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22. 邪神の使いの狙い
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「アッシュ! 大丈夫!? 何もされていない? フィーンドは邪神の使いだったのよ!」
何も知らないリリアナは、呆然としているアッシュの両腕をつかんで叫んだ。
「あ、ああ…。何かされる前にリリアナが来てくれたから…。本当にありがとう」
アッシュのどこか寂しげな笑顔を見て、リリアナは首を傾げる。
(何もなかった様には見えないんだけど…?)
「アッシュ、本当は何か言われたんじゃないの…?」
「言われた…けど、今は伝えられない。だけど必ず話すから、もう少しだけ待ってくれないか? 話しても良いのか確認しないと」
「それはもちろんかまわないわ。言いたくない事を無理に聞き出すつもりはないし。アッシュが無事なのが一番よ!」
リリアナが何度もアッシュの腕を軽く叩いて微笑むと、アッシュは安心した様に微笑んだ後、彼女に尋ねる。
「他の奴らは?」
「私を監視していた神官の姿が見当たらないから探しているわ」
「ああ。それでいつもなら部屋にいる神官長がいなかったんだな」
「そうみたいね。神官長の部屋に行っても神官長がいないから、トールが探して鍵をもらってきてくれたのよ」
「……悪かった」
「え? どうしたの?」
突然、謝られた為、リリアナが首を傾げると、アッシュは言う。
「先に鍵を持ってきていれば良かったな」
「別に気にしてないわよ。最終的に外に出してもらえたから。気にする人もいるかもしれないけれど、私は気にしないわ。それに、ちゃんと皆が改心してくれる事が一番よ。出来れば無駄な犠牲は出したくないもの」
リリアナが自分に気を遣って嘘をついている様には思えなかったので、アッシュは頷いて微笑む。
「そうだな。無駄な犠牲がないのが一番だ」
「フィーンドとは、今は言えない事以外に何も話はしていないの?」
「いや。そういえば、奴は自分の事を邪神の使いだと言ってた」
「……やっぱりそうなのね。タイミング良く現れるものだから、そうじゃないかと思ったのよ」
「気付いてたのか?」
「ええ。聖女様の日記に書かれていたの。邪神は聖女や聖騎士の心を惑わせて闇落ちさせようとしてくるって。しかも、今までの聖女様の前にも私に現れた時の様なタイミングで現れたらしいから」
「邪神の使いは聖女様達を闇落ちさせてどうするつもりなんだ?」
アッシュが不思議そうに聞き返すと、リリアナは少し考えてから答える。
「これは神様に聞いてみないとわからないんだけど、聖女や聖騎士が闇落ちすると、その分、神様の力が削がれるんじゃないかと考えたの。綺麗な心が悪に染まる事によって、神様は力を削がれて邪神には力になるんじゃないかしら?」
「だから奴らは危険を冒してでも、聖女や聖騎士に近付こうとするんのか?」
「…じゃないかしら。私の場合もそうだけど、味方のいない人間に対して理解者のふりをして近付いて、ここぞという時に裏切って、人を恨ませるという事をさせたいみたい。神様にちゃんと聞いてみるつもりだけれど、聖女や聖騎士の選別が上手く出来なくなっているのは、力が弱まっているからなんじゃないかと思うの」
「神様の力が弱まる…?」
「うん。だから、私の様な平凡な女性を選んだのかなって」
真相を知らないリリアナがは苦笑してアッシュに言った。
すると、アッシュがなんとも言えない顔をしたので、不思議そうに尋ねる。
「アッシュ、どうかしたの?」
「いや、その何でもない。というか、1つだけ聞いてもいいか?」
「何?」
アッシュにいつになく真剣な瞳で見つめられて、リリアナは少しだけ心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
(アッシュって本当に綺麗な顔をしてるのよね。真剣な顔で見つめられたらドキドキてしまうわ)
「……もし、俺が3の数字を持つ聖騎士だったらどうする?」
「前にも言ったけれど嬉しいわ。まあ、結婚するかしないかは別だけれど」
「ど、どういう事だよ!?」
「だって、アッシュとはずっと一緒にいたいもの。そういう関係になったら、私は嫌われてしまいそうだし嫌なの」
「それは…それで…、その…、どうなんだよ。それに嫌ったりしないし…」
頭を抱えるアッシュを見て、リリアナは慌てて言う。
「え? どうしたの? フィーンドに何を言われたの?」
「…何でもない。確認してからじゃないと言えない」
「何よそれ。やっぱり、アッシュが3の数字を持つ聖騎士なの?」
アッシュが何か言いたげに、少しだけ恨めしそうな顔をしてリリアナを見るので、彼女が尋ねた時だった。
「アッシュ!」
少し離れた場所からマリリンが心配そうな表情でアッシュの名を呼んだ為、リリアナの意識はそちらに移った。
(わあ、綺麗な女性。隣りにいる男の人も落ち着いた感じで素敵ね)
リリアナがこちらに駆け寄ってくるマリリンとニールを見て、そんな事を思っていると、アッシュがリリアナに言う。
「紹介するよ、俺の父さんと母さんだ」
「……え? 年の離れたお姉さんとお兄さんじゃなくて?」
「そう。父さんと母さん。まあ、血は繋がってないけどな」
苦笑するアッシュを見て、色々と聞きたいリリアナではあったけれど、まずはマリリン達に挨拶をしないといけないと思い、意識をマリリン達に集中させたのだった。
何も知らないリリアナは、呆然としているアッシュの両腕をつかんで叫んだ。
「あ、ああ…。何かされる前にリリアナが来てくれたから…。本当にありがとう」
アッシュのどこか寂しげな笑顔を見て、リリアナは首を傾げる。
(何もなかった様には見えないんだけど…?)
「アッシュ、本当は何か言われたんじゃないの…?」
「言われた…けど、今は伝えられない。だけど必ず話すから、もう少しだけ待ってくれないか? 話しても良いのか確認しないと」
「それはもちろんかまわないわ。言いたくない事を無理に聞き出すつもりはないし。アッシュが無事なのが一番よ!」
リリアナが何度もアッシュの腕を軽く叩いて微笑むと、アッシュは安心した様に微笑んだ後、彼女に尋ねる。
「他の奴らは?」
「私を監視していた神官の姿が見当たらないから探しているわ」
「ああ。それでいつもなら部屋にいる神官長がいなかったんだな」
「そうみたいね。神官長の部屋に行っても神官長がいないから、トールが探して鍵をもらってきてくれたのよ」
「……悪かった」
「え? どうしたの?」
突然、謝られた為、リリアナが首を傾げると、アッシュは言う。
「先に鍵を持ってきていれば良かったな」
「別に気にしてないわよ。最終的に外に出してもらえたから。気にする人もいるかもしれないけれど、私は気にしないわ。それに、ちゃんと皆が改心してくれる事が一番よ。出来れば無駄な犠牲は出したくないもの」
リリアナが自分に気を遣って嘘をついている様には思えなかったので、アッシュは頷いて微笑む。
「そうだな。無駄な犠牲がないのが一番だ」
「フィーンドとは、今は言えない事以外に何も話はしていないの?」
「いや。そういえば、奴は自分の事を邪神の使いだと言ってた」
「……やっぱりそうなのね。タイミング良く現れるものだから、そうじゃないかと思ったのよ」
「気付いてたのか?」
「ええ。聖女様の日記に書かれていたの。邪神は聖女や聖騎士の心を惑わせて闇落ちさせようとしてくるって。しかも、今までの聖女様の前にも私に現れた時の様なタイミングで現れたらしいから」
「邪神の使いは聖女様達を闇落ちさせてどうするつもりなんだ?」
アッシュが不思議そうに聞き返すと、リリアナは少し考えてから答える。
「これは神様に聞いてみないとわからないんだけど、聖女や聖騎士が闇落ちすると、その分、神様の力が削がれるんじゃないかと考えたの。綺麗な心が悪に染まる事によって、神様は力を削がれて邪神には力になるんじゃないかしら?」
「だから奴らは危険を冒してでも、聖女や聖騎士に近付こうとするんのか?」
「…じゃないかしら。私の場合もそうだけど、味方のいない人間に対して理解者のふりをして近付いて、ここぞという時に裏切って、人を恨ませるという事をさせたいみたい。神様にちゃんと聞いてみるつもりだけれど、聖女や聖騎士の選別が上手く出来なくなっているのは、力が弱まっているからなんじゃないかと思うの」
「神様の力が弱まる…?」
「うん。だから、私の様な平凡な女性を選んだのかなって」
真相を知らないリリアナがは苦笑してアッシュに言った。
すると、アッシュがなんとも言えない顔をしたので、不思議そうに尋ねる。
「アッシュ、どうかしたの?」
「いや、その何でもない。というか、1つだけ聞いてもいいか?」
「何?」
アッシュにいつになく真剣な瞳で見つめられて、リリアナは少しだけ心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
(アッシュって本当に綺麗な顔をしてるのよね。真剣な顔で見つめられたらドキドキてしまうわ)
「……もし、俺が3の数字を持つ聖騎士だったらどうする?」
「前にも言ったけれど嬉しいわ。まあ、結婚するかしないかは別だけれど」
「ど、どういう事だよ!?」
「だって、アッシュとはずっと一緒にいたいもの。そういう関係になったら、私は嫌われてしまいそうだし嫌なの」
「それは…それで…、その…、どうなんだよ。それに嫌ったりしないし…」
頭を抱えるアッシュを見て、リリアナは慌てて言う。
「え? どうしたの? フィーンドに何を言われたの?」
「…何でもない。確認してからじゃないと言えない」
「何よそれ。やっぱり、アッシュが3の数字を持つ聖騎士なの?」
アッシュが何か言いたげに、少しだけ恨めしそうな顔をしてリリアナを見るので、彼女が尋ねた時だった。
「アッシュ!」
少し離れた場所からマリリンが心配そうな表情でアッシュの名を呼んだ為、リリアナの意識はそちらに移った。
(わあ、綺麗な女性。隣りにいる男の人も落ち着いた感じで素敵ね)
リリアナがこちらに駆け寄ってくるマリリンとニールを見て、そんな事を思っていると、アッシュがリリアナに言う。
「紹介するよ、俺の父さんと母さんだ」
「……え? 年の離れたお姉さんとお兄さんじゃなくて?」
「そう。父さんと母さん。まあ、血は繋がってないけどな」
苦笑するアッシュを見て、色々と聞きたいリリアナではあったけれど、まずはマリリン達に挨拶をしないといけないと思い、意識をマリリン達に集中させたのだった。
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