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閑話 四人の聖女達
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謁見の間での出来事の後、聖女達はミーファに対する免罪を国王に頼み込んだが、全く相手にされなかった。
どうにかしなければ、と頭を悩ませていると、王太子が聖女達に声を掛け「俺が助けてやろう」と言った為、聖女達は無理だろうとわかっていながらも、彼にお願いする事にした。
なぜなら、彼の申し出を断われば、彼の機嫌をそこねて、未来の王妃になる夢を諦めなければいけない結果に繋がるかもしれないからだ。
王太子はミーファに「俺にすがれ」というメッセージを宰相に託したが、ミーファはリュークと共に王城を出て行ってしまった。
その事を聞いた王太子は怒り狂い、ご機嫌伺いに来ていた聖女達を自分の部屋から追い出した。
王太子の部屋から追い出された四人の聖女達は、ミーファが本当に城から出て行ってしまった事に動揺を隠せなかった。
聖女同士がコミュニケーションをとれる様にと用意された談話室で、四人は椅子に座り、これからの事を相談する事にしたのだったが…。
「フランソワ、あなたのせいよ!」
聖女の一人、金色の髪にブルーの瞳を持つ、聖女内では一番の美女と言われているエルセラが叫ぶ。
「そんな、やめてよ。元々は皆で決めた事じゃないの!」
フランソワが目に涙を浮かべて叫ぶ。
ミーファに罪を着せるという話は事前に四人で決めた事だった。
「まさか、ミーファを追放するだなんて思わないじゃないの! 叱責で済むだろうと言ったのは、あなた達もでしょう!?」
「そういう問題じゃないわ! 結界が破られたのは、あなたのせいでしょう!? あなたが、これからは責任を取って、ミーファの代わりをしなさい」
一番、年長であり、気の強そうな顔をしたトリンがポニーテールにした赤色の髪を揺らし、茶色の長い髪を後ろで一つにまとめたフランソワに告げた。
「無理よ! ミーファの魔力は私の何倍もあるのよ!?」
「ミーファだって、昔はほとんど魔力がなくて、ずっと食べてばかりいたじゃない。魔力は増やせるのよ! だから、あなただって食べればいいのよ」
「食べればいいだなんて簡単に言わないで! 王太子殿下はデブは嫌いだと言っているじゃない!」
「あんなに食べていたのに、ミーファは太ってはいなかったわ」
キュララが冷たい目をして、フランソワに向かって続ける。
「ミーファっていう、お人好しがいてくれたから、私達が楽できてたのに…、こんな事になるなんて」
「キュララ、あなた、ミーファと仲が良かったくせに、酷い女ね」
トリンが言うと、キュララは鼻で笑う。
「仲良しこよしのふりをしていただけよ。その方が頼みやすいし。あ、そうだわ!」
キュララは王太子に見せる、可愛らしい笑顔とは全く違う、邪悪な笑みを浮かべて言う。
「皆でミーファに泣きつかない? ミーファの居場所はスコッチ辺境伯の所でしょう? 手紙を書いて助けてってお願いしましょう。あのお人好しのミーファの事だもの。私達や国民を見捨てられなくて助けてくれるに違いないわ。元々、結界は王都にいなくても張れるんだから、辺境伯の領土から出かけてもらえばいいのよ」
手紙は魔法で送る事が出来るが、本人の居場所がわからないと送れない。
だが、リュークが名乗り出た事により、ミーファの居場所は聖女達全員が知っている。
「そうね、そうしましょう!」
他の三人もキュララの案に賛成した。
「まずは謝罪の手紙を書いて許しを請いましょう。あの子の事だから、すぐに許してくれるわ」
トリンの言葉を合図に、全員が自室に戻り、ミーファへの手紙を書き始めたのだった。
しかし、彼女達は知らない。
ミーファがお人好しだから、彼女達の仕事を代わりにやっていた訳ではなく、国民の命を守るため、安全な生活を守るため、働かない聖女達の代わりに頑張っていただけだった事や、ミーファが聖女達からの手紙を受け取らない様にしている事を。
そして、辺境伯家に届いた、聖女達からミーファに宛てた手紙が、ミーファに知らされずに、辺境伯から命を受けたメイド達によって破棄されてしまう事を。
何より、これから苦難の日々が待っている事を、今の彼女達は考えてもいなかった。
どうにかしなければ、と頭を悩ませていると、王太子が聖女達に声を掛け「俺が助けてやろう」と言った為、聖女達は無理だろうとわかっていながらも、彼にお願いする事にした。
なぜなら、彼の申し出を断われば、彼の機嫌をそこねて、未来の王妃になる夢を諦めなければいけない結果に繋がるかもしれないからだ。
王太子はミーファに「俺にすがれ」というメッセージを宰相に託したが、ミーファはリュークと共に王城を出て行ってしまった。
その事を聞いた王太子は怒り狂い、ご機嫌伺いに来ていた聖女達を自分の部屋から追い出した。
王太子の部屋から追い出された四人の聖女達は、ミーファが本当に城から出て行ってしまった事に動揺を隠せなかった。
聖女同士がコミュニケーションをとれる様にと用意された談話室で、四人は椅子に座り、これからの事を相談する事にしたのだったが…。
「フランソワ、あなたのせいよ!」
聖女の一人、金色の髪にブルーの瞳を持つ、聖女内では一番の美女と言われているエルセラが叫ぶ。
「そんな、やめてよ。元々は皆で決めた事じゃないの!」
フランソワが目に涙を浮かべて叫ぶ。
ミーファに罪を着せるという話は事前に四人で決めた事だった。
「まさか、ミーファを追放するだなんて思わないじゃないの! 叱責で済むだろうと言ったのは、あなた達もでしょう!?」
「そういう問題じゃないわ! 結界が破られたのは、あなたのせいでしょう!? あなたが、これからは責任を取って、ミーファの代わりをしなさい」
一番、年長であり、気の強そうな顔をしたトリンがポニーテールにした赤色の髪を揺らし、茶色の長い髪を後ろで一つにまとめたフランソワに告げた。
「無理よ! ミーファの魔力は私の何倍もあるのよ!?」
「ミーファだって、昔はほとんど魔力がなくて、ずっと食べてばかりいたじゃない。魔力は増やせるのよ! だから、あなただって食べればいいのよ」
「食べればいいだなんて簡単に言わないで! 王太子殿下はデブは嫌いだと言っているじゃない!」
「あんなに食べていたのに、ミーファは太ってはいなかったわ」
キュララが冷たい目をして、フランソワに向かって続ける。
「ミーファっていう、お人好しがいてくれたから、私達が楽できてたのに…、こんな事になるなんて」
「キュララ、あなた、ミーファと仲が良かったくせに、酷い女ね」
トリンが言うと、キュララは鼻で笑う。
「仲良しこよしのふりをしていただけよ。その方が頼みやすいし。あ、そうだわ!」
キュララは王太子に見せる、可愛らしい笑顔とは全く違う、邪悪な笑みを浮かべて言う。
「皆でミーファに泣きつかない? ミーファの居場所はスコッチ辺境伯の所でしょう? 手紙を書いて助けてってお願いしましょう。あのお人好しのミーファの事だもの。私達や国民を見捨てられなくて助けてくれるに違いないわ。元々、結界は王都にいなくても張れるんだから、辺境伯の領土から出かけてもらえばいいのよ」
手紙は魔法で送る事が出来るが、本人の居場所がわからないと送れない。
だが、リュークが名乗り出た事により、ミーファの居場所は聖女達全員が知っている。
「そうね、そうしましょう!」
他の三人もキュララの案に賛成した。
「まずは謝罪の手紙を書いて許しを請いましょう。あの子の事だから、すぐに許してくれるわ」
トリンの言葉を合図に、全員が自室に戻り、ミーファへの手紙を書き始めたのだった。
しかし、彼女達は知らない。
ミーファがお人好しだから、彼女達の仕事を代わりにやっていた訳ではなく、国民の命を守るため、安全な生活を守るため、働かない聖女達の代わりに頑張っていただけだった事や、ミーファが聖女達からの手紙を受け取らない様にしている事を。
そして、辺境伯家に届いた、聖女達からミーファに宛てた手紙が、ミーファに知らされずに、辺境伯から命を受けたメイド達によって破棄されてしまう事を。
何より、これから苦難の日々が待っている事を、今の彼女達は考えてもいなかった。
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