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プロローグ

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 私が住んでいるロラルグリラ王国の新聞に、このような記事が掲載された。

『 我が国は悪事を企んでいたシュテーダム王国との戦争に勝ち、シュテーダムの国王と王妃を処刑した。
 二人の間には生まれたばかりの男児がいた。
 慈悲深い我が国の国王陛下は、その男児を殺すことはなく、シュテーダム王国が独立する際の王にするとして、その男児を生かすことにした。
 この決定に周辺国からは多くの批判が出た。
 それでも国王陛下は男児を殺さずに、シュテーダムの王家に繋がりの深い筆頭公爵家に世話を任せた。
 筆頭公爵家については、当時の当主と妻は処刑されたが、国王陛下の慈悲により他の家族は助けられ、現在はその息子が跡を継いでいる。
 そして、助けられた男児は幼いながらも、昨年、独立したシュテーダムの国王として崇められている。  』


 一言一句を正確に覚えているわけではなく、要約すると、こんな感じの内容だったと思う。

 その当時12歳だった私は、家族にこの記事を何度も読むように言われ、ここに書かれてあることが真実なのだと信じて疑わなかった。

「さすが我が国王陛下だ。普通なら、この子供も殺してしまうべきだというのに」
「私たちがラナリーを生かしているように、陛下も慈悲深い御方なのよ」

 お母様にそう言われたお父様は、私を一瞥してから頷いたのを覚えている。

「その通りだ。ラナリー、お前は我が公爵家のため、我が国王陛下のために生きるのだ。お前が王太子殿下の婚約者になるなんて、本当に夢のようなことなんだぞ」

 理由はわからないが、両親は普通の貴族よりも遥かに国王陛下に対しての忠誠心が強かった。

「ロラルグリラ王国は正義、シュテーダム王国は悪だ」

 私は両親にこう教えられて生きてきた。 

 けれど、ロラルグリラ王国内で伝えられている歴史は正しい歴史ではなかった。

 シュテーダム王国や他国の歴史書などでは、まったく違う事実がが記されていた。
 私が真実を知るのは、それから5年後のことだった。
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