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29 祖母の考え

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 イーノ王国に出向く際に付いていくことになったのは、私やシュティル様と仲の良いメイド数人とルラン様と同僚、そして多くの騎士たちだった。

 そして、ノヌル公爵は故人と関わりがあったということで、個人的に招待されていて追悼式典には出席することになっていた。
 トッテム公爵家の調べは順調に進んでいると思われていたけれど、敵側も本格的に動こうとしているのか、とうとうトッテム公爵家側に犠牲者が出た。
 そのため、シュティル様を追悼式典の参加を辞退させてもらおうかという話になった。
 でも、シュティル様がそれを拒否した。
 お祖父様には悪い印象を持っておらず、直接、お別れを言いたいとおっしゃったからだ。
 
 お見舞いにも行かなかったことを後悔しているようで、そのことについては大人の事情で連れていけなかったのだとお伝えしたけれど納得はしてくれなかった。
 そして、マゼッタ様も苦言を呈してきた。

 孫が祖父の死を悲しまなくてどうするのかと言うのだ。

 悲しんでいるということをお伝えして、事情を説明し、代理人を出すことも提案したけれど、代理人は孫ではないと言われて許してはくれなかった。

 結果、各国の王家などが集まる追悼式典には参加せずに葬儀にだけ参加させてもらうということで妥協してもらえた。

 マゼッタ様曰く、イーノ王国に来てくれれば良いと言うのだ。
 その話を聞いた私は、ルラン様に尋ねてみた。

「マゼッタ様は何を考えておられるのでしょうか」
「さあな。良くないことを考えているのは確かだ。それから、故人はマゼッタ様宛に手紙を残されていたらしい。そこに書かれていた内容によっても変わってくるが、それについてはマゼッタ様しか見ていないから内容は見当もつかない」
「先代のイーノ王国の国王陛下はどんな方だったのでしょう」
「俺も噂でしか詳しくは知らないが、とてもお優しい御方だったらしい。だから、厳しい判断ができるマゼッタ様と夫婦になったのではないかとも噂されている」
「バランスを保たれたということですね」

 今までマゼッタ様がどのようなことをされてきたのかは勉強不足のため、詳しいことはわからない。
 でも、イーノ王国の先代の国王陛下が指揮していたものがマゼッタ様の考えだったのだとしたら、功績は大きいのだと思う。
 戦争を起こすきっかけを作ったのはマゼッタ様の可能性が高いから、素直に褒められたことではないけれど、別物として考えれば評価はできる。
 もし、シュティル様のお母様が処刑されずにシュティル様が殺されていたとしたら、シュテーダム王国は今頃はどうなっていたのかしら。
 ロラルグリラの思惑通りに、ロラルグリラの国の一部として取り込まれていたんだろうか。

 イーノ王国に向かう準備をしながら、私はそんなことを思った。
 
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