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23 とある日の中庭での出来事①
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祝賀会が終わってから、30日程経った。
今のところは、ロラルグリラからは何の連絡もなく、平穏な日々を過ごしていた。
子猫の成長とは早いもので小さかったマオも気がつけば大きくなってきて、シュティル様が抱っこするのも大変になってきた。
マオは相変わらず、私のことをあまり好きじゃないようで、毛を逆立てて威嚇してくる時はある。
でも、機嫌が良い時は触らせてくれるようになってきたので、多少の歩み寄りは見せてくれているのが嬉しい。
エーラ様は世話係を解任されたあとは、お父様の望み通りなのかはわからないけれど、家で大人しくしているんだそうだ。
もしくは父親があれだけ私に偉そうに言ったのだから、そうせざるを得ないといったところかもしれない。
でも、彼女がこのまま大人しくしているとも思えない。
昼食を終えてすぐ、シュティル様が笑顔で話しかけてきた。
「ルラナ、今日は良い天気だから外でさんぽしたい!」
「では、外国語の授業が終わったら一緒に散歩に出かけましょうね」
「うん。がんばる!」
6歳になったシュティル様は可愛らしさはそのままだけれど、マゼッタ様たちに少しでも認めてもらおうと、勉強やスピーチの練習などを毎日頑張っている。
でも、やはりまだ子供だからか、外で体を動かしたいようだった。
私も小さい頃はやんちゃだったらしいけれど、今となっては体術の練習で疲れ果ててしまうし、外で遊び回る元気などない。
これも若さなのかしら、なんて思ってしまう。
ルラン様に話を聞いてみたところ、シュティル様は王城の敷地内から一度も外に出たことがないらしい。
エーラ様のように逆恨みをしている貴族がいて、国内でさえ危険なのだという。
わかっていて捕まえられないのは、相手がその感情を表に見せておらず、何か実行に移したわけでもないからだという。
疑わしいだけでは捕まえられないのだそうだ。
シュティル様が外国語の先生から勉強を教えてもらっている間、私とルラン様はシュティル様と先生から目を離さないようにして、部屋の隅で会話をする。
「シュティル様を外に出してあげることは難しいんでしょうか」
「まあな。いくら、俺たちがいるとはいえ万が一ということもある。それにもし、危険な目に遭ったら、マゼッタ様やエーラ嬢以外の人にも自分は恨まれているのだとショックを受けられる可能性がある。それが一番怖い」
「もう少し成長されれば、全ての人に好かれるわけではないと理解されるのでしょうけれど、今のシュティル様の御心は真っ白な状態ですから向けられる敵意が恐ろしくてしょうがないのでしょうね」
気持ちはわかる。
割り切れていると思っている私でさえ、悪意をぶつけられたら傷つくし、嫌な気分になる。
だけど、それを引きずらないのが大人であって、シュティル様にはその割り切りができない。
それを察してあげるのも大人だと思うんだけど、心の狭い大人が多すぎるわ。
「陛下、今日のところはこれで終わりにいたしましょう」
先生にそう告げられたシュティル様は笑顔で、私たちのほうを振り返って言う。
「ルラナ! さんぽしに行こう!」
「では、準備をしましょう」
「お待ちください。お片付けをしてからです」
ルラン様の言葉を遮って言うと、シュティル様は慌てて机の上を片付け始めた。
今のところは、ロラルグリラからは何の連絡もなく、平穏な日々を過ごしていた。
子猫の成長とは早いもので小さかったマオも気がつけば大きくなってきて、シュティル様が抱っこするのも大変になってきた。
マオは相変わらず、私のことをあまり好きじゃないようで、毛を逆立てて威嚇してくる時はある。
でも、機嫌が良い時は触らせてくれるようになってきたので、多少の歩み寄りは見せてくれているのが嬉しい。
エーラ様は世話係を解任されたあとは、お父様の望み通りなのかはわからないけれど、家で大人しくしているんだそうだ。
もしくは父親があれだけ私に偉そうに言ったのだから、そうせざるを得ないといったところかもしれない。
でも、彼女がこのまま大人しくしているとも思えない。
昼食を終えてすぐ、シュティル様が笑顔で話しかけてきた。
「ルラナ、今日は良い天気だから外でさんぽしたい!」
「では、外国語の授業が終わったら一緒に散歩に出かけましょうね」
「うん。がんばる!」
6歳になったシュティル様は可愛らしさはそのままだけれど、マゼッタ様たちに少しでも認めてもらおうと、勉強やスピーチの練習などを毎日頑張っている。
でも、やはりまだ子供だからか、外で体を動かしたいようだった。
私も小さい頃はやんちゃだったらしいけれど、今となっては体術の練習で疲れ果ててしまうし、外で遊び回る元気などない。
これも若さなのかしら、なんて思ってしまう。
ルラン様に話を聞いてみたところ、シュティル様は王城の敷地内から一度も外に出たことがないらしい。
エーラ様のように逆恨みをしている貴族がいて、国内でさえ危険なのだという。
わかっていて捕まえられないのは、相手がその感情を表に見せておらず、何か実行に移したわけでもないからだという。
疑わしいだけでは捕まえられないのだそうだ。
シュティル様が外国語の先生から勉強を教えてもらっている間、私とルラン様はシュティル様と先生から目を離さないようにして、部屋の隅で会話をする。
「シュティル様を外に出してあげることは難しいんでしょうか」
「まあな。いくら、俺たちがいるとはいえ万が一ということもある。それにもし、危険な目に遭ったら、マゼッタ様やエーラ嬢以外の人にも自分は恨まれているのだとショックを受けられる可能性がある。それが一番怖い」
「もう少し成長されれば、全ての人に好かれるわけではないと理解されるのでしょうけれど、今のシュティル様の御心は真っ白な状態ですから向けられる敵意が恐ろしくてしょうがないのでしょうね」
気持ちはわかる。
割り切れていると思っている私でさえ、悪意をぶつけられたら傷つくし、嫌な気分になる。
だけど、それを引きずらないのが大人であって、シュティル様にはその割り切りができない。
それを察してあげるのも大人だと思うんだけど、心の狭い大人が多すぎるわ。
「陛下、今日のところはこれで終わりにいたしましょう」
先生にそう告げられたシュティル様は笑顔で、私たちのほうを振り返って言う。
「ルラナ! さんぽしに行こう!」
「では、準備をしましょう」
「お待ちください。お片付けをしてからです」
ルラン様の言葉を遮って言うと、シュティル様は慌てて机の上を片付け始めた。
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