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43 フラル王国の王家の終わり ④ ※シエッタ視点
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「ああ、もう! あの男がいなかったら全て上手くいっていたはずなのに!」
わたしはベッドの近くにある壁を枕で何度も叩いて叫んだ。
森林公園で久しぶりにリディアス様たちと会った時、ノンクードが勝手にしたことにカッとなってしまって、リディアス様の前だというのにはしたない姿を見せてしまった。
嫌われてしまっていたらどうしよう。
しかも、派手に転んだ時に歯が欠けてしまい、その歯を見たお姉様たちに馬鹿にされてしまった。この歯を治さないとリディアス様の所へ行けないわ。
ただでさえ、ミーリルに出遅れているのに、これ以上、距離を置くことになってしまったら取り返しのつかないことになる。
久しぶりに会ったミーリルは美人になっていた気がするし、もしかして、恋でもしているんじゃない?
相手がリディアス様だったりしたら最悪だわ!
鏡で自分の姿を確認してみる。プロポーションは悪くないし、顔だって美人だわ。リディアス様が私に振り向かないのは、きっとミーリルが私を不幸にさせているからよ!
最近、王家の石の効力が弱まっているみたいだし、本当に嫌なことばかり! やっぱり半分の状態では力が発揮できないのね!
とっとと、ミーリルが帰ってきて、わたしたちの不幸を全部受け止めてくれたらいいのに!
壁に向かって枕を放り投げた時、庭のほうからロブの怒る声が聞こえてきた。
「お前が石を半分なくさなければ、こんなことにならなかったんだ!」
二階の窓から見下ろしてみると、ロブが私の侍女を叱責していた。あの侍女が私に付いていた時に石が半分に割れて、どこかへいってしまった。ロブは彼女のせいで自分たちが不幸になったと思っているみたいね。
今は夜なので、勤務後に帰ろうとしている彼女を見つけて呼び止めたみたい。二人はちょうど外灯の下で話をしていたから表情は見えないけれど、動きはよく見えるし、静かなこともあり声もはっきりとわたしの耳に届いた。
「申し訳ございません! で、ですがわたくしはっ」
「うるさい! 口答えするな!」
ロブが侍女の頬を叩いた時、突然、ロブの動きが止まったかと思うと、お腹を押さえながら地面に膝をついた。近くにいた騎士たちが彼に駆け寄り「しっかりしてください!」と声をかけている。
一体、ロブに何が起こったの!? 侍女は殴られただけで、何かしているようには見えなかったわ。
様子を見に行こうと廊下に出た時、お母様の悲鳴が聞こえた。
「大変! 大変だわ!」
「どうしてこんなことに!?」
困惑した様子のお父様の声も聞こえてきたので、急いで寝室に向かう。扉をノックしながら、扉の前にいた兵士たちと共に呼びかける。
「両陛下! 何かございましたか!?」
「お父様、お母様! 一体何があったのです!?」
私の声が聞こえたからか、部屋の扉がゆっくりと開き、真っ青な顔をしたお父様が姿を現した。
「お父様! 顔色が悪いです! どうなさったんですか!?」
「……シエッタ。中に入りなさい」
「は、はい」
暗い表情のお父様に促されて部屋に入るとすぐに、お母様の悲鳴に気がついたお姉さまたちも合流した。
「何があったんです?」
三人でお父様に問いかけると、お父様はお母様に目を向けた。
「どうしたら、どうしたら良いの!?」
泣き叫ぶお母様の視線の先には木目調のサイドテーブルがあり、その上には白い砂が山の形のように置かれている。
「……お母様、この砂はどうされたのですか?」
「石よ! 大事にしていた石! さっきまで石だったのに、突然、砂に変わってしまったのよ!」
お姉様の質問に答えたお母様の顔は、夕食時に見た時よりも一気に老けており、まるで老婆のようになっていた。
わたしはベッドの近くにある壁を枕で何度も叩いて叫んだ。
森林公園で久しぶりにリディアス様たちと会った時、ノンクードが勝手にしたことにカッとなってしまって、リディアス様の前だというのにはしたない姿を見せてしまった。
嫌われてしまっていたらどうしよう。
しかも、派手に転んだ時に歯が欠けてしまい、その歯を見たお姉様たちに馬鹿にされてしまった。この歯を治さないとリディアス様の所へ行けないわ。
ただでさえ、ミーリルに出遅れているのに、これ以上、距離を置くことになってしまったら取り返しのつかないことになる。
久しぶりに会ったミーリルは美人になっていた気がするし、もしかして、恋でもしているんじゃない?
相手がリディアス様だったりしたら最悪だわ!
鏡で自分の姿を確認してみる。プロポーションは悪くないし、顔だって美人だわ。リディアス様が私に振り向かないのは、きっとミーリルが私を不幸にさせているからよ!
最近、王家の石の効力が弱まっているみたいだし、本当に嫌なことばかり! やっぱり半分の状態では力が発揮できないのね!
とっとと、ミーリルが帰ってきて、わたしたちの不幸を全部受け止めてくれたらいいのに!
壁に向かって枕を放り投げた時、庭のほうからロブの怒る声が聞こえてきた。
「お前が石を半分なくさなければ、こんなことにならなかったんだ!」
二階の窓から見下ろしてみると、ロブが私の侍女を叱責していた。あの侍女が私に付いていた時に石が半分に割れて、どこかへいってしまった。ロブは彼女のせいで自分たちが不幸になったと思っているみたいね。
今は夜なので、勤務後に帰ろうとしている彼女を見つけて呼び止めたみたい。二人はちょうど外灯の下で話をしていたから表情は見えないけれど、動きはよく見えるし、静かなこともあり声もはっきりとわたしの耳に届いた。
「申し訳ございません! で、ですがわたくしはっ」
「うるさい! 口答えするな!」
ロブが侍女の頬を叩いた時、突然、ロブの動きが止まったかと思うと、お腹を押さえながら地面に膝をついた。近くにいた騎士たちが彼に駆け寄り「しっかりしてください!」と声をかけている。
一体、ロブに何が起こったの!? 侍女は殴られただけで、何かしているようには見えなかったわ。
様子を見に行こうと廊下に出た時、お母様の悲鳴が聞こえた。
「大変! 大変だわ!」
「どうしてこんなことに!?」
困惑した様子のお父様の声も聞こえてきたので、急いで寝室に向かう。扉をノックしながら、扉の前にいた兵士たちと共に呼びかける。
「両陛下! 何かございましたか!?」
「お父様、お母様! 一体何があったのです!?」
私の声が聞こえたからか、部屋の扉がゆっくりと開き、真っ青な顔をしたお父様が姿を現した。
「お父様! 顔色が悪いです! どうなさったんですか!?」
「……シエッタ。中に入りなさい」
「は、はい」
暗い表情のお父様に促されて部屋に入るとすぐに、お母様の悲鳴に気がついたお姉さまたちも合流した。
「何があったんです?」
三人でお父様に問いかけると、お父様はお母様に目を向けた。
「どうしたら、どうしたら良いの!?」
泣き叫ぶお母様の視線の先には木目調のサイドテーブルがあり、その上には白い砂が山の形のように置かれている。
「……お母様、この砂はどうされたのですか?」
「石よ! 大事にしていた石! さっきまで石だったのに、突然、砂に変わってしまったのよ!」
お姉様の質問に答えたお母様の顔は、夕食時に見た時よりも一気に老けており、まるで老婆のようになっていた。
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