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15 ノヌル公爵からの呼び出し②
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「エーラも言っていたが、本当に生意気な娘だ!」
ノヌル公爵にとっては、エーラ様よりも年下の私は娘扱いらしい。
良い意味ではなく、馬鹿にしているのだということはわかっている。
「生意気だとおっしゃるのでしたら、お詫びはいたします。申し訳ございません」
頭を下げて謝ったあとに、話を続ける。
「先程、私が言ったことについてのお答えをいただきたいのですが」
「女性ではないのかという話か? 女性に決まっているだろう! エーラの件は陛下のためだからしょうがない」
陛下のためという言葉に反応して、ルラン様がロヌス公爵にお願いしてくれる。
「陛下のためだとおっしゃるなら、ラナリーを陛下のお世話係にすることを認めてください」
「公爵家の仕事はどうするつもりだ?」
「私の父母はまだ健在ですよ。ラナリーが世話係の間は、母が公爵家の仕事をすることになります。それは今までと変わりません」
ルラン様が静かに答えると、ロヌス公爵は怒りを私にぶつけてくる。
「ラナリーと言ったな。公爵家の仕事を放りだして仕事に就こうとするのはおかしいだろう」
「お相手は陛下です。公爵家の仕事よりも陛下を優先するのは当たり前ではないでしょうか。少なくともユリアス公爵邸では、陛下よりも優先させなければならない仕事などありえません」
「口答えするところは、あの女と一緒だな」
「あの女とは誰のことでしょう。義母のことを言っておらるのですか」
「……私は何も言っていない」
ロヌス公爵は不機嫌そうに答えると、ルラン様を睨む。
「貴殿の父上に伝えてほしい。これ以上、勝手な真似はするなとな」
「伝えておきます。ですが、それはそのまま、あなたに父が返しそうな言葉でもあると思いますが?」
「とにかく帰って伝えるんだ。その態度を続けていれば後悔することになるとな」
吐き捨てるように言うと、私がお世話係を辞退しないとわかったからか、部屋を出ていってしまった。
「シュティル様を嫌っているエーラ様をわざわざ世話係にするだなんて、何か裏があるとしか思えませんわよね」
「ああ。陛下の近くにいれば色々と彼女の耳に入ることもあるだろうしな」
「ルラン様にお聞きしたいのですが」
「どうした」
出ていけとも言われなかったので、そう急ぐこともなく部屋を出て会話を続ける。
「トッテム公爵家のことを詳しく教えていただけませんか」
「詳しいことは母上から教わったんじゃないのか」
「知りたいのは表向きの話ではございません」
「わかった。邸に戻ってから話そう」
「ありがとうございます」
私たちはそのまま真っすぐ邸には帰らず、シュティル様の様子を見に戻った。
エーラ様は一瞬、嫌そうな顔をしたけれど、すぐに表情を無にした。
シュティル様はとても歓迎してくれたので、私たちはわざと帰る時間を遅らせた。
*****
そして数日後、私は無事にシュティル様の世話係として認められた。
シュティル様の誕生日祝賀会のあとに、エーラ様は解任されることに決まり、祝賀会のまでの残りの数日間は二人で仕事をすることになった。
祝賀会に招待されるメンバーは豪華な顔ぶれだ。
そして、世間一般的には当たり前のことかもしれないけれど、シュティル様を恨んでいる祖母、マゼッタ様の名前も招待客名簿にある。
嫌いな孫の祝賀会なら来なくても良いのにとも思う。
でも、わざとぶち壊しにくる可能性もある。
祝賀会の日は忙しくなりそうね。
マゼッタ様だけでなく、私の家族やローク殿下までもが祝賀会に来るのだから。
絶対に祝賀会は成功させてみせる。
水面下でどんなトラブルが起ころうとも、シュティル様の誕生日は素敵なものにしてみせるわ。
今からできるだけ対策をしておくことにした。
ノヌル公爵にとっては、エーラ様よりも年下の私は娘扱いらしい。
良い意味ではなく、馬鹿にしているのだということはわかっている。
「生意気だとおっしゃるのでしたら、お詫びはいたします。申し訳ございません」
頭を下げて謝ったあとに、話を続ける。
「先程、私が言ったことについてのお答えをいただきたいのですが」
「女性ではないのかという話か? 女性に決まっているだろう! エーラの件は陛下のためだからしょうがない」
陛下のためという言葉に反応して、ルラン様がロヌス公爵にお願いしてくれる。
「陛下のためだとおっしゃるなら、ラナリーを陛下のお世話係にすることを認めてください」
「公爵家の仕事はどうするつもりだ?」
「私の父母はまだ健在ですよ。ラナリーが世話係の間は、母が公爵家の仕事をすることになります。それは今までと変わりません」
ルラン様が静かに答えると、ロヌス公爵は怒りを私にぶつけてくる。
「ラナリーと言ったな。公爵家の仕事を放りだして仕事に就こうとするのはおかしいだろう」
「お相手は陛下です。公爵家の仕事よりも陛下を優先するのは当たり前ではないでしょうか。少なくともユリアス公爵邸では、陛下よりも優先させなければならない仕事などありえません」
「口答えするところは、あの女と一緒だな」
「あの女とは誰のことでしょう。義母のことを言っておらるのですか」
「……私は何も言っていない」
ロヌス公爵は不機嫌そうに答えると、ルラン様を睨む。
「貴殿の父上に伝えてほしい。これ以上、勝手な真似はするなとな」
「伝えておきます。ですが、それはそのまま、あなたに父が返しそうな言葉でもあると思いますが?」
「とにかく帰って伝えるんだ。その態度を続けていれば後悔することになるとな」
吐き捨てるように言うと、私がお世話係を辞退しないとわかったからか、部屋を出ていってしまった。
「シュティル様を嫌っているエーラ様をわざわざ世話係にするだなんて、何か裏があるとしか思えませんわよね」
「ああ。陛下の近くにいれば色々と彼女の耳に入ることもあるだろうしな」
「ルラン様にお聞きしたいのですが」
「どうした」
出ていけとも言われなかったので、そう急ぐこともなく部屋を出て会話を続ける。
「トッテム公爵家のことを詳しく教えていただけませんか」
「詳しいことは母上から教わったんじゃないのか」
「知りたいのは表向きの話ではございません」
「わかった。邸に戻ってから話そう」
「ありがとうございます」
私たちはそのまま真っすぐ邸には帰らず、シュティル様の様子を見に戻った。
エーラ様は一瞬、嫌そうな顔をしたけれど、すぐに表情を無にした。
シュティル様はとても歓迎してくれたので、私たちはわざと帰る時間を遅らせた。
*****
そして数日後、私は無事にシュティル様の世話係として認められた。
シュティル様の誕生日祝賀会のあとに、エーラ様は解任されることに決まり、祝賀会のまでの残りの数日間は二人で仕事をすることになった。
祝賀会に招待されるメンバーは豪華な顔ぶれだ。
そして、世間一般的には当たり前のことかもしれないけれど、シュティル様を恨んでいる祖母、マゼッタ様の名前も招待客名簿にある。
嫌いな孫の祝賀会なら来なくても良いのにとも思う。
でも、わざとぶち壊しにくる可能性もある。
祝賀会の日は忙しくなりそうね。
マゼッタ様だけでなく、私の家族やローク殿下までもが祝賀会に来るのだから。
絶対に祝賀会は成功させてみせる。
水面下でどんなトラブルが起ころうとも、シュティル様の誕生日は素敵なものにしてみせるわ。
今からできるだけ対策をしておくことにした。
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