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8−5  ロードウェル伯爵家 6−2(オルザベート視点)

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「で? 何から答えればいいの?」
「さっきの質問を順番に一つずつ」

 オルザベートはビアラの向かい側に座ると、大きく息を吐いてから答える。

「エアリスがカイジス公爵の話をしなくなって、変に思わなかった、だったっけ?」
「ええ」
「それは思ってたわ」
「エアリスには、その事で何か聞いた?」
「……いいえ」
「どうして聞かなかったの?」

(一体、彼女は何を知りたいのよ。何か探りをいれられているようで気に食わないわ!)

「だって、エアリスがいるのに、何人もの女性を権力を使って犯したりしたんでしょう? しかも、その内の1人の女性がとても良かったからって、囲ってるって聞いたわ。近い内に、エアリスに別れを告げるつもりだと聞いたの。そんな話を聞いたら、エアリスに伝えないとって思うじゃない!」
「その噂の信憑性は確かめたわけ? それにどこかの馬鹿な貴族じゃあるまいし、公爵令息がそんな馬鹿な事するとは思えないんだけど。それを聞いたあなたは疑わなかったの?」
「…私、見たのよ」
「何を?」
「エドワード様が他の人と外で、その…している所を!」

(なんて、本当は全部嘘なんだけどね)

 オルザベートは必死に悲しげな表情を作りつつも、心の中ではそんな事を考えていた。
 ビアラはそんなオルザベートを冷めた目で見ながら尋ねる。

「それを全部、エアリスに伝えたってわけ?」
「そうよ。だって、親友の恋人が浮気しているのを見たのよ!? 教えてあげないといけないじゃない!」
「っていうか、あなた、エドワード様がそんな事を他の女とシてるのを黙って見守ってたわけ?」
「そんなはしたない事するわけないじゃない! 驚いて、すぐに立ち去ったわ!」
「よくわからないけど、一瞬だけ見て逃げたってわけね…。あなたが、それをどこで見たのかっていう事も気になるけど、まあいいわ」

(この女、本当にしつこい上に、私の事を疑っている事を隠しもしないし、本当にムカつく!)

 オルザベートが睨みつけると、ビアラは逆に笑顔になる。

「で、話は戻るけど、あなたが言っている噂の事については、エアリスからは彼女の記憶がなくなる前に聞いたわ。
あなたが今、教えてくれた以外にも、エアリスがキス以上は許さないから重い女だとか、言ってたんですってね?
エアリスはその事にもすごくショックを受けてた。許していれば、エドワード様は自分を捨てなかったかもしれないって。 ただ、彼女から聞いてたエドワード様の人物像とどうしても私の中では一致しなくて、他の人に聞いて調べてみたんだけど、その当時、そんな噂、誰一人知らなかったんだけど、あなたはどこから仕入れたの?」
「そ…それは」

 答えを用意していなかったオルザベートは口ごもる。

(なんで、そんな過去の話を今更ほじくってくるのよ!?)

「そんなの今更覚えていないわ! エドワード様と同じ学園に通っている人から聞いたのかもしれない! 大体、どうして、あなたは私にその時に聞いてこないのよ!?」
「あなた、私が聞こうとしても、いつもエアリスを連れて逃げてたわよね? 後ろめたいことでもあった?」
「う、後ろめたい事なんて別に…」

 オルザベートは膝の上で指を組み合わせて考える。

(この女は私を疑っている。真面目に話に付き合っている暇はないわ。もう切り上げよう)

「私、今から用事があるの。聞きたい事って言っても任意でしょ? 次の機会にしてくれない?」
「…別にかまわないけど」

 ビアラがすんなりと引いた事に、オルザベートは驚きつつも、ホッと胸をなでおろす。
 けれど、ビアラは攻撃の手を緩めたわけではなかった。

「次に会うまでに答えを用意してもらえる? あなたがエアリスの大事な祖父母の形見に何をしようとしていたのか」
「…何もしていないわ!」
「エアリスのあの机の引き出しには、祖父母の形見しかいれてなかったって言ってる。そこをあなたが触ってたんだから、疑って当然でしょ? 私は一時期だけ、あなたが偽物とすり替えたと思ってる」

 ビアラは立ち上がり、さっさと部屋から出ると、オルザベートの返事を待たずに去っていく。

「……」

(エアリスに会いたい。だけど、エアリスに会いに行けば、あの女がいる。あの女は絶対に、私にさっきの事を聞いてくるに決まってる! それに、噂を流したのも私だって疑っている! あの女が邪魔だわ…! どうにかしないと…! あの人に、協力してもらわなくちゃ…) 
 

 オルザベートは大きく息を吐いてから、意を決して立ち上がった。
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