22 / 40
21 祝賀会当日⑥
しおりを挟む
「おい、ラナリー。いつまで意地を張るつもりなんだ。お前が結婚した相手が誰だかわかっていないのか?」
「わかっておりますわ。ルラン・ユリアス様です」
「なら、自分の言っていることがおかしいことはわかるだろう」
ローク殿下はルラン様が目の前にいるのに、まったく気にした様子はない。
すると、お兄様がローク殿下に話しかけた。
「ローク殿下、こちらでお会いすることができて光栄です」
「ああ、レヴか。長らく顔を見ていなかったが元気そうだな」
「元気にやっております。ところで、殿下、お話したいことがございます。少しだけお時間をいただけないでしょうか」
「今は駄目だ。ラナリーとの話が終わってからにしてくれ」
「話は終わりましたわ。ごゆっくりどうぞ」
お兄様が助けてくださったのだとわかって、私とルラン様は素早くローク殿下から離れようとした。
「おい、ラナリー! 俺の言うことを聞かないなんて無礼じゃないのか!?」
すかさずローク殿下が文句を言ってきたけれど、ルラン様が間に入ってくれる。
「夫の前で堂々と妻を口説こうとする殿下もマナーが良いとは思えませんが」
周りの目を気にしたのか、ローク殿下は周りを見回し、自分たちに視線が集まっていることに気づくと笑顔を作る。
「気分を悪くさせたのなら謝ろう。ただ、それだけ君の妻が魅力的だったからだと思って許してくれ」
私に利用価値があると思っているから、そんなことを言っているのだということが見え見えで、呆れてため息が出そうになった。
「では、失礼いたします」
ルラン様はローク殿下の言葉には応えることなく、私を促して歩き出す。
「ラナリー、陛下のところに行こう。そのほうが色々と楽だ」
「そうですわね」
シュティル様は今頃は裏でお着替えをされている最中で、準備ができれば壇上にある席に座り、招待客からの贈り物をもらう段取りになっている。
壇上に出てしまっては、またしばらくお話ができなくなるので、急いでシュティル様の所へ向かった。
私たちが着いた時にはお着替えが終わっていて、シュティル様は今度は白のスーツを着ていた。
白い蝶ネクタイがとても似合っていて可愛らしい。
「ラナリー! ちゃんと話せたよ!」
シュティル様は私たちに気づくと、ぱたぱたと駆け寄ってきて、キラキラした瞳で褒めてと言わんばかりに見上げてくる。
「存じ上げております。とてもご立派でしたよ」
「ありがとう! ルランはどうだった?」
「とても良いスピーチでございました」
ルラン様に褒めてもらうと、シュティル様は白い頬をピンク色に染めて、満足そうに微笑んだ。
シュティル様は照れるとすぐに頬が赤くなるのでわかりやすくて、とても可愛い。
でも、こんな風に頬を赤くしてしまうことを好まない貴族がいるのも確かだ。
成長していけば気持ちもコントロールできるようになってくるだろうし、 こんな小さな内から感情を殺せだなんて、私には言えなかった。
「ラナリー、ルラン、しゅくがかいが終わったら、ぼくの部屋にきてくれない?」
「かまいませんが」
私が代表して答えると、シュティル様は嬉しそうに笑う。
「いつもぼくのお世話をしてくれる人だけよんで、おたんじょうび会をするんだ。良かったら、ふたりにも来てほしいな」
「もちろん参加させていただきます」
食い気味に言うと、シュティル様はまた笑ってくれた。
「陛下、そろそろお時間です」
「じゃあ、またあとでね!」
メイドに声を掛けられたシュティル様は、私とルラン様に手を振って走っていく。
その姿を見ながら、ルラン様が話しかけてくる。
「俺は何があっても陛下にお仕えするつもりだ」
「私もですわ。ロラルグリラの望むようにはさせません」
先程のローク殿下のことを思い出し、改めて気持ちを引き締めた。
「わかっておりますわ。ルラン・ユリアス様です」
「なら、自分の言っていることがおかしいことはわかるだろう」
ローク殿下はルラン様が目の前にいるのに、まったく気にした様子はない。
すると、お兄様がローク殿下に話しかけた。
「ローク殿下、こちらでお会いすることができて光栄です」
「ああ、レヴか。長らく顔を見ていなかったが元気そうだな」
「元気にやっております。ところで、殿下、お話したいことがございます。少しだけお時間をいただけないでしょうか」
「今は駄目だ。ラナリーとの話が終わってからにしてくれ」
「話は終わりましたわ。ごゆっくりどうぞ」
お兄様が助けてくださったのだとわかって、私とルラン様は素早くローク殿下から離れようとした。
「おい、ラナリー! 俺の言うことを聞かないなんて無礼じゃないのか!?」
すかさずローク殿下が文句を言ってきたけれど、ルラン様が間に入ってくれる。
「夫の前で堂々と妻を口説こうとする殿下もマナーが良いとは思えませんが」
周りの目を気にしたのか、ローク殿下は周りを見回し、自分たちに視線が集まっていることに気づくと笑顔を作る。
「気分を悪くさせたのなら謝ろう。ただ、それだけ君の妻が魅力的だったからだと思って許してくれ」
私に利用価値があると思っているから、そんなことを言っているのだということが見え見えで、呆れてため息が出そうになった。
「では、失礼いたします」
ルラン様はローク殿下の言葉には応えることなく、私を促して歩き出す。
「ラナリー、陛下のところに行こう。そのほうが色々と楽だ」
「そうですわね」
シュティル様は今頃は裏でお着替えをされている最中で、準備ができれば壇上にある席に座り、招待客からの贈り物をもらう段取りになっている。
壇上に出てしまっては、またしばらくお話ができなくなるので、急いでシュティル様の所へ向かった。
私たちが着いた時にはお着替えが終わっていて、シュティル様は今度は白のスーツを着ていた。
白い蝶ネクタイがとても似合っていて可愛らしい。
「ラナリー! ちゃんと話せたよ!」
シュティル様は私たちに気づくと、ぱたぱたと駆け寄ってきて、キラキラした瞳で褒めてと言わんばかりに見上げてくる。
「存じ上げております。とてもご立派でしたよ」
「ありがとう! ルランはどうだった?」
「とても良いスピーチでございました」
ルラン様に褒めてもらうと、シュティル様は白い頬をピンク色に染めて、満足そうに微笑んだ。
シュティル様は照れるとすぐに頬が赤くなるのでわかりやすくて、とても可愛い。
でも、こんな風に頬を赤くしてしまうことを好まない貴族がいるのも確かだ。
成長していけば気持ちもコントロールできるようになってくるだろうし、 こんな小さな内から感情を殺せだなんて、私には言えなかった。
「ラナリー、ルラン、しゅくがかいが終わったら、ぼくの部屋にきてくれない?」
「かまいませんが」
私が代表して答えると、シュティル様は嬉しそうに笑う。
「いつもぼくのお世話をしてくれる人だけよんで、おたんじょうび会をするんだ。良かったら、ふたりにも来てほしいな」
「もちろん参加させていただきます」
食い気味に言うと、シュティル様はまた笑ってくれた。
「陛下、そろそろお時間です」
「じゃあ、またあとでね!」
メイドに声を掛けられたシュティル様は、私とルラン様に手を振って走っていく。
その姿を見ながら、ルラン様が話しかけてくる。
「俺は何があっても陛下にお仕えするつもりだ」
「私もですわ。ロラルグリラの望むようにはさせません」
先程のローク殿下のことを思い出し、改めて気持ちを引き締めた。
71
お気に入りに追加
1,494
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?
しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。
そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。
第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。
周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』

【完結】身勝手な婚約破棄をされたのですから復讐する道理はあるでしょう
asami
恋愛
ある王国には、美しく才気あふれる令嬢カリアナがいた。彼女は国王の息子であるフェリーゲルとの婚約が決まり、幸せな未来を夢見ていた。しかし、ある日、彼女はフェリーゲルが実は彼女を愛していないことを知り、婚約を破棄されてしまった。
その後、カリアナは妹のシャラロマーナとともに暮らすことになったが、彼女はセリリアにも騙され、国を追放されてしまった。シャラロマーナは、自分が裏切られたことに怒りを覚え、復讐を誓うのであった。

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる