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17 嬉しくない告白 ③
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嘘でもわたしを一番と言わないのは、ルイーダ様に申し訳ないという気持ちがあるのだろう。わたしがそう考えるとわかっているから、昔みたいに絆されるだろうと本気で思っているのかもしれない。
昔のわたしは死んだと言っているのに、どうしたらわかってくれるの?
別れてもよりを戻す人がいることは確かだけど、殺人未遂のようなことをした人と、よりを戻す人なんて本当に少数派だと思う。
わたしは、よりを戻さない派だ。たとえ、一番愛していると言われても、レンジロード様に気持ちは戻らない。
「二番目ということが気になるのか」
「いえ、一番に愛してもらっても迷惑なので同じです」
「では、何が気に食わない? 私は嘘をついていない」
嘘をついていないと言われても、わたしを突き落としたくせに、そんなことはしていないなんて言う人の言葉を信じられるわけがないとは思わないのかしら。
レンジロード様が素直に罪を認められないのは、認めてしまえば爵位を剥奪される可能性があるからでしょう。ピアーナ様もそれが嫌で、絶対に認めるなと言っているのだと思う。
今の地位を保持しておきたいから、自分たちの身を脅かす恐れがあるわたしを味方につけておきたいんでしょうね。
「リコット、私が悪かった。君にはたくさん酷いことを言い続けてきた。でも、それを君は気にせずに私に付いてきてくれただろう。それが当たり前だと思っていた」
「昔のわたしは死んだとお伝えしたはずです」
「君が君であることに代わりはない。昔の君を思い出してくれればいいだけだ」
「お断りします」
「少しだけでいい。考えてくれ」
レンジロード様がわたしに頭を下げた。
こんなことは今までになかった。本当の気持ちだと受け止めても良いのかもしれないけれど、だからといって考えるつもりはない。
「申し訳ございません。わたしにはあなたとの未来は離婚しか考えられません」
「……わかった。離婚はしよう。だが、再婚のことを考えてほしい」
「何を言っているんですか!?」
「それくらい良いだろう。では、離婚届にサインしたものをあとで執事に届けさせる」
レンジロード様はそう言って、わたしが何か言う前に逃げるように部屋から出て行った。
一体、何を考えているのよ!?
メイドや兵士が玄関に案内するために追いかけていったのを確認してから、ソールさんに話しかける。
「あの、ソールさん」
「……何でしょうか」
「レンジロード様はとある方が好きなんです。その方が絶対的な存在のために、嘘でもわたしを一番好きだと言えません。かといって、正直に言うものでしょうか」
「とある令嬢の信者のようになっているんですね。まあ、そうなりますと、嘘でもリコット様を一番とは言えないでしょうな」
ソールさんは難しい顔で答えた。
「レンジロード様の好きな人は、とても素敵な方なんです。なので、彼がその人を好きになる理由はわかるので良いんです。わたしを二番目に好きだから戻って来いと言うのは、まだ、わたしがレンジロード様に未練があると思われているのでしょうか」
「その可能性が高いです。自己肯定感の強そうな人ですし、口にしないだけでリコット様が自分を嫌いになるはずがないと思い込んでいるのでしょう」
ソールさんはレンジロード様と少し話しただけだけど、彼の本当の姿を見抜いたようだった。
「再婚だなんて馬鹿なことを言っていましたが、何を考えているのか」
「とにかく、離婚はしてくれるようですし、一歩前進といったところですかな」
苦笑するソールさんに頷く。
「そうですね。これで縁が切れます!」
再婚なんて絶対にしない!今は離婚できることを素直に喜ぼう。
そう思って、ソールさんと応接室を出た。
その後、離婚届が届けられたので、必要事項を記入して役所に提出し、無事に受理された。
これで、レンジロード様との縁が切れたのは確かだが、何を考えているのか、レンジロード様はその日から、わたしに恋文を送ってくるようになった。
しかも、二番目に愛していると正直に言うことで、自分の誠実さをアピールしていた。
だからわたしは、こう返事をした。
『気持ちにお応えすることはできません。そして、もし、わたしを二番目にでも愛してくれているなら、わたしのためにわたしを忘れてください』
それについて返ってきた手紙には一言。
『嫌だ』
と書かれていた。
子供じゃないんだからやめてほしい。
これ以上、やり取りをすれば文通していることと変わらないので無視することにした。
わたしからの返事はなくても、手紙やプレゼントは毎日届いた。その度に受け取り拒否をし続けた。
お父様は伯爵家でも力が弱い。だから、シリュウ兄さまを跡継ぎにと、トファス公爵閣下が申し出てくれていた。
元公爵令息が同じ地位についても、バックに公爵家がいるとなれば、また違ってくるからだ。
シリュウ兄さまがこの家を継ぐまで、わたしの家は弱小だ。レンジロード様の行為が迷惑だと伝えることはできても強くは出れなかった。
かといって、このままの状態で何もしないわけにはいかない。
あまりのしつこさにうんざりしたわたしは、ルイーダ様に頼みたいことがあると連絡を入れたのだった。
昔のわたしは死んだと言っているのに、どうしたらわかってくれるの?
別れてもよりを戻す人がいることは確かだけど、殺人未遂のようなことをした人と、よりを戻す人なんて本当に少数派だと思う。
わたしは、よりを戻さない派だ。たとえ、一番愛していると言われても、レンジロード様に気持ちは戻らない。
「二番目ということが気になるのか」
「いえ、一番に愛してもらっても迷惑なので同じです」
「では、何が気に食わない? 私は嘘をついていない」
嘘をついていないと言われても、わたしを突き落としたくせに、そんなことはしていないなんて言う人の言葉を信じられるわけがないとは思わないのかしら。
レンジロード様が素直に罪を認められないのは、認めてしまえば爵位を剥奪される可能性があるからでしょう。ピアーナ様もそれが嫌で、絶対に認めるなと言っているのだと思う。
今の地位を保持しておきたいから、自分たちの身を脅かす恐れがあるわたしを味方につけておきたいんでしょうね。
「リコット、私が悪かった。君にはたくさん酷いことを言い続けてきた。でも、それを君は気にせずに私に付いてきてくれただろう。それが当たり前だと思っていた」
「昔のわたしは死んだとお伝えしたはずです」
「君が君であることに代わりはない。昔の君を思い出してくれればいいだけだ」
「お断りします」
「少しだけでいい。考えてくれ」
レンジロード様がわたしに頭を下げた。
こんなことは今までになかった。本当の気持ちだと受け止めても良いのかもしれないけれど、だからといって考えるつもりはない。
「申し訳ございません。わたしにはあなたとの未来は離婚しか考えられません」
「……わかった。離婚はしよう。だが、再婚のことを考えてほしい」
「何を言っているんですか!?」
「それくらい良いだろう。では、離婚届にサインしたものをあとで執事に届けさせる」
レンジロード様はそう言って、わたしが何か言う前に逃げるように部屋から出て行った。
一体、何を考えているのよ!?
メイドや兵士が玄関に案内するために追いかけていったのを確認してから、ソールさんに話しかける。
「あの、ソールさん」
「……何でしょうか」
「レンジロード様はとある方が好きなんです。その方が絶対的な存在のために、嘘でもわたしを一番好きだと言えません。かといって、正直に言うものでしょうか」
「とある令嬢の信者のようになっているんですね。まあ、そうなりますと、嘘でもリコット様を一番とは言えないでしょうな」
ソールさんは難しい顔で答えた。
「レンジロード様の好きな人は、とても素敵な方なんです。なので、彼がその人を好きになる理由はわかるので良いんです。わたしを二番目に好きだから戻って来いと言うのは、まだ、わたしがレンジロード様に未練があると思われているのでしょうか」
「その可能性が高いです。自己肯定感の強そうな人ですし、口にしないだけでリコット様が自分を嫌いになるはずがないと思い込んでいるのでしょう」
ソールさんはレンジロード様と少し話しただけだけど、彼の本当の姿を見抜いたようだった。
「再婚だなんて馬鹿なことを言っていましたが、何を考えているのか」
「とにかく、離婚はしてくれるようですし、一歩前進といったところですかな」
苦笑するソールさんに頷く。
「そうですね。これで縁が切れます!」
再婚なんて絶対にしない!今は離婚できることを素直に喜ぼう。
そう思って、ソールさんと応接室を出た。
その後、離婚届が届けられたので、必要事項を記入して役所に提出し、無事に受理された。
これで、レンジロード様との縁が切れたのは確かだが、何を考えているのか、レンジロード様はその日から、わたしに恋文を送ってくるようになった。
しかも、二番目に愛していると正直に言うことで、自分の誠実さをアピールしていた。
だからわたしは、こう返事をした。
『気持ちにお応えすることはできません。そして、もし、わたしを二番目にでも愛してくれているなら、わたしのためにわたしを忘れてください』
それについて返ってきた手紙には一言。
『嫌だ』
と書かれていた。
子供じゃないんだからやめてほしい。
これ以上、やり取りをすれば文通していることと変わらないので無視することにした。
わたしからの返事はなくても、手紙やプレゼントは毎日届いた。その度に受け取り拒否をし続けた。
お父様は伯爵家でも力が弱い。だから、シリュウ兄さまを跡継ぎにと、トファス公爵閣下が申し出てくれていた。
元公爵令息が同じ地位についても、バックに公爵家がいるとなれば、また違ってくるからだ。
シリュウ兄さまがこの家を継ぐまで、わたしの家は弱小だ。レンジロード様の行為が迷惑だと伝えることはできても強くは出れなかった。
かといって、このままの状態で何もしないわけにはいかない。
あまりのしつこさにうんざりしたわたしは、ルイーダ様に頼みたいことがあると連絡を入れたのだった。
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