上 下
28 / 45

7−5

しおりを挟む
 次の日、エドも少しずつ動けるようになってきたのと、私はぐっすり眠って元気になり、そして、魔力も回復したっぽいので、まずはミラーザ様に魔法についての話をする事にした。

 もちろん、昨日もエドの様子を見るために部屋にいらしていたので、今日、またこちらへいらっしゃった時にお時間が欲しいと伝えてある。
 昨日のうちに、エドの書斎にあった本に魔法について書いてあるものがあったので、それを流し読みにはなるけれど読んでいた。

 魔力の満タン状態を100とすると、魔力が0になってしまうと死につながるけれど、たとえば1でも残っていれば死ななくてすむ。
 そのかわり、身体が動かなくなり、強制的に睡眠状態に入る。
 ここまでは本に書かれていた事。
 そして、魔力がある程度戻れば、起こされると目を覚ますけれど、生命の危険を感じるレベルだと、どうしたって起きないらしく、実際は深い睡眠なのだけれど、気絶していると思われるらしい。
 それを教えてくれたのは、エドのお母様のミラーザ様だった。

「あなたのおかげで、魔力が戻って、エドワードが助かったわ。本当にありがとう!」
「いえ。私のおかげではなく、お祖母様が解除したというか…」
「あなたの魔力を使って解除したのだから、あなたのおかげよ」
「ただ、エドがあんな事になったのは、私のせいのような気もするんです…」

 エドを刺すように指示したのは、元夫のロンバートではないかという話をすると、ミラーザ様は可愛らしい顔を歪めて言う。

「たとえ、その男が指示したのだとしても、悪いのはその男じゃないの。エアリスは何も悪くないわ」
「だけど、エドがいなくなれば私の居場所がなくなります。そうなったら…」
「自分の所へ帰ってくるって? 馬鹿じゃないの!? エアリスには実家だってあるし、エドワードに何かあったとしても私達が面倒を見るわ!」
「ありがとうございます」

 憤慨してくれるミラーザ様に礼を言ったあと、夢でお祖母様達に言われた話をしてみると、ミラーザ様は目を輝かせた。

「さすが師匠たちね! その石は思念体みたいなものなのかもしれないわ。ここまでくると、魔法って言葉だけじゃ済まされない気もするけど、それだけ師匠たちがすごいって事ね!」
 
 私も納得したわけではないけれど、そういう事が可能な魔法をお祖父様達が作り出したのだと思うことにした。

「師匠が昔言っていたんだけど、遊び半分で占い師にみてもらったことがあったみたい」
「お祖母様がですか?」
「ええ。その時に、権力にいいように使われて命を落とす可能性があると言われたみたい。それは孫の代まで。それを聞いたお祖母様はすぐにお祖父様に相談したらしいわ。占いをあまり信じないタイプだったけれど、孫の代までと言われてしまうと、やはり気になったみたい。だから、あなたの実家に魔法をかけ、そして、孫である、あなたのために、そのネックレスの石に魔法をかけた」
「でも、それならどうしてお兄様には何も残さなかったんでしょう?」

 私が尋ねると、ミラーザ様は微笑んで答えてくれる。

「あなたの兄であるクラリスは実家から出て行ったりはしないでしょう?」
「…あ、そうですね。実家にいれば、もしくは実家に帰れば守ってもらえますものね」
「だから、あなたのお父様とお母様も一緒に住み続けているのよ」
「私の場合は嫁に行く可能性があるから、持ち運べるものを用意してくれたんですね」

 俯いて、ネックレスの石をぎゅうと握りしめた。
 
 お祖父様、お祖母様、本当にありがとう。

 感謝の気持ちを伝えたあとに、ふと思った事を口にしてみる。

「でも、お祖父様達に、こんなにすごい力があるなら、メガイクスを殺せたんじゃないでしょうか」
「あら。自分の国の大将を殺してしまったら、戦争が負けてしまうわよ? 内戦なんて事をしていたら、敵国に攻め込まれて、今のような生活は出来ていないかも…」
「お祖父様達が命を落としたのは、私達の暮らしを守るためでもあったんですね…」
 
 たくさんの人の暮らしが守られた事は救いだけれど、メガイクスは領土を増やした。
 それが納得いかない。
 でも、今は私にはやらないといけない事がある。
 エドを襲わせたと思われるロンバートに疑いの目を向けさせて、本当に犯人が彼なら、罰を下さないといけない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

【完結】愛されることを諦めた私に愛を教えてくれたのは、愛を知らない冷酷公爵様でした

るあか
恋愛
「出来損ないのあの子をあなたの代わりとして嫁がせましょ。あんなところに嫁いだら何をされるか分からないもの」  小国アーレンス王国は突如隣国シュナイダー帝国の侵略を受け、城を呆気なく制圧された。  アーレンス城を制圧したのは冷酷無慈悲な帝国の魔道将軍オスカー・シュナイダー公爵。  アーレンス王国は無条件降伏を受け入れ、帝国の支配下へと下る。  皇帝が戦利品として要求してきたのは、アーレンス王国第一王女エリーゼの身柄。皇帝の甥っ子であるオスカーのもとへ嫁がせるためであった。  だが、可愛い我が子をそんな非情な男のもとへなど嫁がせたくない第一王妃アーレンスは、第二王妃の子であるフローラをエリーゼの身代わりとして帝国に差し出すのであった。 ⸺⸺  毎日虐められているにも関わらず、心優しく育ったフローラには、不思議な力があった。だがそれは誰にも気付かれることなく、彼女自身も無自覚であった。  そんなフローラがオスカーのもとへ嫁いだことで、アーレンス城には悲劇が起こることとなる。  一方で拷問覚悟で嫁いだフローラに待っていたのは……? ※エールありがとうございます!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。 ※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。  元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。  破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。  だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。  初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――? 「私は彼女の代わりなの――? それとも――」  昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。 ※全13話(1話を2〜4分割して投稿)

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...