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21 即離婚しますよ!
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「まあ、クロフォード公爵閣下! それに奥様まで! ご連絡いただきましたら、こちらからお伺いいたしましたのに! もしかして、今日セレナが持っていきました花に何かご不満な点がございましたか!?」
花屋の店主の奥様は店頭に出てくるなり、私と旦那様を見て、焦った様な顔をされました。
それはそうですよね。
公爵夫妻がわざわざ店にやって来たのですから、何かあったのかと不安になってしまっても当然です。
花屋さんは商店街の中にありますので、公爵家の馬車が停まった事により周りの店からも人が出てきて、旦那様や私に挨拶をしてくれました。
挨拶を終えてから、花屋さんに改めて戻ると、奥さんは先程の言葉を私達に言ったのです。
「いいえ。突然押しかけてしまって申し訳ございません。何だか自分自身で花を見て選びたくなったんです。ご迷惑ですよね。次からはこの様な事はないようにしますから」
「そんな事はございません!」
「とんでもございません! 奥様に足を運んでいただけるなんて、この上ない喜びでございます。汚くて小さな店で申し訳ございませんが、存分にお楽しみ下さい!」
奥様の言葉の後に、慌てて着替えてこられたのか、花を売る様な格好には見えない正装姿で中年の店主の方が出てこられて、私の言葉に何度も首を横に振ると、店の中へと案内してくれました。
店の中にはセレナさんもいらっしゃり、私達の姿を見て驚いた顔をされました。
「突然、お邪魔してしまってごめんなさい。いつもお花を持っていただきありがとうございます」
「とんでもございません。いつもお買い上げありがとうございます」
慌てた様子で、ぺこりと頭を下げてくれました。
セレナさんはまるで小動物のような可愛らしさで、ついつい撫で撫でしたくなってしまいます。
「妻にプレゼントするのに人気な花はどれだろうか」
旦那様は店主さんに話しかけて、一生懸命になって切り花を見てくれていますが、普通に私に好きな花を聞いてくれれば良いと思うのですが、それって言ってはいけない事でしょうか?
「あの、エレノア様…」
「何でしょうか?」
「こんな事を言っても駄目な事はわかっているのですが、こんな時にしか機会がありませんので言わせていただいても良いですか!?」
「どうぞ?」
「あ、あのっ! クロフォード公爵閣下との馴れ初めとか教えていただけませんか? 実は、クロフォード公爵閣下って私の同世代の女子に人気があるんです! お花を届けに行っているだけで、公爵閣下に会えていないのに羨ましがられるくらいなんです!」
「まあ、旦那様が若い女性にモテているんですね!」
喜んでいると、セレナさんは微笑されます。
「自分の旦那様が女性に人気があると気分を悪くされる方もおられますが、エレノア様はそうではないのですね」
「えっと、どうして気分を悪くするんでしょうか?」
「やはり、何といいますか、他の方にとられてしまうんじゃないかとか、自分の旦那様なのに馴れ馴れしくしてほしくないとか、人によっては色々とあると思いますが…」
「そうなのですね。私は旦那様を信用しておりますし、旦那様が軽い気持ちで浮気するようでしたら、即離婚しますよ!」
「浮気なんてしない!」
どうやら旦那様に聞こえていたようで、真剣な表情で叫んでこられました。
「軽い気持ちでの浮気じゃなければ、エレノア様は許してさしあげるんですか?」
「軽い気持ちじゃない場合は、許すも許さないも離婚案件ですよね」
「え? 結局、離婚という事ですか?」
「それはそうだと思いますが、軽い気持ちの場合は慰謝料をたくさんもらいますし、そうでない場合は浮気をしてしまった原因などを確認し、私に非がありましたら慰謝料を減額」
「浮気なんてしないし、離婚などしない!」
旦那様という外野がうるさいです。
といいますか、旦那様は店主の方に任せておいて、この流れでセレナさんに恋の話を聞いてみる事にいたしましょう!
馴れ初め話といっても私と旦那様はただの政略結婚ですからね!
「あの、私達の馴れ初めの話は面白くないのでおいておいて、よろしければお聞かせ願いたいのですが、セレナさんには特定の方がいらっしゃったりするのですか?」
「特定の方、というのは…?」
「あの恋人だったり、好きな人だったり、とかです」
「ああ、そういう事ですね。一応は、います」
「そうなのですね!」
恥ずかしそうにしているセレナさんを見て、これ以上詳しく聞いて良いのか迷います。
最近、サンディさんのおかげで女性の友達が出来ましたが、皆さん、10歳くらい年下ですし、何でも素直に話して下さいますが、セレナさんは年頃の方です。
私のような友達でもない人間に恋の話などをしてくださるでしょうか…。
でも、相手がラムダちゃんかそうでないかだけは知りたいです。
こんな事を言っては駄目かもしれませんがラムダちゃんだけは止めてほしいです。
だって、セレナさんはラムダちゃんにはもったい気がしますから!
「でも、きっと一生、この恋は実らないと思います」
セレナさんが悲しい顔をされたので声を掛けようとした時でした。
「二度と来るなと言っただろう! 帰れ!」
店主さんの怒鳴り声が聞こえて振り返ると、まるで傭兵のような見た目で、引き締まった筋肉を見せつけるような黒のタンクトップ姿の男性が店の前に立っていました。
どうやら、その男性に向かって店主の方は叫んだようです。
「俺のセレナに声を掛けようとしている男がいるから来ただけだ。おい、お前、外に出ろ」
怒った熊みたいな男性は旦那様に向かってそう言いました。
あの人、大丈夫でしょうか?
強そうですけど、公爵に喧嘩を売って無事に済むとは思えないんですが…。
それと同時、私の隣に立っていたセレナさんの体が震えだした事に気が付いたのでした。
花屋の店主の奥様は店頭に出てくるなり、私と旦那様を見て、焦った様な顔をされました。
それはそうですよね。
公爵夫妻がわざわざ店にやって来たのですから、何かあったのかと不安になってしまっても当然です。
花屋さんは商店街の中にありますので、公爵家の馬車が停まった事により周りの店からも人が出てきて、旦那様や私に挨拶をしてくれました。
挨拶を終えてから、花屋さんに改めて戻ると、奥さんは先程の言葉を私達に言ったのです。
「いいえ。突然押しかけてしまって申し訳ございません。何だか自分自身で花を見て選びたくなったんです。ご迷惑ですよね。次からはこの様な事はないようにしますから」
「そんな事はございません!」
「とんでもございません! 奥様に足を運んでいただけるなんて、この上ない喜びでございます。汚くて小さな店で申し訳ございませんが、存分にお楽しみ下さい!」
奥様の言葉の後に、慌てて着替えてこられたのか、花を売る様な格好には見えない正装姿で中年の店主の方が出てこられて、私の言葉に何度も首を横に振ると、店の中へと案内してくれました。
店の中にはセレナさんもいらっしゃり、私達の姿を見て驚いた顔をされました。
「突然、お邪魔してしまってごめんなさい。いつもお花を持っていただきありがとうございます」
「とんでもございません。いつもお買い上げありがとうございます」
慌てた様子で、ぺこりと頭を下げてくれました。
セレナさんはまるで小動物のような可愛らしさで、ついつい撫で撫でしたくなってしまいます。
「妻にプレゼントするのに人気な花はどれだろうか」
旦那様は店主さんに話しかけて、一生懸命になって切り花を見てくれていますが、普通に私に好きな花を聞いてくれれば良いと思うのですが、それって言ってはいけない事でしょうか?
「あの、エレノア様…」
「何でしょうか?」
「こんな事を言っても駄目な事はわかっているのですが、こんな時にしか機会がありませんので言わせていただいても良いですか!?」
「どうぞ?」
「あ、あのっ! クロフォード公爵閣下との馴れ初めとか教えていただけませんか? 実は、クロフォード公爵閣下って私の同世代の女子に人気があるんです! お花を届けに行っているだけで、公爵閣下に会えていないのに羨ましがられるくらいなんです!」
「まあ、旦那様が若い女性にモテているんですね!」
喜んでいると、セレナさんは微笑されます。
「自分の旦那様が女性に人気があると気分を悪くされる方もおられますが、エレノア様はそうではないのですね」
「えっと、どうして気分を悪くするんでしょうか?」
「やはり、何といいますか、他の方にとられてしまうんじゃないかとか、自分の旦那様なのに馴れ馴れしくしてほしくないとか、人によっては色々とあると思いますが…」
「そうなのですね。私は旦那様を信用しておりますし、旦那様が軽い気持ちで浮気するようでしたら、即離婚しますよ!」
「浮気なんてしない!」
どうやら旦那様に聞こえていたようで、真剣な表情で叫んでこられました。
「軽い気持ちでの浮気じゃなければ、エレノア様は許してさしあげるんですか?」
「軽い気持ちじゃない場合は、許すも許さないも離婚案件ですよね」
「え? 結局、離婚という事ですか?」
「それはそうだと思いますが、軽い気持ちの場合は慰謝料をたくさんもらいますし、そうでない場合は浮気をしてしまった原因などを確認し、私に非がありましたら慰謝料を減額」
「浮気なんてしないし、離婚などしない!」
旦那様という外野がうるさいです。
といいますか、旦那様は店主の方に任せておいて、この流れでセレナさんに恋の話を聞いてみる事にいたしましょう!
馴れ初め話といっても私と旦那様はただの政略結婚ですからね!
「あの、私達の馴れ初めの話は面白くないのでおいておいて、よろしければお聞かせ願いたいのですが、セレナさんには特定の方がいらっしゃったりするのですか?」
「特定の方、というのは…?」
「あの恋人だったり、好きな人だったり、とかです」
「ああ、そういう事ですね。一応は、います」
「そうなのですね!」
恥ずかしそうにしているセレナさんを見て、これ以上詳しく聞いて良いのか迷います。
最近、サンディさんのおかげで女性の友達が出来ましたが、皆さん、10歳くらい年下ですし、何でも素直に話して下さいますが、セレナさんは年頃の方です。
私のような友達でもない人間に恋の話などをしてくださるでしょうか…。
でも、相手がラムダちゃんかそうでないかだけは知りたいです。
こんな事を言っては駄目かもしれませんがラムダちゃんだけは止めてほしいです。
だって、セレナさんはラムダちゃんにはもったい気がしますから!
「でも、きっと一生、この恋は実らないと思います」
セレナさんが悲しい顔をされたので声を掛けようとした時でした。
「二度と来るなと言っただろう! 帰れ!」
店主さんの怒鳴り声が聞こえて振り返ると、まるで傭兵のような見た目で、引き締まった筋肉を見せつけるような黒のタンクトップ姿の男性が店の前に立っていました。
どうやら、その男性に向かって店主の方は叫んだようです。
「俺のセレナに声を掛けようとしている男がいるから来ただけだ。おい、お前、外に出ろ」
怒った熊みたいな男性は旦那様に向かってそう言いました。
あの人、大丈夫でしょうか?
強そうですけど、公爵に喧嘩を売って無事に済むとは思えないんですが…。
それと同時、私の隣に立っていたセレナさんの体が震えだした事に気が付いたのでした。
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