30 / 40
29 祖母の考え
しおりを挟む
イーノ王国に出向く際に付いていくことになったのは、私やシュティル様と仲の良いメイド数人とルラン様と同僚、そして多くの騎士たちだった。
そして、ノヌル公爵は故人と関わりがあったということで、個人的に招待されていて追悼式典には出席することになっていた。
トッテム公爵家の調べは順調に進んでいると思われていたけれど、敵側も本格的に動こうとしているのか、とうとうトッテム公爵家側に犠牲者が出た。
そのため、シュティル様を追悼式典の参加を辞退させてもらおうかという話になった。
でも、シュティル様がそれを拒否した。
お祖父様には悪い印象を持っておらず、直接、お別れを言いたいとおっしゃったからだ。
お見舞いにも行かなかったことを後悔しているようで、そのことについては大人の事情で連れていけなかったのだとお伝えしたけれど納得はしてくれなかった。
そして、マゼッタ様も苦言を呈してきた。
孫が祖父の死を悲しまなくてどうするのかと言うのだ。
悲しんでいるということをお伝えして、事情を説明し、代理人を出すことも提案したけれど、代理人は孫ではないと言われて許してはくれなかった。
結果、各国の王家などが集まる追悼式典には参加せずに葬儀にだけ参加させてもらうということで妥協してもらえた。
マゼッタ様曰く、イーノ王国に来てくれれば良いと言うのだ。
その話を聞いた私は、ルラン様に尋ねてみた。
「マゼッタ様は何を考えておられるのでしょうか」
「さあな。良くないことを考えているのは確かだ。それから、故人はマゼッタ様宛に手紙を残されていたらしい。そこに書かれていた内容によっても変わってくるが、それについてはマゼッタ様しか見ていないから内容は見当もつかない」
「先代のイーノ王国の国王陛下はどんな方だったのでしょう」
「俺も噂でしか詳しくは知らないが、とてもお優しい御方だったらしい。だから、厳しい判断ができるマゼッタ様と夫婦になったのではないかとも噂されている」
「バランスを保たれたということですね」
今までマゼッタ様がどのようなことをされてきたのかは勉強不足のため、詳しいことはわからない。
でも、イーノ王国の先代の国王陛下が指揮していたものがマゼッタ様の考えだったのだとしたら、功績は大きいのだと思う。
戦争を起こすきっかけを作ったのはマゼッタ様の可能性が高いから、素直に褒められたことではないけれど、別物として考えれば評価はできる。
もし、シュティル様のお母様が処刑されずにシュティル様が殺されていたとしたら、シュテーダム王国は今頃はどうなっていたのかしら。
ロラルグリラの思惑通りに、ロラルグリラの国の一部として取り込まれていたんだろうか。
イーノ王国に向かう準備をしながら、私はそんなことを思った。
そして、ノヌル公爵は故人と関わりがあったということで、個人的に招待されていて追悼式典には出席することになっていた。
トッテム公爵家の調べは順調に進んでいると思われていたけれど、敵側も本格的に動こうとしているのか、とうとうトッテム公爵家側に犠牲者が出た。
そのため、シュティル様を追悼式典の参加を辞退させてもらおうかという話になった。
でも、シュティル様がそれを拒否した。
お祖父様には悪い印象を持っておらず、直接、お別れを言いたいとおっしゃったからだ。
お見舞いにも行かなかったことを後悔しているようで、そのことについては大人の事情で連れていけなかったのだとお伝えしたけれど納得はしてくれなかった。
そして、マゼッタ様も苦言を呈してきた。
孫が祖父の死を悲しまなくてどうするのかと言うのだ。
悲しんでいるということをお伝えして、事情を説明し、代理人を出すことも提案したけれど、代理人は孫ではないと言われて許してはくれなかった。
結果、各国の王家などが集まる追悼式典には参加せずに葬儀にだけ参加させてもらうということで妥協してもらえた。
マゼッタ様曰く、イーノ王国に来てくれれば良いと言うのだ。
その話を聞いた私は、ルラン様に尋ねてみた。
「マゼッタ様は何を考えておられるのでしょうか」
「さあな。良くないことを考えているのは確かだ。それから、故人はマゼッタ様宛に手紙を残されていたらしい。そこに書かれていた内容によっても変わってくるが、それについてはマゼッタ様しか見ていないから内容は見当もつかない」
「先代のイーノ王国の国王陛下はどんな方だったのでしょう」
「俺も噂でしか詳しくは知らないが、とてもお優しい御方だったらしい。だから、厳しい判断ができるマゼッタ様と夫婦になったのではないかとも噂されている」
「バランスを保たれたということですね」
今までマゼッタ様がどのようなことをされてきたのかは勉強不足のため、詳しいことはわからない。
でも、イーノ王国の先代の国王陛下が指揮していたものがマゼッタ様の考えだったのだとしたら、功績は大きいのだと思う。
戦争を起こすきっかけを作ったのはマゼッタ様の可能性が高いから、素直に褒められたことではないけれど、別物として考えれば評価はできる。
もし、シュティル様のお母様が処刑されずにシュティル様が殺されていたとしたら、シュテーダム王国は今頃はどうなっていたのかしら。
ロラルグリラの思惑通りに、ロラルグリラの国の一部として取り込まれていたんだろうか。
イーノ王国に向かう準備をしながら、私はそんなことを思った。
61
お気に入りに追加
1,493
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件
さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。
婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。
でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける
プレゼントを渡したいんだ。
それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ?
甘いものが好きらしいんだよ
それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
婚約破棄されたので、被害者ぶってみたら国が滅びた
ひよこ1号
恋愛
とある学園の卒業パーティーで行われる断罪劇。
その動きを事前に察知した公爵令嬢クローディアは、ギャクハーエンドなるものを目指していた男爵令嬢マリアンヌの様に、被害者ぶって反撃を開始する。
学内の大掃除のつもりが、どんどん事態は大きくなって……?
***
全五話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる