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番外編
お姉様のような人
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「アリカさん、たまにはギルバート様と会うばかりじゃなく、わたくしとも一緒に遊んでくださらない?」
ある日、ユナ様からそんなお誘いを受け、次の休みはすでにギル様と会う約束をしていたので、その次の休みに一緒に出かける事になった。
「どこか、行きたいところはあるんですか?」
「そうね。家でお茶をするのはよく一緒にしているから、カフェに行くのではなくて、ショッピングなんてどうかしら?」
「ショッピングですか…」
買い物をするとなると、お父様からお小遣いをもらえるか聞いてみないといけないわ。
もし、もらえなかったとしても、ユナ様の買い物を見るだけでも良いわよね。
だって、ユナ様は出かけられた時は、いつもたくさんお洋服などを買われるから見ていて気持ちが良いし、それだけでいつも楽しいもの。
もちろん、たくさん買えて羨ましいとは思うけれど、妬む気持ちにはならないのが不思議だわ。
ユナ様が良い人だからかしら?
それとも、私に物欲がない?
とにかく、ユナ様と出かける際に着る服を決めて、見た目だけでもユナ様の隣を歩いても、おかしくない令嬢になろうと思った。
そして、当日になり、その日はとても快晴で、お出かけ日和だった。
ショッピングでも雨だとドレスが濡れてしまうから、出かけるのが憂鬱なので、晴れるととても嬉しい。
繁華街に向かう馬車の中で、ユナ様が笑顔で話しかけてくる。
「アリカさん、とても嬉しそうですわね」
「はい! ユナ様とお出かけできるので、とても嬉しいです」
「ギルバート様はアリカさんを取られて残念そうにしておられましたけど…」
「でも、お友達も大事だと言っておられましたし、気にしなくても大丈夫だと思います。ギル様も今日はお友達と会うと言われていましたし…」
「そうですわね。でも、考えてみたら、わたくしはギルバート様よりもアリカさんと一緒にいる時間が長いから、それでズルいと思われてしまったかも…」
ユナ様がくすくすと笑う。
ギル様って、そんな子供みたいな事を思う人かしら。
よくわからないけれど、付き合いの長いユナ様がそう思われるのなら、そうなのかもしれない。
でも、ショッピングとかって男性と行くよりも女性と行くほうが楽しい気がする。
「今日はギルバート様の事は忘れて、女性同士で楽しみましょうね」
「はい!」
目的地に着いたみたいで馬車が停まり、馬車から降りて、まずは、靴から見に行く事になった。
いろんなお店をまわったのはいいものの、結局、私は一切お金を出さないまま、色々なものを侯爵家のお金で買ってもらう事になってしまった。
ユナ様が言うには、ルード様から私用の予算をもらっているから、気にしなくて良いのだという。
「アリカさんは値段を見て選ぶから、予算が余ってしまっていますわ。お金を使う事も店の人にとっては喜ばしい事ですのよ?」
「そ、そうなのですか?」
「そうですわ! それに、アリカさんは今度、他国のパーティーに出席しないといけなくなると思いますの」
「他国のパーティー?」
「ええ。お父様から聞いたのですけど、ギルバート様が他国の王家のパーティーに招待されたそうですわ」
ギル様からは何も聞いていなかったので驚いていると、ユナ様が慌てて言う。
「出席するかどうか、まだはっきりと決めておられないのかもしれませんわね」
「……他国のパーティーに出席だなんて、そんな…」
「そんなに動揺していては駄目ですわ。アリカさんはいつかは公爵夫人になるのですから、他国のパーティーに出席する事はありえる事ですわよ?」
「……そうなんですね…」
今さらだけれど、ギル様は公爵なんだものね…。
それに、若い内に失敗するなら失敗しておいた方が、ギル様と結婚した後に失敗するよりかは良い気がするわ…!
ギル様と結婚…。
そう思うだけで、胸がドキドキしてきた。
「アリカさん、顔が赤くなりましたけど大丈夫? もしかして、ギルバート様の事を考えていらしたの?」
うふふ、とユナ様が笑う。
「そ、それは…っ」
「わたくしと一緒にいますのに、婚約者の事を考えるだなんて…。女の友情なんてそんなものなのですわよね」
ユナ様が泣き真似をするので、慌てて首を横に振る。
「ユナ様と一緒にいる事も楽しいです!」
「冗談ですわ! 婚約者の事を全く思い出さないのもおかしい気もしますもの。でも、アリカさん。わたくしと一緒にいるのが楽しいと思ってくださるのであれば、遠慮せずに、自分の好きなものを選んでくださいますわね?」
慌てる私にユナ様がにっこりと微笑む。
わかっていた事だけど、やっぱり、私なんかよりユナ様の方が上手だわ。
私にも姉がいたら、こんな感じだったのかしら?
ここは諦めて、ユナ様の言う通り、自分の好きな物を素直に言う事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただき、ありがとうございます!
リクエストいただいておりました、ユナとアリカのショッピングになります。
楽しんで読んでもらえたなら嬉しいです。
ある日、ユナ様からそんなお誘いを受け、次の休みはすでにギル様と会う約束をしていたので、その次の休みに一緒に出かける事になった。
「どこか、行きたいところはあるんですか?」
「そうね。家でお茶をするのはよく一緒にしているから、カフェに行くのではなくて、ショッピングなんてどうかしら?」
「ショッピングですか…」
買い物をするとなると、お父様からお小遣いをもらえるか聞いてみないといけないわ。
もし、もらえなかったとしても、ユナ様の買い物を見るだけでも良いわよね。
だって、ユナ様は出かけられた時は、いつもたくさんお洋服などを買われるから見ていて気持ちが良いし、それだけでいつも楽しいもの。
もちろん、たくさん買えて羨ましいとは思うけれど、妬む気持ちにはならないのが不思議だわ。
ユナ様が良い人だからかしら?
それとも、私に物欲がない?
とにかく、ユナ様と出かける際に着る服を決めて、見た目だけでもユナ様の隣を歩いても、おかしくない令嬢になろうと思った。
そして、当日になり、その日はとても快晴で、お出かけ日和だった。
ショッピングでも雨だとドレスが濡れてしまうから、出かけるのが憂鬱なので、晴れるととても嬉しい。
繁華街に向かう馬車の中で、ユナ様が笑顔で話しかけてくる。
「アリカさん、とても嬉しそうですわね」
「はい! ユナ様とお出かけできるので、とても嬉しいです」
「ギルバート様はアリカさんを取られて残念そうにしておられましたけど…」
「でも、お友達も大事だと言っておられましたし、気にしなくても大丈夫だと思います。ギル様も今日はお友達と会うと言われていましたし…」
「そうですわね。でも、考えてみたら、わたくしはギルバート様よりもアリカさんと一緒にいる時間が長いから、それでズルいと思われてしまったかも…」
ユナ様がくすくすと笑う。
ギル様って、そんな子供みたいな事を思う人かしら。
よくわからないけれど、付き合いの長いユナ様がそう思われるのなら、そうなのかもしれない。
でも、ショッピングとかって男性と行くよりも女性と行くほうが楽しい気がする。
「今日はギルバート様の事は忘れて、女性同士で楽しみましょうね」
「はい!」
目的地に着いたみたいで馬車が停まり、馬車から降りて、まずは、靴から見に行く事になった。
いろんなお店をまわったのはいいものの、結局、私は一切お金を出さないまま、色々なものを侯爵家のお金で買ってもらう事になってしまった。
ユナ様が言うには、ルード様から私用の予算をもらっているから、気にしなくて良いのだという。
「アリカさんは値段を見て選ぶから、予算が余ってしまっていますわ。お金を使う事も店の人にとっては喜ばしい事ですのよ?」
「そ、そうなのですか?」
「そうですわ! それに、アリカさんは今度、他国のパーティーに出席しないといけなくなると思いますの」
「他国のパーティー?」
「ええ。お父様から聞いたのですけど、ギルバート様が他国の王家のパーティーに招待されたそうですわ」
ギル様からは何も聞いていなかったので驚いていると、ユナ様が慌てて言う。
「出席するかどうか、まだはっきりと決めておられないのかもしれませんわね」
「……他国のパーティーに出席だなんて、そんな…」
「そんなに動揺していては駄目ですわ。アリカさんはいつかは公爵夫人になるのですから、他国のパーティーに出席する事はありえる事ですわよ?」
「……そうなんですね…」
今さらだけれど、ギル様は公爵なんだものね…。
それに、若い内に失敗するなら失敗しておいた方が、ギル様と結婚した後に失敗するよりかは良い気がするわ…!
ギル様と結婚…。
そう思うだけで、胸がドキドキしてきた。
「アリカさん、顔が赤くなりましたけど大丈夫? もしかして、ギルバート様の事を考えていらしたの?」
うふふ、とユナ様が笑う。
「そ、それは…っ」
「わたくしと一緒にいますのに、婚約者の事を考えるだなんて…。女の友情なんてそんなものなのですわよね」
ユナ様が泣き真似をするので、慌てて首を横に振る。
「ユナ様と一緒にいる事も楽しいです!」
「冗談ですわ! 婚約者の事を全く思い出さないのもおかしい気もしますもの。でも、アリカさん。わたくしと一緒にいるのが楽しいと思ってくださるのであれば、遠慮せずに、自分の好きなものを選んでくださいますわね?」
慌てる私にユナ様がにっこりと微笑む。
わかっていた事だけど、やっぱり、私なんかよりユナ様の方が上手だわ。
私にも姉がいたら、こんな感じだったのかしら?
ここは諦めて、ユナ様の言う通り、自分の好きな物を素直に言う事にした。
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お読みいただき、ありがとうございます!
リクエストいただいておりました、ユナとアリカのショッピングになります。
楽しんで読んでもらえたなら嬉しいです。
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完結おめでとうございます!
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お祝いのお言葉をありがとうございます✨
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