3 / 24
02. 魔道士との出会い
しおりを挟む
自分で確認を終えたリリアナは、青色の小花柄のカーペットの上に座りこんで泣いているアーシャに声をかける。
「お母様、泣かないで下さい。まだ大丈夫です。力が弱ければ、私は不吉の聖女ではないんですから」
「そうかもしれないけれど…。もし、あなたの力が他の聖女様達より強ければ…」
そこまで言った後、言葉を止めたアーシャは両手で顔を覆って声を上げて泣きはじめた。
(泣きたいのは私の方なんだけれど、お母様が泣いてくれているおかげで冷静になれているわ)
そんな事を思いながら、泣き続けているアーシャをそのままに服を着終わった頃、中の様子が気になったのか、扉が叩かれ、リリアナが返事を返すと、父であるイーブンが部屋に入ってきた。
カーペットの上で座り込んで泣いているアーシャを見て、イーブンは全てを察したかの様にリリアナを見つめた。
見つめられたリリアナは無言で背を向け、髪を持ち上げて聖女の証を見せると大きなため息が聞こえてきた。
(無理もないわよね。娘がこれからどうなるかわからないんだもの)
正直、リリアナ自身も不安だった。
聖女の力はいうものはどうやって判断されるのか。
もし不吉の聖女だと言われた場合は…?
学園で習った限りでは、幸せな死を迎えられたという話はなかった。
「どうしましょう、あなた」
「とにかく落ち着くんだ。教会本部に連絡をいれなければ」
「待って下さい! あなた、本当にこの子を国に差し出すおつもりですか!? 3の数字を持つ聖女は不吉の聖女だと忌み嫌われている事をご存知でしょう!?」
アーシャはイーブンに縋り付き、また大声を上げて泣いた。
こんなに取り乱した母を見るのは初めてだったリリアナは、悲しくなるどころか、余計にしっかりしなければならないと思った。
(そうよ。力が強ければ不吉なだけで、力が弱ければ普通の聖女として扱ってもらえるんだから)
「お父様、お母様。私は大丈夫です。まだ私が不吉の聖女かどうかは決まっていません。どうせ弱い力しか使えなくて、逆にお荷物とか思われるだけですよ」
自分にも言い聞かせる様にリリアナはそう言うと、両親に向かって微笑んだ。
「そうだ、そうだよな。アーシャ、本来なら娘が聖女様に選ばれただなんて喜ばしい事なんだから、そんなに悲しんでいてはいけない」
イーブンはアーシャを抱きしめて背中を撫でながら、リリアナを見上げた。
これ以上、アーシャが泣き続ければ、リリアナがもっと不安になるのではないかと思ったからだ。
「そうね、そうよね…。ごめんなさいね、リリアナ」
「いいえ、大丈夫ですよ、お母様」
アーシャは涙を拭い、イーブンの手を借りて立ち上がった。
聖女の証が出た本人よりも取り乱しているアーシャをリリアナが慰めている間に、イーブンが近くの教会に連絡を入れ、本部からの連絡を待ったところ、聖女だとわかった時に決められているマニュアル通りに王都にある教会本部に行く様にと言われた。
教会本部と言われる大きな教会は国ごとにあり、リリアナは自分の住んでいる国の王都にある教会に足を運ぶことになった。
リリアナはまだ16歳の為、両親の付き添いが許可されたが、リリアナはそれを断った。
これ以上、憔悴している母の姿を見たくなかったからだ。
もし、自分が不吉の聖女だった場合、どんな反応をするのか考えるだけでも嫌だった。
(あんなに悲しんでいるお母様はもう見たくないわ)
すぐに用意をして出立する様に協会から言われたリリアナは、荷造りをして、両親と兄に簡単な挨拶をして家を出た。
なぜなら、一生会えなくなるわけではないからだ。
不吉の聖女だと認定されれば、どうなるかは分からないが普通の聖女なら家族に会いに帰る事は許されている。
この時のリリアナは若さもあってポジティブに考えていた。
もし自分が不吉の聖女だと言われた場合は迷惑をかけずにひっそりと生けば良いと思っていた。
馬車に乗って3日かけて王都に着き、着いた日の次の日の朝にリリアナは教会に向かった。
そして辿り着いたところで、実家の近くにある教会とは比べ物にならない教会の大きさに驚いたリリアナは、しばらく大きな建物を前に呆然と立ち尽くしていた。
まるで白亜の城の様に大きく、リリアナがよく見ていた教会の何十倍もの大きさだった。
大きな建物の後ろには緑の屋根の塔が3つ見えていて、聖女はその塔に暮らす事になっていると聞いた事があった。
「塔になんて住みたくないわ。高いところは苦手なのよ」
思わず、そんな言葉を口から漏らした時だった。
「こんな所で何してるんだ」
背後から声をかけられて振り返ると、いつの間にかリリアナの後ろに1人の少年が立っていた。
まだ、幼い顔立ちだが長身痩躯で眉目秀麗。
けれど、ツリ目のせいか気の強そうな印象を受けた。
紺色の瞳に瞳と同じ色のくせっ毛の髪、黒のローブに身を包んだ少年はリリアナに再度尋ねる。
「こんな所で何してるんだ? ここは家出した人間を助けるところじゃないぞ」
「知ってます! 用事があって来たんです!」
「その割には大荷物だな。本当に家出人じゃないのか?」
「違います! では、私は用事がありますので! 失礼します!」
家にしばらくは帰れないという事で、リリアナは大きなトランクを持ってきていたので家出人と間違われた様だった。
少年に背を向けてリリアナが歩き出すと、また声が掛かる。
「まさか、3の数字を持つ聖女じゃないよな」
「………」
リリアナには彼がどうしてこんなにしつこく自分に絡んでくるのかわからなかった。
(ローブを着ているという事は教会の関係者か魔道士かしら?)
そう思って聞いてみる。
「失礼ですけど、どちら様ですか?」
「俺はアッシュ。魔道士だ」
「私はリリアナといいます。どうして私が聖女かどうか気になるんですか?」
リリアナが尋ねると、アッシュは面倒くさそうな表情で答える。
「俺が3の数字をもつ聖女の担当だからだよ」
「担当?」
意味が分からず、リリアナは聞き返したのだった。
「お母様、泣かないで下さい。まだ大丈夫です。力が弱ければ、私は不吉の聖女ではないんですから」
「そうかもしれないけれど…。もし、あなたの力が他の聖女様達より強ければ…」
そこまで言った後、言葉を止めたアーシャは両手で顔を覆って声を上げて泣きはじめた。
(泣きたいのは私の方なんだけれど、お母様が泣いてくれているおかげで冷静になれているわ)
そんな事を思いながら、泣き続けているアーシャをそのままに服を着終わった頃、中の様子が気になったのか、扉が叩かれ、リリアナが返事を返すと、父であるイーブンが部屋に入ってきた。
カーペットの上で座り込んで泣いているアーシャを見て、イーブンは全てを察したかの様にリリアナを見つめた。
見つめられたリリアナは無言で背を向け、髪を持ち上げて聖女の証を見せると大きなため息が聞こえてきた。
(無理もないわよね。娘がこれからどうなるかわからないんだもの)
正直、リリアナ自身も不安だった。
聖女の力はいうものはどうやって判断されるのか。
もし不吉の聖女だと言われた場合は…?
学園で習った限りでは、幸せな死を迎えられたという話はなかった。
「どうしましょう、あなた」
「とにかく落ち着くんだ。教会本部に連絡をいれなければ」
「待って下さい! あなた、本当にこの子を国に差し出すおつもりですか!? 3の数字を持つ聖女は不吉の聖女だと忌み嫌われている事をご存知でしょう!?」
アーシャはイーブンに縋り付き、また大声を上げて泣いた。
こんなに取り乱した母を見るのは初めてだったリリアナは、悲しくなるどころか、余計にしっかりしなければならないと思った。
(そうよ。力が強ければ不吉なだけで、力が弱ければ普通の聖女として扱ってもらえるんだから)
「お父様、お母様。私は大丈夫です。まだ私が不吉の聖女かどうかは決まっていません。どうせ弱い力しか使えなくて、逆にお荷物とか思われるだけですよ」
自分にも言い聞かせる様にリリアナはそう言うと、両親に向かって微笑んだ。
「そうだ、そうだよな。アーシャ、本来なら娘が聖女様に選ばれただなんて喜ばしい事なんだから、そんなに悲しんでいてはいけない」
イーブンはアーシャを抱きしめて背中を撫でながら、リリアナを見上げた。
これ以上、アーシャが泣き続ければ、リリアナがもっと不安になるのではないかと思ったからだ。
「そうね、そうよね…。ごめんなさいね、リリアナ」
「いいえ、大丈夫ですよ、お母様」
アーシャは涙を拭い、イーブンの手を借りて立ち上がった。
聖女の証が出た本人よりも取り乱しているアーシャをリリアナが慰めている間に、イーブンが近くの教会に連絡を入れ、本部からの連絡を待ったところ、聖女だとわかった時に決められているマニュアル通りに王都にある教会本部に行く様にと言われた。
教会本部と言われる大きな教会は国ごとにあり、リリアナは自分の住んでいる国の王都にある教会に足を運ぶことになった。
リリアナはまだ16歳の為、両親の付き添いが許可されたが、リリアナはそれを断った。
これ以上、憔悴している母の姿を見たくなかったからだ。
もし、自分が不吉の聖女だった場合、どんな反応をするのか考えるだけでも嫌だった。
(あんなに悲しんでいるお母様はもう見たくないわ)
すぐに用意をして出立する様に協会から言われたリリアナは、荷造りをして、両親と兄に簡単な挨拶をして家を出た。
なぜなら、一生会えなくなるわけではないからだ。
不吉の聖女だと認定されれば、どうなるかは分からないが普通の聖女なら家族に会いに帰る事は許されている。
この時のリリアナは若さもあってポジティブに考えていた。
もし自分が不吉の聖女だと言われた場合は迷惑をかけずにひっそりと生けば良いと思っていた。
馬車に乗って3日かけて王都に着き、着いた日の次の日の朝にリリアナは教会に向かった。
そして辿り着いたところで、実家の近くにある教会とは比べ物にならない教会の大きさに驚いたリリアナは、しばらく大きな建物を前に呆然と立ち尽くしていた。
まるで白亜の城の様に大きく、リリアナがよく見ていた教会の何十倍もの大きさだった。
大きな建物の後ろには緑の屋根の塔が3つ見えていて、聖女はその塔に暮らす事になっていると聞いた事があった。
「塔になんて住みたくないわ。高いところは苦手なのよ」
思わず、そんな言葉を口から漏らした時だった。
「こんな所で何してるんだ」
背後から声をかけられて振り返ると、いつの間にかリリアナの後ろに1人の少年が立っていた。
まだ、幼い顔立ちだが長身痩躯で眉目秀麗。
けれど、ツリ目のせいか気の強そうな印象を受けた。
紺色の瞳に瞳と同じ色のくせっ毛の髪、黒のローブに身を包んだ少年はリリアナに再度尋ねる。
「こんな所で何してるんだ? ここは家出した人間を助けるところじゃないぞ」
「知ってます! 用事があって来たんです!」
「その割には大荷物だな。本当に家出人じゃないのか?」
「違います! では、私は用事がありますので! 失礼します!」
家にしばらくは帰れないという事で、リリアナは大きなトランクを持ってきていたので家出人と間違われた様だった。
少年に背を向けてリリアナが歩き出すと、また声が掛かる。
「まさか、3の数字を持つ聖女じゃないよな」
「………」
リリアナには彼がどうしてこんなにしつこく自分に絡んでくるのかわからなかった。
(ローブを着ているという事は教会の関係者か魔道士かしら?)
そう思って聞いてみる。
「失礼ですけど、どちら様ですか?」
「俺はアッシュ。魔道士だ」
「私はリリアナといいます。どうして私が聖女かどうか気になるんですか?」
リリアナが尋ねると、アッシュは面倒くさそうな表情で答える。
「俺が3の数字をもつ聖女の担当だからだよ」
「担当?」
意味が分からず、リリアナは聞き返したのだった。
21
お気に入りに追加
2,495
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、元婚約者と略奪聖女をお似合いだと応援する事にした
藍生蕗
恋愛
公爵令嬢のリリーシアは王太子の婚約者の立場を危ぶまれていた。
というのも国の伝承の聖女の出現による。
伝説の生物ユニコーンを従えた彼女は王宮に召し上げられ、国宝の扱いを受けるようになる。
やがて近くなる王太子との距離を次第に周囲は応援しだした。
けれど幼い頃から未来の王妃として育てられたリリーシアは今の状況を受け入れられず、どんどん立場を悪くする。
そして、もしユニコーンに受け入れられれば、自分も聖女になれるかもしれないとリリーシアは思い立つ。けれど待っていたのは婚約者からの断罪と投獄の指示だった。
……どうして私がこんな目に?
国の為の今迄の努力を軽く見られた挙句の一方的な断罪劇に、リリーシアはようやく婚約者を身限って──
※ 本編は4万字くらいです
※ 暴力的な表現が含まれますので、苦手な方はご注意下さい
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)
京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。
生きていくために身を粉にして働く妹マリン。
家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。
ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。
姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」
司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」
妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」
※本日を持ちまして完結とさせていただきます。
更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。
ありがとうございました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです
木嶋隆太
恋愛
聖女の力を持つ人間は、その凄まじい魔法の力で国の繁栄の手助けを行う。その聖女には、聖女候補の中から一人だけが選ばれる。私もそんな聖女候補だったが、唯一のスラム出身だったため、婚約関係にあった王子にもたいそう嫌われていた。他の聖女候補にいじめられながらも、必死に生き抜いた。そして、聖女の儀式の日。王子がもっとも愛していた女、王子目線で最有力候補だったジャネットは聖女じゃなかった。そして、聖女になったのは私だった。聖女の力を手に入れた私はこれまでの聖女同様国のために……働くわけがないでしょう! 今さら、優しくしたって無駄。私はこの聖女の力で、自由に生きるんだから!
伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜
超高校級の小説家
恋愛
マトリカリア伯爵家は代々アドニス王国軍の衛生兵団長を務める治癒魔法の名門です。
神々に祝福されているマトリカリア家では長女として胸元に十字の聖痕を持った娘が必ず生まれます。
その娘が使う強力な治癒魔法の力で衛生兵をまとめ上げ王国に重用されてきました。
そのため、家督はその長女が代々受け継ぎ、魔力容量の多い男性を婿として迎えています。
しかし、今代のマトリカリア伯爵令嬢フリージアは聖痕を持って生まれたにも関わらず治癒魔法を使えません。
それでも両親に愛されて幸せに暮らしていました。
衛生兵団長を務めていた母カトレアが急に亡くなるまでは。
フリージアの父マトリカリア伯爵は、治癒魔法に関してマトリカリア伯爵家に次ぐ名門のハイドランジア侯爵家の未亡人アザレアを後妻として迎えました。
アザレアには女の連れ子がいました。連れ子のガーベラは聖痕こそありませんが治癒魔法の素質があり、治癒魔法を使えないフリージアは次第に肩身の狭い思いをすることになりました。
アザレアもガーベラも治癒魔法を使えないフリージアを見下して、まるで使用人のように扱います。
そしてガーベラが王国軍の衛生兵団入団試験に合格し王宮に勤め始めたのをきっかけに、父のマトリカリア伯爵すらフリージアを疎ましく思い始め、アザレアに言われるがままガーベラに家督を継がせたいと考えるようになります。
治癒魔法こそ使えませんが、正式には未だにマトリカリア家の家督はフリージアにあるため、身の危険を感じたフリージアは家を出ることを決意しました。
しかし、本人すら知らないだけでフリージアにはマトリカリアの当主に相応しい力が眠っているのです。
※最初は胸糞悪いと思いますが、ざまぁは早めに終わらせるのでお付き合いいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる