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20  わたしの幸せとは

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 ラファがベルベッタ様の件を陛下に相談した結果、やはり、見殺しにすることはできないという話になったそうだ。かといって、こちらが保護するわけではなく、一度、国に戻らせて様子を見るとのことになった。その間は精霊にベルベッタ様の様子を見てもらい、処刑されるとまでなるのであれば、ベルベッタ様の実家に働きかけることになった。

 ベルベッタ様のご両親は本当はグロールと同じようにベルベッタ様も除籍しようか迷っていたそうだ。でも、彼女は女性であり、まだ若い。グロールのように独り立ちさせることは難しいし、若返りの水を飲んでいたことでできた子供らしく、強く出れなかったとのことだった。

「どうして若返りの水を飲んで子供ができてしまったんでしょう。そんな効果があるんでしょうか」
「いや、なんというか、気持ちが盛り上がってしまったのかもしれないね」
「気持ちが盛り上がると、子供ができるのですか? 精霊が運んでくるものだと聞いていました」
「ええぇ。あぁ、うん。そうだね。僕はそんなリーンが好きだよ」
「ど、どういうことですか!? 実際は違うということですか?」

 好きだと言われたことに胸がドキドキはしたものの、恋愛感情ではなく人としての好きだと気がついたわたしは、ラファに説明を求めた。でも、ラファは優しく微笑むだけで教えてくれなかった。

 次の日、勉強を教えてくれている先生にその話をしてみたところ、先生はラファと同じように優しい笑みを浮かべてわたしを見つめた。

「リーン様が一人で暮らすようになったのは8歳でしたわね。お姉さまももう少し大きくなったら教えようと思っておられたのでしょう」

 そう言って、先生は子どもの作り方というものを説明してくれたのだった。


******


 普通の貴族は結婚したら、夫と同じ寝室で眠るものらしい。結婚して初めて迎える日の夜に、子供を作るをするらしい。言葉で説明されただけでは、いまいちどんなことをするのかわからない。でも、嬉しいとか、恥ずかしい、怖いだとか痛い、嫌だなど、人によって違う感情が生まれてくるものらしい。

 先生は相手にもよると言っていたけれど、わたしはラファのことは好きなので、きっと、嫌だという気持ちにはならないと思う。

 先生に、ラファがわたしと寝室を共にしないのは、わたしを嫌っているからなのかと聞いてみたら、それは逆だと言った。ラファはわたしを大事にしてくれているから、今も寝室は別々なのだと言う。結局、わたしは自分がどうすれば良いのかわからなくて、夕食後に王妃陛下に相談してみた。

「そんなことだろうと思ったわ」

 話を聞いた王妃陛下は微笑して続ける。

「まだ、ラファが国王になってもいないんだから、跡継ぎ問題を話す人はいないわ。私個人的に孫は見たいけれど、今はそれどころじゃないということをわかっているしね」

 王妃陛下はわたしの頬に優しく触れる。

「まずは、あなたは自分の笑顔を取り戻せるくらいに幸せにならないとね」
「ラファと夜を共にすることで幸せにならないんでしょうか」
「それは私にはわからないわ。あなた次第ね」
「……王妃陛下は幸せでしたか?」
「え! ええっ!?」

 王妃陛下は白い頬をピンク色に染めて答える。

「私は元々公爵令嬢だったし、セイル……、あなたにとって義理の父ね。セイルと私は幼馴染だったの。だから、恋愛結婚なのよ。参考にならないわ」
「……恋愛結婚なら幸せですよね」
「そうじゃなくても、夫婦生活をして心を通わせていく人もいるわ。あなたたちはあなたたちのペースで進みなさい」
「ありがとうございます」

 自室に戻ると、書き物机の上に白い紙が置いてあった。ここ最近、精霊と筆談しているので、精霊からのメッセージだとわかった。
 そこには可愛らしい文字で『ラファはおくて。リーンがラファをすきなら、おしたおそう』と書かれていた。

 ……なんとなくだけど、こういう話は精霊の口から聞きたくなかったわね。




◆◇◆◇◆◇
(視点変更)

 城のすぐ近くにある屋外の訓練場で、グロールは何の非もない部下たちに激怒していた。

「リーンはまだ帰ってこないんですか!」
「……結婚したのであれば、もう帰って来ることはないのではないでしょうか」

 部下の一人が答えると、グロールはその男の頬を打った。

「リーンの話は聞いているんでしょう!? 彼女は病気も治せるようになったんです! エゲナ王国にとっては金の卵なんですよ! それなのに帰って来ることはないで済ませられるんですか!」

 グロールの勝手な言い分に、彼の部下たちは、あることを決意した。


 
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