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33 ノヌル公爵の目的②(視点変更あり)
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マゼッタ様との話を終えた私たちがシュティル様の部屋に向かうと、メイド長のヨーナが近づいてきて「ご報告があります」と言った。
シュティル様も知っていることだというので、そのまま話を聞くと、ノヌル公爵が私たちがいない間にシュティル様を訪ねてきたということを教えてくれた。
「やはり動いてきたか」
「ローク殿下は、やはりそこまで派手な動きはしてきませんでしたわね」
私たちの動きがチェックされていることには気がついていた。
ローク殿下は性格が悪く偉そうにしているだけで、剣の腕は大したものではない。
それに今、この場にはトラブレル王国の陛下もいらっしゃっているので、下手な動きはできないはずだ。
だから、ローク殿下が私たちがいない間にシュティル様を訪ねてくる可能性はほとんどないと考えていた。
万が一あったとしても、無理やりシュティル様に会おうとするような目立つことをするとは思えなかった。
ノヌル公爵も公爵として、ある程度の剣のたしなみはあるけれど、騎士ほどの強さではないし、年齢のせいで体力も落ちている。
そのため、力勝負になったとしても現役の騎士が負けるわけがない。
城内では私とルラン様、もしくは他の側近たちがノヌル公爵をシュティル様に近づけないようにしているけれど、今回はその人数が少ない。
だから、ルラン様が近くにないという時を狙ってくるだろうということは予想はできていた。
だから、騎士には無理に部屋に入ろうとする場合は、力で止めて良いと伝えてあった。
それで何か文句を言われようとも、ノヌル公爵が相手であれば国に帰ってからトッテム公爵家に判断してもらい、ノヌル公爵を処分してもらうつもりだった。
「相手も思っていたより馬鹿じゃないってことでしょうか」
「一応、政務を任されているんだ。俺たちの罠に気がついたのかもしれない」
私とルラン様が部屋の隅で話をしていると、シュティル様が声を掛けてくる。
「ルラナ、聞いてもいいかな」
「どのようなことでしょうか」
「ノヌルこうしゃくは、ぼくをどうしたいの? ぼくのことがきらいだから、いやなことをしようとしているのかな」
私とルラン様がベッドの上に座っているシュティル様に近づいていくと、眉尻を下げてそう尋ねてきた。
すると、ルラン様が尋ね返す。
「お答えする前に陛下に聞いておきたいことがございます」
「なに?」
「もし、ノヌル公爵が嫌なことをしようとしている場合、陛下はどうされるおつもりですか」
6歳の子供に判断させるには難しすぎると思い、ルラン様を止めようと口を開こうとした時、それに気がついたシュティル様がわたしのほうに手を伸ばして制した。
「ノヌルこうしゃくが、ぼくのことをきらっているとするなら悲しい。でも、ぼくの立場は、にくまれてもおかしくない立場だってわかっている。だから、きらっているだけなら何もしない。でも、シュテーダムの国民にわるさをしようとしているのであれば、ばつを与える」
「シュテーダムの国民だけでなく、陛下に危害を加えようとした場合はどうされますか」
「国家はんぎゃくとみなし、げんばつにしょす」
シュティル様は唇をきつく結んだあと、6歳児らしからぬ厳しい表情で答えた。
*****
その頃、イーノ国の王城のとある一室に、ロークとノヌル公爵、そしてマゼッタが集まっていた。
「ノヌル公爵、それからローク殿下、夫の葬儀を利用して、シュティルをシュテーダムの城から出してどうするつもりだったの」
マゼッタが冷たい声で問うと、ノヌル公爵が答える。
「シュティル様は国王には向いておりません。シュテーダムはこのままでは、他国に守られるだけの弱い国になってしまいます。シュテーダムも武力を持ち、他国に恐れられるような存在になるべきなのです」
「そのために、まずはロラルグリラ王国に統合してしまおうと思う」
ノヌル公爵の言葉を継いだロークは、マゼッタに微笑む。
「あなたは、シュティル陛下が憎い。協力してくださりますよね」
「イーノ王国はどうなるの。そんなことをされたら、この国が危なくなるわ」
「ご安心ください。イーノ王国に手を出すことはいたしません。約束は守ります」
マゼッタはロークを冷たい目で見つめて頷いた。
シュティル様も知っていることだというので、そのまま話を聞くと、ノヌル公爵が私たちがいない間にシュティル様を訪ねてきたということを教えてくれた。
「やはり動いてきたか」
「ローク殿下は、やはりそこまで派手な動きはしてきませんでしたわね」
私たちの動きがチェックされていることには気がついていた。
ローク殿下は性格が悪く偉そうにしているだけで、剣の腕は大したものではない。
それに今、この場にはトラブレル王国の陛下もいらっしゃっているので、下手な動きはできないはずだ。
だから、ローク殿下が私たちがいない間にシュティル様を訪ねてくる可能性はほとんどないと考えていた。
万が一あったとしても、無理やりシュティル様に会おうとするような目立つことをするとは思えなかった。
ノヌル公爵も公爵として、ある程度の剣のたしなみはあるけれど、騎士ほどの強さではないし、年齢のせいで体力も落ちている。
そのため、力勝負になったとしても現役の騎士が負けるわけがない。
城内では私とルラン様、もしくは他の側近たちがノヌル公爵をシュティル様に近づけないようにしているけれど、今回はその人数が少ない。
だから、ルラン様が近くにないという時を狙ってくるだろうということは予想はできていた。
だから、騎士には無理に部屋に入ろうとする場合は、力で止めて良いと伝えてあった。
それで何か文句を言われようとも、ノヌル公爵が相手であれば国に帰ってからトッテム公爵家に判断してもらい、ノヌル公爵を処分してもらうつもりだった。
「相手も思っていたより馬鹿じゃないってことでしょうか」
「一応、政務を任されているんだ。俺たちの罠に気がついたのかもしれない」
私とルラン様が部屋の隅で話をしていると、シュティル様が声を掛けてくる。
「ルラナ、聞いてもいいかな」
「どのようなことでしょうか」
「ノヌルこうしゃくは、ぼくをどうしたいの? ぼくのことがきらいだから、いやなことをしようとしているのかな」
私とルラン様がベッドの上に座っているシュティル様に近づいていくと、眉尻を下げてそう尋ねてきた。
すると、ルラン様が尋ね返す。
「お答えする前に陛下に聞いておきたいことがございます」
「なに?」
「もし、ノヌル公爵が嫌なことをしようとしている場合、陛下はどうされるおつもりですか」
6歳の子供に判断させるには難しすぎると思い、ルラン様を止めようと口を開こうとした時、それに気がついたシュティル様がわたしのほうに手を伸ばして制した。
「ノヌルこうしゃくが、ぼくのことをきらっているとするなら悲しい。でも、ぼくの立場は、にくまれてもおかしくない立場だってわかっている。だから、きらっているだけなら何もしない。でも、シュテーダムの国民にわるさをしようとしているのであれば、ばつを与える」
「シュテーダムの国民だけでなく、陛下に危害を加えようとした場合はどうされますか」
「国家はんぎゃくとみなし、げんばつにしょす」
シュティル様は唇をきつく結んだあと、6歳児らしからぬ厳しい表情で答えた。
*****
その頃、イーノ国の王城のとある一室に、ロークとノヌル公爵、そしてマゼッタが集まっていた。
「ノヌル公爵、それからローク殿下、夫の葬儀を利用して、シュティルをシュテーダムの城から出してどうするつもりだったの」
マゼッタが冷たい声で問うと、ノヌル公爵が答える。
「シュティル様は国王には向いておりません。シュテーダムはこのままでは、他国に守られるだけの弱い国になってしまいます。シュテーダムも武力を持ち、他国に恐れられるような存在になるべきなのです」
「そのために、まずはロラルグリラ王国に統合してしまおうと思う」
ノヌル公爵の言葉を継いだロークは、マゼッタに微笑む。
「あなたは、シュティル陛下が憎い。協力してくださりますよね」
「イーノ王国はどうなるの。そんなことをされたら、この国が危なくなるわ」
「ご安心ください。イーノ王国に手を出すことはいたしません。約束は守ります」
マゼッタはロークを冷たい目で見つめて頷いた。
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