婚約解消は諦めましたが、平穏な生活を諦めるつもりはありません!

風見ゆうみ

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3 もれているようにしか思えないのですが?

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 カーミラ様とのひと悶着のあと、ミリー様は店主様から、長めの休憩をとる許可をいただく事が出来たので、場所を移動して、近くのカフェで話をする事になったのですが、その際に、ミリー様から言われます。

「どうして、くそミラ、あ、いえ、くそ…、カーミラ様はあのレストランに来たんでしょうか。常連でもなんでもないですよ」
「ミリー様、言い直したつもりかもしれませんが、くそミラからタダのくそカーミラ様になっただけですよ」

 私の思っていた事をソラが代弁してくれました。
 すると、ミリー様は苦笑しながら、私とソラに頭を下げられます。

「失礼いたしました」
「俺は別にかまいませんよ」
「私にも謝る必要はありませんよ。ただ、他の人の前ではいけませんよ! あと、ミリー様が仰る、どうして、あの場にカーミラ様がいらっしゃったか、それは気になりますね。私が来るタイミングで待ち伏せしていたみたいです。どこからか情報がもれたとしか考えられません」

 カーミラ様は普段は私には接触できません。
 だから、なんとか私と顔を合わせて、言いたいことを言ってしまいたかったのでしょう。

「カーミラ様はラルフ様に婚約者をとか言ってましたが」
「言ってましたね」

 ソラの言葉に頷くと、ミリー様が声を上げられます。

「え! そんな事を? ラルフ様がリノア様にメロメロなのは見てたらわかりますのに、カーミラ様って馬鹿なんですかね?」

 たとえそう思っていたとしても、品の良い外面を守るためには、私は頷く事は出来ないのです。
 それに誰かが聞き耳を立てているかもしれませんしね。
 ですから、ミリー様の歯に衣着せぬ言い方に苦笑したあと、早速、今日の本題に入り、ミリー様の婚約者についての話を聞く事にしたのです。

 その日の晩、ラルフ様と夕食を食べながら、今日のお話をする事にします。

「今日は勝手に出ていってしまい、申し訳ございませんでした」
「いや、ちゃんと連絡してくれていたから大丈夫だ。ミリーはどうだった?」
「その件についてのお話もしたいのは山々なのですが、まずは他のお話からさせていただいても?」
「かまわない」

 それ以外の話があるのか?
 と言わんばかりの顔でラルフ様が食事の手を止めて私を見つめるので、カーミラ様との今日の出来事を包み隠さず、ご報告させていただきました。

「ただでさえ良くない噂が流れているところに、母上も好き勝手してくれるな。しかも公衆の面前でだろう?」
「はい。声高らかに私の悪口を言ってらっしゃいましたね」
「教えてくれてありがとう。それと、申し訳ないが母上の行動制限は今以上は難しい。今の状態では辺境伯夫人がいないから、女性メインの場所には母上に出てもらうしかないんだ。姉上はいなくなったしな」
「そういえば、ミラルル様はどうされているのでしょう?」
「リノアは知らなくていい。ただ、幸せに暮らしているとは言えない」

 お姉さまが幸せに暮らしていないのに、ラルフ様はにっこり笑顔で言われます。

 ラルフ様のお姉さまのミラルル様はフレイ様の暴挙を知っておられたのに、止めもしなかった上に、中々、フレイ様の部屋に行きたがらない令嬢を騙し、フレイ様の部屋に無理やり行かせたりしていたのだそうです。
 それを聞いたラルフ様は、とてもお怒りになられ、そんな事もあり、ミラルル様を評判の良くない伯爵邸に嫁がせたようです。
 知らなかった、というよりも、知っているのに止めなかった、という方が、やはり罪が重い気がします。
 何より手を貸していますしね。
 ちなみにカーミラ様が知らなかった理由は、フレイ様がわざわざ自分の母親に性に関する話をしたくなかった、という理由なんだそうです。
 
「リノア?」

 思い出すと腹が立つので、持っていたフォークを握りしめていると、ラルフ様に名を呼ばれました。

「なんでしょう?」
「口がへの字になっていた。母上のせいで嫌な思いをさせてしまって済まない」
「ラルフ様のせいではありません。カーミラ様には、先代の奥様であり、今は辺境伯の母親でいらっしゃるお方なのですし、もう少し我をおさえるべきだとは思いますが」
「母上には話をしておく。ただ、申し訳ないが、直接会って話をする事はしない」
「ラルフ様の顔を見る事はカーミラ様にとってご褒美ですものね」

 カーミラ様はラルフ様を溺愛しておられます。
 本当はラルフ様からガツンと言ってもらう方が良いのですが、カーミラ様の場合、ラルフ様の顔を見ただけで、何を言われても頭に入らないでしょう。

「あ、それから、カーミラ様は新しい婚約者の方を自分が探すと言っておられましたが」
「その辺の動きについては耳にしている。母上の動きについては把握しているから問題ない。ただ…」

 ラルフ様はそこまで言うと、視線を斜め下に向けて黙り込んでしまわれました。

「何かあるのですか?」
「いや、確証がないから、今は話すのは止めておこう」

 気にはなりますが、話したくないようですし、私自身、無理に聞きたいとも思いませんので、何も言わない事にしました。
 それから数日は、ミリー様の婚約者についてソラに調べてもらい、気になる事を洗い出したりしていたのですが、ラルフ様が外出されており、ソラも運悪く外出していた、ある日の事です。
 私宛にお客様がやって来られました。

「リノア様宛にランドン辺境伯がお見えです」

 騎士の方が私に報告してくださりました。
 ランドン辺境伯はミラルル様の元婚約者です。
 なぜ、そんな人が私に会いにくるのでしょう?
 しかも、ラルフ様がいないときにかぎって。
 というか、こんなタイミングで来るという事は、情報がやはり、どこからかもれているようにしか思えないのですが?
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