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2−1 離縁
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ある日の朝、別邸のメイドが私の元へやって来て、義母が私を呼んでいるから、すぐに向かってほしいと言われた。
嫌な予感がした。
昨日の夜から、ロンバートの様子がおかしく、私と目を合わせると、彼は綺麗な緑色の瞳を揺らし、なぜか気まずそうな表情をするので、何かあったのか、と気にはなっていた。
けれど、私は、あまり気にしない性格なので、この様子が続くようなら聞けばいいだなんて、呑気で甘い考えでいた。
何より問いかける事によって、機嫌が悪くなられるのも嫌だったから。
もしかして、その事と関係あるのかしら?
どんな用事なのかはわからなかったけれど、私は慌てて支度をして、伯爵邸からそう遠くない別邸に徒歩で向かう事にした。
その時、お守り代わりにと形見のネックレスをつけなければいけない気がして、つけて行く事にした。
お祖父様とお祖母様が付いてくれている、そう思うだけで心強かった。
別邸のメイドに案内された部屋に足を踏み入れると、黒のローテーブルをはさんで向かい合わせになっているソファーの片方に義父母とロンバート、そして私の親友、オルザベートが、窮屈そうに並んで座っていた。
どうして、オルザベートが…?
彼女がここにいる理由が全くわからず、余計に嫌な予感が強くなったけれど、空いている向かい側のソファーに座る様に言われたので、大人しく腰を下ろすと、ロンバートが茶色のウェーブのかかった髪を揺らして、私に向かって頭を下げてから口を開いた。
「彼女に子供が出来てしまった。別れてほしい」
「……え?」
意味が分からなくて聞き返すと、ロンバートは大きく息を吐いてから顔を上げた。
「エアリス、すまない。オルザベートに子供が出来てしまった。お腹の子供の父親は僕らしいんだ」
「……なんですって?」
「本当に君には悪いと思っている。だけど、子供のためにも別れてくれないか」
「エアリス、ごめんなさい。私が悪いのよ。ロンバートは悪くないの!」
オルザベートが2つにわけて結んだ赤毛の三つ編みを揺らしながら、テーブルに身を乗り出す。
「幸せそうなあなたが羨ましくて、彼を誘惑してしまったのよ。遊びのつもりだったの! 本当にごめんなさい!」
「いや、オルザベート、君を求めてしまった僕が悪いんだ」
「でも!」
「なんなのよ、それ。意味がわからない。悪いのは片方じゃなくて、あなた達、二人共でしょう?」
目の前でイチャイチャする二人に、私は強く言い放った。
怒りと悲しみで感情がぐちゃぐちゃになりながらも、詳しく話を聞いてみると、私と結婚してすぐの時に、お互いに友人同士で行った酒場で出会い、そのまま身体の関係になり、ダラダラと続いている内に出来た子供らしい。
そう言われてみれば、ここ最近は身体を求められていない。
ロンバートはオルザベートの身体で満足していたのだ。
浮気を疑ってもおかしくなかった状態だったのに、私は本当にバカだ。
「息子が本当に申し訳ない」
「ごめんなさいね、エアリスさん。ロンバートを許してあげてやって。そして、解放してやってほしいの。あなた、結婚当初は屋敷に慣れるために、ロンバートをほったらかしにしていたでしょう?」
ほったらかしにしていた?
そんな事実はない。
義母が屋敷に入り浸って、ロンバートと仲良くしていたから、わざわざ割って入らなかっただけ。
義父は本当に申し訳なさそうにしているけど、義母はなんだか開き直っている様に思えて、イラただしさが増す。
何より、彼女は私が悪いと言っている。
本当なら泣いてわめいて、二人に罵声を浴びせたい。
だけどもう、そんな事をしても意味がない。
出来てしまった命を消すわけにはいかない。
最低な二人の血を引いていようが、子供に罪はない。
何より、もう、今までには戻れないのだから。
何かの魔法がとけたかのように、ロンバートの事が急に気持ち悪くなった。
あれだけ好きだと思っていた人だったのに…。
嫌な予感がした。
昨日の夜から、ロンバートの様子がおかしく、私と目を合わせると、彼は綺麗な緑色の瞳を揺らし、なぜか気まずそうな表情をするので、何かあったのか、と気にはなっていた。
けれど、私は、あまり気にしない性格なので、この様子が続くようなら聞けばいいだなんて、呑気で甘い考えでいた。
何より問いかける事によって、機嫌が悪くなられるのも嫌だったから。
もしかして、その事と関係あるのかしら?
どんな用事なのかはわからなかったけれど、私は慌てて支度をして、伯爵邸からそう遠くない別邸に徒歩で向かう事にした。
その時、お守り代わりにと形見のネックレスをつけなければいけない気がして、つけて行く事にした。
お祖父様とお祖母様が付いてくれている、そう思うだけで心強かった。
別邸のメイドに案内された部屋に足を踏み入れると、黒のローテーブルをはさんで向かい合わせになっているソファーの片方に義父母とロンバート、そして私の親友、オルザベートが、窮屈そうに並んで座っていた。
どうして、オルザベートが…?
彼女がここにいる理由が全くわからず、余計に嫌な予感が強くなったけれど、空いている向かい側のソファーに座る様に言われたので、大人しく腰を下ろすと、ロンバートが茶色のウェーブのかかった髪を揺らして、私に向かって頭を下げてから口を開いた。
「彼女に子供が出来てしまった。別れてほしい」
「……え?」
意味が分からなくて聞き返すと、ロンバートは大きく息を吐いてから顔を上げた。
「エアリス、すまない。オルザベートに子供が出来てしまった。お腹の子供の父親は僕らしいんだ」
「……なんですって?」
「本当に君には悪いと思っている。だけど、子供のためにも別れてくれないか」
「エアリス、ごめんなさい。私が悪いのよ。ロンバートは悪くないの!」
オルザベートが2つにわけて結んだ赤毛の三つ編みを揺らしながら、テーブルに身を乗り出す。
「幸せそうなあなたが羨ましくて、彼を誘惑してしまったのよ。遊びのつもりだったの! 本当にごめんなさい!」
「いや、オルザベート、君を求めてしまった僕が悪いんだ」
「でも!」
「なんなのよ、それ。意味がわからない。悪いのは片方じゃなくて、あなた達、二人共でしょう?」
目の前でイチャイチャする二人に、私は強く言い放った。
怒りと悲しみで感情がぐちゃぐちゃになりながらも、詳しく話を聞いてみると、私と結婚してすぐの時に、お互いに友人同士で行った酒場で出会い、そのまま身体の関係になり、ダラダラと続いている内に出来た子供らしい。
そう言われてみれば、ここ最近は身体を求められていない。
ロンバートはオルザベートの身体で満足していたのだ。
浮気を疑ってもおかしくなかった状態だったのに、私は本当にバカだ。
「息子が本当に申し訳ない」
「ごめんなさいね、エアリスさん。ロンバートを許してあげてやって。そして、解放してやってほしいの。あなた、結婚当初は屋敷に慣れるために、ロンバートをほったらかしにしていたでしょう?」
ほったらかしにしていた?
そんな事実はない。
義母が屋敷に入り浸って、ロンバートと仲良くしていたから、わざわざ割って入らなかっただけ。
義父は本当に申し訳なさそうにしているけど、義母はなんだか開き直っている様に思えて、イラただしさが増す。
何より、彼女は私が悪いと言っている。
本当なら泣いてわめいて、二人に罵声を浴びせたい。
だけどもう、そんな事をしても意味がない。
出来てしまった命を消すわけにはいかない。
最低な二人の血を引いていようが、子供に罪はない。
何より、もう、今までには戻れないのだから。
何かの魔法がとけたかのように、ロンバートの事が急に気持ち悪くなった。
あれだけ好きだと思っていた人だったのに…。
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