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24 とある日の中庭での出来事②

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 王城の敷地はとても広く、広大な庭には芝生に囲まれた池もある。
 シュティル様は遊び疲れたあとは、池の畔でマオと一緒にお昼寝することが好きだった。

 今日も飛んでいる虫を追いかけたり、珍しい草花を見つけては私に花の名前を教えてくれたりして、無邪気な笑顔を見せてくれた。
 草花の名前を覚えるようにしているのは、毒を持っている可能性があるので、間違って触れたりしないようにするためだそうだ。
 でも、城の敷地内にそんな危険な植物が見つかれば、すぐに庭師が引き抜いてしまっているので、ここではあまり役に立たないようだった。

 走り回ったあとは、池の畔にシートを敷いてもらい、私とシュティル様が座ると、メイドたちがお茶を淹れてくれ、持ってきたお茶菓子を用意してくれた。

「なにを食べようかなあ」
  
 毒味済みのお茶菓子を見つめて、シュティル様は目をキラキラさせる。

「食べきれなかったものは持ち帰れば良いのですから、無理に食べようとなさらないでくださいね」
「うん! ラナリーもいっしょに食べよう! ラナリーはなにがすき?」
「私はシュティル様が美味しいものを食べて、幸せそうにされているお顔が好きです」
「ちがうよ! おかしのこと! でも、ありがとう」

 えへへと頬を緩めるシュティル様はとっても可愛い。
 こんなに可愛いシュティル様を目のあたりにしていたのでしょうに、エーラ様は何とも思わなかったのかしら。

 小さく息を吐くと、シュティル様が不安そうな顔をする。

「ラナリー、体調がわるいの?」
「いいえ。ご心配をおかけしたようで申し訳ございません。ラナリーは元気ですよ」
「ならいいけど。もし、先におかしをえらびたいんなら、ちゃんと教えてね」
「ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきますわね」

 微笑んで見せると、シュティル様は満足そうに頷いてから、お菓子を選び始めた。

 その様子を温かい目で見守っていた時だった。
 ユリアス邸のフットマンが騎士たちに連れられて、こちらに向かってくるのが見えた。

 私よりも早く、そのことに気がついていたルラン様はシュティル様に言う。

「陛下、この場を動く許可を頂いてもよろしいでしょうか」
「うむ! かまわぬ!」
  
 キリリとした表情を作って許可を出すシュティル様に癒やされつつも、フットマンが何をしに来たのかが気になった。

 ルラン様はかなり離れた場所でフットマンと話を始めた。

 でも、すぐにこちらへ戻ってきて、シュティル様にお伺いを立てる。

「申し訳ございません、陛下。少しだけラナリーをお借りしてもよろしいでしょうか」
「もちろんだよ」
「では、シュティル様、少しの間失礼します」
 
 軽く頭を下げてから立ち上がり、シュティル様から少し離れたところまで移動すると、ルラン様が口を開く。

「君の姉が捕まった」
「……はい?」

 予想もしていなかった話を聞いて、声が裏返ってしまった。
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