21 / 26
20 わたしの幸せとは
しおりを挟む
ラファがベルベッタ様の件を陛下に相談した結果、やはり、見殺しにすることはできないという話になったそうだ。かといって、こちらが保護するわけではなく、一度、国に戻らせて様子を見るとのことになった。その間は精霊にベルベッタ様の様子を見てもらい、処刑されるとまでなるのであれば、ベルベッタ様の実家に働きかけることになった。
ベルベッタ様のご両親は本当はグロールと同じようにベルベッタ様も除籍しようか迷っていたそうだ。でも、彼女は女性であり、まだ若い。グロールのように独り立ちさせることは難しいし、若返りの水を飲んでいたことでできた子供らしく、強く出れなかったとのことだった。
「どうして若返りの水を飲んで子供ができてしまったんでしょう。そんな効果があるんでしょうか」
「いや、なんというか、気持ちが盛り上がってしまったのかもしれないね」
「気持ちが盛り上がると、子供ができるのですか? 精霊が運んでくるものだと聞いていました」
「ええぇ。あぁ、うん。そうだね。僕はそんなリーンが好きだよ」
「ど、どういうことですか!? 実際は違うということですか?」
好きだと言われたことに胸がドキドキはしたものの、恋愛感情ではなく人としての好きだと気がついたわたしは、ラファに説明を求めた。でも、ラファは優しく微笑むだけで教えてくれなかった。
次の日、勉強を教えてくれている先生にその話をしてみたところ、先生はラファと同じように優しい笑みを浮かべてわたしを見つめた。
「リーン様が一人で暮らすようになったのは8歳でしたわね。お姉さまももう少し大きくなったら教えようと思っておられたのでしょう」
そう言って、先生は子どもの作り方というものを説明してくれたのだった。
******
普通の貴族は結婚したら、夫と同じ寝室で眠るものらしい。結婚して初めて迎える日の夜に、子供を作る作業をするらしい。言葉で説明されただけでは、いまいちどんなことをするのかわからない。でも、嬉しいとか、恥ずかしい、怖いだとか痛い、嫌だなど、人によって違う感情が生まれてくるものらしい。
先生は相手にもよると言っていたけれど、わたしはラファのことは好きなので、きっと、嫌だという気持ちにはならないと思う。
先生に、ラファがわたしと寝室を共にしないのは、わたしを嫌っているからなのかと聞いてみたら、それは逆だと言った。ラファはわたしを大事にしてくれているから、今も寝室は別々なのだと言う。結局、わたしは自分がどうすれば良いのかわからなくて、夕食後に王妃陛下に相談してみた。
「そんなことだろうと思ったわ」
話を聞いた王妃陛下は微笑して続ける。
「まだ、ラファが国王になってもいないんだから、跡継ぎ問題を話す人はいないわ。私個人的に孫は見たいけれど、今はそれどころじゃないということをわかっているしね」
王妃陛下はわたしの頬に優しく触れる。
「まずは、あなたは自分の笑顔を取り戻せるくらいに幸せにならないとね」
「ラファと夜を共にすることで幸せにならないんでしょうか」
「それは私にはわからないわ。あなた次第ね」
「……王妃陛下は幸せでしたか?」
「え! ええっ!?」
王妃陛下は白い頬をピンク色に染めて答える。
「私は元々公爵令嬢だったし、セイル……、あなたにとって義理の父ね。セイルと私は幼馴染だったの。だから、恋愛結婚なのよ。参考にならないわ」
「……恋愛結婚なら幸せですよね」
「そうじゃなくても、夫婦生活をして心を通わせていく人もいるわ。あなたたちはあなたたちのペースで進みなさい」
「ありがとうございます」
自室に戻ると、書き物机の上に白い紙が置いてあった。ここ最近、精霊と筆談しているので、精霊からのメッセージだとわかった。
そこには可愛らしい文字で『ラファはおくて。リーンがラファをすきなら、おしたおそう』と書かれていた。
……なんとなくだけど、こういう話は精霊の口から聞きたくなかったわね。
◆◇◆◇◆◇
(視点変更)
城のすぐ近くにある屋外の訓練場で、グロールは何の非もない部下たちに激怒していた。
「リーンはまだ帰ってこないんですか!」
「……結婚したのであれば、もう帰って来ることはないのではないでしょうか」
部下の一人が答えると、グロールはその男の頬を打った。
「リーンの話は聞いているんでしょう!? 彼女は病気も治せるようになったんです! エゲナ王国にとっては金の卵なんですよ! それなのに帰って来ることはないで済ませられるんですか!」
グロールの勝手な言い分に、彼の部下たちは、あることを決意した。
ベルベッタ様のご両親は本当はグロールと同じようにベルベッタ様も除籍しようか迷っていたそうだ。でも、彼女は女性であり、まだ若い。グロールのように独り立ちさせることは難しいし、若返りの水を飲んでいたことでできた子供らしく、強く出れなかったとのことだった。
「どうして若返りの水を飲んで子供ができてしまったんでしょう。そんな効果があるんでしょうか」
「いや、なんというか、気持ちが盛り上がってしまったのかもしれないね」
「気持ちが盛り上がると、子供ができるのですか? 精霊が運んでくるものだと聞いていました」
「ええぇ。あぁ、うん。そうだね。僕はそんなリーンが好きだよ」
「ど、どういうことですか!? 実際は違うということですか?」
好きだと言われたことに胸がドキドキはしたものの、恋愛感情ではなく人としての好きだと気がついたわたしは、ラファに説明を求めた。でも、ラファは優しく微笑むだけで教えてくれなかった。
次の日、勉強を教えてくれている先生にその話をしてみたところ、先生はラファと同じように優しい笑みを浮かべてわたしを見つめた。
「リーン様が一人で暮らすようになったのは8歳でしたわね。お姉さまももう少し大きくなったら教えようと思っておられたのでしょう」
そう言って、先生は子どもの作り方というものを説明してくれたのだった。
******
普通の貴族は結婚したら、夫と同じ寝室で眠るものらしい。結婚して初めて迎える日の夜に、子供を作る作業をするらしい。言葉で説明されただけでは、いまいちどんなことをするのかわからない。でも、嬉しいとか、恥ずかしい、怖いだとか痛い、嫌だなど、人によって違う感情が生まれてくるものらしい。
先生は相手にもよると言っていたけれど、わたしはラファのことは好きなので、きっと、嫌だという気持ちにはならないと思う。
先生に、ラファがわたしと寝室を共にしないのは、わたしを嫌っているからなのかと聞いてみたら、それは逆だと言った。ラファはわたしを大事にしてくれているから、今も寝室は別々なのだと言う。結局、わたしは自分がどうすれば良いのかわからなくて、夕食後に王妃陛下に相談してみた。
「そんなことだろうと思ったわ」
話を聞いた王妃陛下は微笑して続ける。
「まだ、ラファが国王になってもいないんだから、跡継ぎ問題を話す人はいないわ。私個人的に孫は見たいけれど、今はそれどころじゃないということをわかっているしね」
王妃陛下はわたしの頬に優しく触れる。
「まずは、あなたは自分の笑顔を取り戻せるくらいに幸せにならないとね」
「ラファと夜を共にすることで幸せにならないんでしょうか」
「それは私にはわからないわ。あなた次第ね」
「……王妃陛下は幸せでしたか?」
「え! ええっ!?」
王妃陛下は白い頬をピンク色に染めて答える。
「私は元々公爵令嬢だったし、セイル……、あなたにとって義理の父ね。セイルと私は幼馴染だったの。だから、恋愛結婚なのよ。参考にならないわ」
「……恋愛結婚なら幸せですよね」
「そうじゃなくても、夫婦生活をして心を通わせていく人もいるわ。あなたたちはあなたたちのペースで進みなさい」
「ありがとうございます」
自室に戻ると、書き物机の上に白い紙が置いてあった。ここ最近、精霊と筆談しているので、精霊からのメッセージだとわかった。
そこには可愛らしい文字で『ラファはおくて。リーンがラファをすきなら、おしたおそう』と書かれていた。
……なんとなくだけど、こういう話は精霊の口から聞きたくなかったわね。
◆◇◆◇◆◇
(視点変更)
城のすぐ近くにある屋外の訓練場で、グロールは何の非もない部下たちに激怒していた。
「リーンはまだ帰ってこないんですか!」
「……結婚したのであれば、もう帰って来ることはないのではないでしょうか」
部下の一人が答えると、グロールはその男の頬を打った。
「リーンの話は聞いているんでしょう!? 彼女は病気も治せるようになったんです! エゲナ王国にとっては金の卵なんですよ! それなのに帰って来ることはないで済ませられるんですか!」
グロールの勝手な言い分に、彼の部下たちは、あることを決意した。
1,160
お気に入りに追加
2,115
あなたにおすすめの小説
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】仕方がないので結婚しましょう
七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』
アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。
そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。
アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。
そして、その度に正論で打ちのめされてきた。
本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。
果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!?
*高低差がかなりあるお話です
*小説家になろうでも掲載しています
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる