縁あって国王陛下のお世話係になりました

風見ゆうみ

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22 陛下のお願い

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 会場に戻ればローク殿下がうるさそうなので、私とルラン様は裏にいたまま時間を潰し、祝賀会を終えた。

 シュティル様はまだ子供だから、昼のパーティーだけだったので、誕生日パーティーも兼ねてシュティル様と仲の良い人たちだけで夕食をとることになった。

 ルラン様や私もプレゼントを用意していたので、この時にお渡しした。

 シュティル殿下は可愛いものが好きなのだけど、普段は我慢している。

 でも、プライベートな場面では別に無理に隠す必要もないと思ったので、私からのプレゼントは可愛いものにした。

「これはシュティル様のお部屋の外には持ち出さないようにしてくださいね」
「うん!」
  
 大きく頷いて、シュティル様はプレゼントの包みを破き、出てきたものを見て目を輝かせる。

「マオにそっくり!」

 シュティル様にプレゼントしたのは黒い猫のぬいぐるみだった。

 シュティル様にぬいぐるみを与えることを嫌がる貴族もいる。
 でも、普段はマオでさえも一緒にベッドで寝ることを許されていないから、寂しそうにされているシュティル様を見ると辛かった。

 この年頃の子供なら、一人じゃなく誰かと一緒に寝ていることが多いと思う。

 眠るまでは私やメイドが一緒にいたとしても、目を覚ました時に一人の時もあるでしょう。
 だから今は、このぬいぐるみで少しでも寂しさを紛らわせてもらえればと思った。
 
 ぬいぐるみも、もう少し成長すれば、自分からいらないと思うようになるだろうから。

「ありがとう、ラナリー!」

 シュティル様は成猫の等身大くらいの大きさのぬいぐるみを抱きしめて、満面の笑みを浮かべてくれた。

 それから約1時間後、デザートを食べ終えたシュティル様が眠そうな顔になってきたので、今日のところはメイドに任せて、私たちは帰ることになった。

「今日は本当につかれた」

 シュティル様は呟いたあと、私とルラン様を見上げる。

「ルラン、ラナリー、すてきな誕生日にしてくれてありがとう」
「こちらこそ、シュティル様のお誕生日をお祝いさせていただき、ありがとうございました」

 私とルラン様が礼を言うと、シュティル様がもじもじし始めた。

 こういう時は何か言いたいことがあるけれど、言っても良いか迷っている時だ。

「陛下、どうされましたか?」

 ルラン様が尋ねると、シュティル様は申し訳無さそうにしながらも口を開く。

「あの、失礼なことをおねがいしてもいい?」
「どんなことでしょう」
「ルランとラナリーを同時に呼ぶ時は、ルラナってよんでもいい?」

 予想外のお願いに私とルラン様は顔を見合わせた。

 ルラン、ラナリー、と呼ぶよりもルラナと呼んだほうが口にする言葉は少ないということよね。

「私はかまいません」
「私もです。問題はラナリーが反応できるかだな」
「だいじょうぶ。イントネーションを変えるから!」
 
 両手を握りしめて言うシュティル様に笑顔で頷く。

「では、二人同時に御用がある時はルラナとお呼びくださいね」
「ありがとう、ルラナ!」

 この時の私たちは、まさか、この呼び方がシュティル様の命を救うことになるだなんて思ってもいなかった。
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