある人…?」
「だから大丈夫だよ。エアリスは心配しなくていい」
少しの不安を感じながらも、エドの言葉を信じる事にした。
「仕事の邪魔になるかもしれないけど、私も一緒に行くわ!」
「駄目よ、エアリス。あなたが来たらトゥッチさんを喜ばせるだけじゃない」
「そうかもしれないけど、また、あの家に行って邪気にやられたらどうするの!」
「それは私もわかってるわ。落ち着いたら自分でも補助魔法を覚えるつもり。だから、今日は別邸の方に行こうかと思って」
「なら、私も行ってもいいでしょ?」
「エドワード様がいいって言うならね。ただ、あなたが来ていると知ったら、トゥッチさんはお仕掛けてきそうだけど? それと、別邸にはイザメル様がいるけど大丈夫なの?」
心配げな顔をするビアラに、笑顔で答える。
「ビアラもお祖父様達もついてるから大丈夫よ。立ち向かえるわ! それにイザメル様には言いたい事や聞きたい事もあるし」
「何を聞くつもりなの?」
「魔法使いを嫌いなのは個人の勝手だとしても、どうして私を執拗に狙うのかわからなくて…」
「あなたのお祖父様達が有名だったからかもしれないわね」
「やっぱり、そうなのかしら?」
「今は、それくらいしか考えられないわ。もし、エドワード様が許可されなかったら、私が代わりに聞いてきてあげる」
ビアラに言われて、彼女に絶対に一人で先に行かないで、と念押ししてから、エドにお願いをしにいったら、やはり駄目だと言われた。
「自分から危ない橋を渡りに行ってどうするんだよ」
「でも、このままじゃ、ビアラが危ない気がする」
「…何か気になる事でもあるのか?」
私が不安そうにしているのが気になるのか、エドが聞いてきたので素直に答える。
「だって、オルザベートはエドを殺そうとしたのよ? ビアラの事をそう思ってもおかしくない。あの子、学生時代の時から、何かとビアラの悪口を言ってたから」
「…君をとられると思ったからか」
「そうなのかもしれない。オルザベートがビアラの噂を教えてくれたんだけど、全て嘘だったのよね。今、思えば、それだけ、ビアラを私から引き離したかったんだわ」
「その時の君は彼女に何も言わなかったの?」
「オルザベートに? どうしてそんな嘘をつくのかって?」
聞き返すと、エドが無言で頷く。
「オルザベートが私に話すビアラの悪口は本人に聞かなくてもわかるくらい、ひどい嘘だったの。だから、信じる気にもならなくて、彼女に言わせるだけ言わせてたの」
「僕の事は信じなかったのに?」
「だって、その頃、あなたは私の近くにいなかったんでしょう? あなたがどんな生活を送ってたかなんて、その時の私にはわからなかったんだと思う」
別に責めるつもりはないけれど、言い返してみたら、エドは少しだけ拗ねる様な顔をした。
信じてもらえなかった事が気に入らない気持ちはわかるけれど、あの時の私は今よりも子供だったんだから、そこは許してほしい。
「エドはもう公爵令息じゃなくて、公爵なんでしょう? そんな顔しないで。もし、次にそんな事を言われたら、ちゃんと確認するから」
「……わかったよ。ただ、君をロードウェル家に行かせる訳にはいかないし、ミゼライト嬢に関しても一人で危険な場所に行かせる訳にもいかない」
「たぶん、仲間の人と行くんじゃないかと思うけど…」
「ディランから連絡が来たんだ。彼はミゼライト嬢を巻き込んだ事をすごく怒ってる」
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「そりゃあそうでしょうね。という事で、私も行ってもいい!?」
「という事でって、どういう事だよ」
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「……行くのは行ってもいいけど、条件がある」
「何?」
聞き返した私に、エドが嫌そうな顔をしながらも提案してくれた内容に、私は思わず聞き返す。
「上手くいくかしら?」
「上手くいかせる。これ以上、長引かせたくないから、こうなったら一気に攻める。ある人の行方がわかって話を聞けたから、だいぶ有利にはなってると思うよ」
「ある人…?」
「だから大丈夫だよ。エアリスは心配しなくていい」
少しの不安を感じながらも、エドの言葉を信じる事にした。
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