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エドがビアラに何を頼むつもりなのかは、彼女をここに呼んでから教えるとしか言わないので、彼女がその話を聞いて嫌だと思うなら断っても良いという条件で、ビアラを公爵家に呼び寄せる事になった。
彼女は公爵家から職場も家もそう遠くなかったので、職場にアズが手紙を持っていき、その場で了承してくれて、その日の夜に、早速尋ねてきてくれた。
「久しぶりね、エアリス!」
「ビアラ、久しぶり! いきなりごめんね!」
ビアラをエントランスホールで出迎えた私は、何ヶ月ぶりかの友人との再会に、久しぶりに胸が弾んだ。
ビアラは本人は自覚していないけど、学生時代は才色兼備というやつで、男子生徒から密かに人気だった。
焦げ茶色の少しくせのある髪を、ポニーテールにしていて、体型は女性の中では身長は高めで細身。
そんな彼女が可愛らしい顔を歪めて聞いてくる。
「私は大丈夫よ。それより前に手紙をもらった時にも聞いたけど、あなた、ロードウェルと別れたの?」
「う…、そうなのよ。色々とあって、結婚式にまで来てもらったのに、本当にごめんね?」
「謝る事じゃないわよ。それに、私も謝らないと」
「謝る? …何を?」
「あなたがカイジス公爵にフラれたって話をしてくれてから、一切、話をしようとしなくなった事、おかしいとは思っていたのに、触れられたくない話なんだろうと思って、ノノレイとわざと話題に出さないようにしてたの」
「私が…、エドにフラれた? いつ?」
キョトンとしている私に、ビアラは悲しそうな顔になって答える。
「…ディランから聞いたわ。彼もカイジス公爵閣下から聞いたといってたけど、あなた、自分自身に忘却の魔法をかけたのね? あと、それを言われて思い出したんだけど、ちょうど、その頃、トゥッチさんの事でも気になってた事があるの。まあ、それを言い出したら、ロードウェルの事もだけどね」
そこまで言われて、また思った事がある。
エドからの手紙は寮に送られていた。
だから、処分したのも寮でだったはず。
という事は、私の様子がおかしい事に、ルームメイトであるビアラが気付いていないわけがなかった。
私って、本当に頭が悪すぎる。
「ビアラ…。私、何やってたのかしら」
「あなたは色々とありすぎて頭が混乱してただけよ。冷静になっていたら、すぐに思いついたはずよ? ちゃんと私が覚えている、もしくは知っているだけの事になるけど、少しでもあなたの記憶を埋めれるように話すわ。あと、あなたの忘却魔法、私が解いてもいいけど」
「忘却魔法の解除なんだけど、エドのお母様に試してもらったけど無理だったの。どうやら、自分自身で心を守ろうとしてるのか、解除を拒んで弾いてるみたいなの」
「あなたのお祖父様とお祖母様は有名だものね。その血を継いだエアリスの魔法なら、普通の魔法使いでは無理なのかもしれないわ」
エントランスホールで立ち話を続けていると、エドが奥から、やって来て言う。
「ミゼライト嬢、わざわざ足を運んでもらってすまない」
「いえ、とんでもございません。閣下にお会いできて光栄です」
ビアラがエドにカーテシーをしたあと、早速、彼に尋ねる。
「私は一体、何をすればよろしいのでしょうか?」
「君に権限を与えるから、やってほしい事があるんだ」
「…?」
エドのもったいぶった言い方に、ビアラが訝しげにすると、エドがにこりと笑って言う。
「立ち話もなんだから、まずは、ミゼライト嬢のために用意した部屋に案内させよう。申し訳ないが、これからしばらく、この家から職場に通ってもらうから」
「それは事前に聞いていましたし、かまいませんが」
「え? ビアラ、今日からここに住むの!?」
「ずっとじゃないけどね」
ビアラが笑顔で頷いてくれたので、こんな状況な上に、彼女には申し訳ないんだけど無邪気に喜んでしまう。
「本当に!?」
「うん。基本は仕事は日勤なの。だから、休みの日の前日は夜通し話せるわよ」
「久しぶりよね! そういえば、ロンバートとの結婚式、あなたとノノレイとディラン様、すごく複雑そうな顔をしてたけど、それも何かあったりする?」
「それもある。本当にその点に関しては懺悔したい」
彼女を案内するメイドの後ろに付いて歩きながら話をし、荷物を部屋に運び入れた後は、エドが待っている応接室に向かった。
エドがビアラに何を頼むのか気になったので、一緒に話を聞く事にした。
「君には、ロードウェル伯爵に聞き足りなかった事があるという事にして、ロードウェル家に入ってもらい、トゥッチ嬢と接触してほしい」
ビアラにはオルザベートからの手紙を渡して、読んでもらったりして、彼女がおかしい事は理解してくれている。
普通の人なら気持ち悪がって嫌がるんだろうけど…。
「かしこまりました」
ビアラは躊躇うことなく、笑顔で頷いた。
「ほ、本当にいいの?」
「うん。ちょうどトゥッチさんには学生時代の時の事で聞きたい事もあったしね。何より、私がエアリスと会ったなんて聞いたら、あの子、どんな顔するかしら」
ふっふっふっ、と、ビアラが挑戦的な笑みを見せて言った。
忘れてた。
この子、気が強いんだった。
彼女は公爵家から職場も家もそう遠くなかったので、職場にアズが手紙を持っていき、その場で了承してくれて、その日の夜に、早速尋ねてきてくれた。
「久しぶりね、エアリス!」
「ビアラ、久しぶり! いきなりごめんね!」
ビアラをエントランスホールで出迎えた私は、何ヶ月ぶりかの友人との再会に、久しぶりに胸が弾んだ。
ビアラは本人は自覚していないけど、学生時代は才色兼備というやつで、男子生徒から密かに人気だった。
焦げ茶色の少しくせのある髪を、ポニーテールにしていて、体型は女性の中では身長は高めで細身。
そんな彼女が可愛らしい顔を歪めて聞いてくる。
「私は大丈夫よ。それより前に手紙をもらった時にも聞いたけど、あなた、ロードウェルと別れたの?」
「う…、そうなのよ。色々とあって、結婚式にまで来てもらったのに、本当にごめんね?」
「謝る事じゃないわよ。それに、私も謝らないと」
「謝る? …何を?」
「あなたがカイジス公爵にフラれたって話をしてくれてから、一切、話をしようとしなくなった事、おかしいとは思っていたのに、触れられたくない話なんだろうと思って、ノノレイとわざと話題に出さないようにしてたの」
「私が…、エドにフラれた? いつ?」
キョトンとしている私に、ビアラは悲しそうな顔になって答える。
「…ディランから聞いたわ。彼もカイジス公爵閣下から聞いたといってたけど、あなた、自分自身に忘却の魔法をかけたのね? あと、それを言われて思い出したんだけど、ちょうど、その頃、トゥッチさんの事でも気になってた事があるの。まあ、それを言い出したら、ロードウェルの事もだけどね」
そこまで言われて、また思った事がある。
エドからの手紙は寮に送られていた。
だから、処分したのも寮でだったはず。
という事は、私の様子がおかしい事に、ルームメイトであるビアラが気付いていないわけがなかった。
私って、本当に頭が悪すぎる。
「ビアラ…。私、何やってたのかしら」
「あなたは色々とありすぎて頭が混乱してただけよ。冷静になっていたら、すぐに思いついたはずよ? ちゃんと私が覚えている、もしくは知っているだけの事になるけど、少しでもあなたの記憶を埋めれるように話すわ。あと、あなたの忘却魔法、私が解いてもいいけど」
「忘却魔法の解除なんだけど、エドのお母様に試してもらったけど無理だったの。どうやら、自分自身で心を守ろうとしてるのか、解除を拒んで弾いてるみたいなの」
「あなたのお祖父様とお祖母様は有名だものね。その血を継いだエアリスの魔法なら、普通の魔法使いでは無理なのかもしれないわ」
エントランスホールで立ち話を続けていると、エドが奥から、やって来て言う。
「ミゼライト嬢、わざわざ足を運んでもらってすまない」
「いえ、とんでもございません。閣下にお会いできて光栄です」
ビアラがエドにカーテシーをしたあと、早速、彼に尋ねる。
「私は一体、何をすればよろしいのでしょうか?」
「君に権限を与えるから、やってほしい事があるんだ」
「…?」
エドのもったいぶった言い方に、ビアラが訝しげにすると、エドがにこりと笑って言う。
「立ち話もなんだから、まずは、ミゼライト嬢のために用意した部屋に案内させよう。申し訳ないが、これからしばらく、この家から職場に通ってもらうから」
「それは事前に聞いていましたし、かまいませんが」
「え? ビアラ、今日からここに住むの!?」
「ずっとじゃないけどね」
ビアラが笑顔で頷いてくれたので、こんな状況な上に、彼女には申し訳ないんだけど無邪気に喜んでしまう。
「本当に!?」
「うん。基本は仕事は日勤なの。だから、休みの日の前日は夜通し話せるわよ」
「久しぶりよね! そういえば、ロンバートとの結婚式、あなたとノノレイとディラン様、すごく複雑そうな顔をしてたけど、それも何かあったりする?」
「それもある。本当にその点に関しては懺悔したい」
彼女を案内するメイドの後ろに付いて歩きながら話をし、荷物を部屋に運び入れた後は、エドが待っている応接室に向かった。
エドがビアラに何を頼むのか気になったので、一緒に話を聞く事にした。
「君には、ロードウェル伯爵に聞き足りなかった事があるという事にして、ロードウェル家に入ってもらい、トゥッチ嬢と接触してほしい」
ビアラにはオルザベートからの手紙を渡して、読んでもらったりして、彼女がおかしい事は理解してくれている。
普通の人なら気持ち悪がって嫌がるんだろうけど…。
「かしこまりました」
ビアラは躊躇うことなく、笑顔で頷いた。
「ほ、本当にいいの?」
「うん。ちょうどトゥッチさんには学生時代の時の事で聞きたい事もあったしね。何より、私がエアリスと会ったなんて聞いたら、あの子、どんな顔するかしら」
ふっふっふっ、と、ビアラが挑戦的な笑みを見せて言った。
忘れてた。
この子、気が強いんだった。
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