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今がとても幸せだけど
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「転移魔法使えるなんて、あたし達に言って大丈夫なんですか?!」
衝撃の発言に、リアがあわあわしながら言う。
それもそのはず、どこかの国では転移魔法を使える人間は諜報員として強制的に働かされる、と聞いた事がある。
もし、この事が他の国の人間に知られたりしたら、危険人物と認識されて、ラス様になんらかの制限がかかるかもしれない。
それに命だって狙われる可能性も。
そんな極秘情報をあたし達に話してくれるなんて。
「お2人が黙ってくれていれば大丈夫ですよ。それに知っておいて下されば、お2人に何かあった時に動きやすくなります」
「で、でも」
「私は王族に仕えている人間です。ユウヤ殿下とユウマ殿下の婚約者に何かあった際に何もしないわけにはいきません」
ラス様があたしとリアを見て、厳しい表情で続ける。
「近い内に私の魔力を込めた何かをお渡しします。お2人が逃げられない、もしくは動けない状態の時に、それに魔力を流し込んでいただければ救出に向かいます。たとえ、私の命がなくなろうとも、お2人をお守りいたします」
それって、ラス様はユウヤくんやユウマくんの駒みたいじゃない。
あたしはユウヤくんを見る。
ユウヤくんも納得していないようで難しい顔をしている。
自分の太腿の上で一度、手を握ったあと、ラス様に言った。
「嫌です」
「え?」
「あたしも嫌です」
「ユーニさん、リア様?」
「嫌です」
あたしはもう一度言ってから言葉を続ける。
「そんな事をしたらラス様の転移魔法がばれてしまいます。だから、絶対にそんな事しません!」
「あたしもです! っていうか、あたしはラス様を守れるくらいに強くなります!」
リアが何故か手を挙げて宣言してから続ける。
「ユウマくんとユウヤくんの顔を見てたら、ラス様の事、大事にしてるのわかりますよ。それにあたしだって、まだラス様とは日が浅いですけど、ラス様が悪い人じゃないのはわかります」
「あたしもそうです。それにあたし自身もラス様の事好きですし」
恋愛感情ではないけれど、ラス様と話して嫌な感情は全然生まれてこない。
だから、あたしは素直に気持ちを言葉にしたのだが、言葉が足りなかったらしい。
「オレよりもかよ」
横からお子様が入り込んできてしまった。
「そういう好きじゃなくて、大切な好きです」
「ユーニさん、それもこのバカには上手く伝わりませんよ」
「バカに伝わらなくても、ラス様に伝われば良いです」
「おい」
空気読んだらわかるでしょうに。
あたしとラス様は呆れた表情でユウヤくんを見る。
「ユウヤくん、もしかして、ユーニをラス様にとられると思ってるの?」
「リア、それ当たってる」
「え? ほんとに?」
ユウマくんに言われ、リアは口に手を当ててラス様を見たあとに言った。
「まあ、のりかえたくはなるかも?」
「なるかもじゃねぇよ!」
ユウマくんが立ち上がって叫ぶ。
ああ、話がズレていく。
「お2人の気持ちはわかりました。とても嬉しいです。ありがとうございます」
ラス様が座ったまま、深く頭を下げてくれた。
「いえ、いいんです! というか、話さざるをえないようにしたのはあたし達ですし、ああ、えっと、とにかく、あたしもリアも他言はしませんから!」
あたしが拳を握りしめて言うと、リアも隣でラス様に向かって大きく首を縦に振った。
「な、可愛いだろ、うちの嫁」
突然、ユウヤくんがラス様に言った。
何を言うておるのだ?
「嫁じゃありません」
今のところはまだ何もわからないので、きっぱりと否定しておく。
「そうですよ。あなたはユーニさんの愛人ですよ」
「んだと?!」
ラス様の冗談にユウヤくんが本気になって怒っている。
エミリーさん達に言わせれば、ユウヤくんは普段は冷静沈着で無口らしいけど、これのどこがそうなんだろう。
視線を戻すとユウヤくんに襟首をつかまれ、面倒なのか無抵抗のラス様の身体が左右に揺れていた。
それと同時に、ラス様の1つにまとめた髪につけられているリボンが揺れる。
ん?
リボン?
「リ、リア、あのリボン」
「ん? え、あっ! じゃあ、やっぱりラス様なんだ」
「ああ、これですか?」
ラス様はユウヤくんの手を退けさせると、リボンを触りながら続ける。
「祖母の形見です。災厄から身を守るように魔法をかけてくれています」
ラス様はリボンを触りながら、昔を思い出したのか、とても優しい目をして教えてくれた。
「ラス様はお婆さん子だったんですか?」
「そう言われるとそうですね。このバカ2人と友人にさせられたのは祖母からのお願いですから」
「なってやったんだよ」
ユウマくんが憎まれ口を叩くと、ラス様が言い返す。
「王城に来て少したってから、リア様に会いたいと駄々をこねるあなたを慰めたのは私でしたけどね」
「うるっせえな!」
ユウマくんが少し顔を赤くして叫んだ。
ほんと、仲が良いんだな。
なんだか和んでしまう。
「私は両親からはあまり愛情を受けておらず、その分、祖母が可愛がってくれたんです。祖母がユウヤ殿下の乳母でもありまして、それはもう、小さな頃から面倒を見させられていました」
「という事は、ユウヤくんとは本当に長い付き合いなんですね!」
幼馴染みとか聞いていたけれど、そんな関係性だったとは!
「小さい頃からグチグチうるせぇんだよ、コイツは」
「ユウヤ殿下なんて泣き虫すぎて友達がいなかったじゃないですか」
「うるせぇな! 信用できるかどうか見極めてたんだよ!」
「泣いて、ですか?」
ラス様が心底、小馬鹿にしたような顔をして言う。
「大体、ユウマ殿下とか、オマエが言うと気持ち悪いんだよ!」
「そうだよ! 普段は呼び捨てじゃねぇか!」
「人前では敬称を付けますよ。大人ですからね」
くだらない3人のやり取りに、あたしとリアは顔を見合わせる。
もしかしたら、ユウヤくんもユウマくんもお互いを支え合って、それでも駄目になりそうになった時、2人の背中を押したのはラス様かもしれないな。
「ずっと仲良くしててほしいよね」
「うん」
リアの言葉に、あたしは大きく頷いた。
あたしの回復魔法の話はラス様には言えずじまいだったけど、いつか、時が来たら伝えよう。
今はまだ、ラス様の負担を増やしたくない。
そんな事を思ったあと、あたしは騒いでいる3人を放っておいて、リアと共にケーキを食べる事に集中することにした。
衝撃の発言に、リアがあわあわしながら言う。
それもそのはず、どこかの国では転移魔法を使える人間は諜報員として強制的に働かされる、と聞いた事がある。
もし、この事が他の国の人間に知られたりしたら、危険人物と認識されて、ラス様になんらかの制限がかかるかもしれない。
それに命だって狙われる可能性も。
そんな極秘情報をあたし達に話してくれるなんて。
「お2人が黙ってくれていれば大丈夫ですよ。それに知っておいて下されば、お2人に何かあった時に動きやすくなります」
「で、でも」
「私は王族に仕えている人間です。ユウヤ殿下とユウマ殿下の婚約者に何かあった際に何もしないわけにはいきません」
ラス様があたしとリアを見て、厳しい表情で続ける。
「近い内に私の魔力を込めた何かをお渡しします。お2人が逃げられない、もしくは動けない状態の時に、それに魔力を流し込んでいただければ救出に向かいます。たとえ、私の命がなくなろうとも、お2人をお守りいたします」
それって、ラス様はユウヤくんやユウマくんの駒みたいじゃない。
あたしはユウヤくんを見る。
ユウヤくんも納得していないようで難しい顔をしている。
自分の太腿の上で一度、手を握ったあと、ラス様に言った。
「嫌です」
「え?」
「あたしも嫌です」
「ユーニさん、リア様?」
「嫌です」
あたしはもう一度言ってから言葉を続ける。
「そんな事をしたらラス様の転移魔法がばれてしまいます。だから、絶対にそんな事しません!」
「あたしもです! っていうか、あたしはラス様を守れるくらいに強くなります!」
リアが何故か手を挙げて宣言してから続ける。
「ユウマくんとユウヤくんの顔を見てたら、ラス様の事、大事にしてるのわかりますよ。それにあたしだって、まだラス様とは日が浅いですけど、ラス様が悪い人じゃないのはわかります」
「あたしもそうです。それにあたし自身もラス様の事好きですし」
恋愛感情ではないけれど、ラス様と話して嫌な感情は全然生まれてこない。
だから、あたしは素直に気持ちを言葉にしたのだが、言葉が足りなかったらしい。
「オレよりもかよ」
横からお子様が入り込んできてしまった。
「そういう好きじゃなくて、大切な好きです」
「ユーニさん、それもこのバカには上手く伝わりませんよ」
「バカに伝わらなくても、ラス様に伝われば良いです」
「おい」
空気読んだらわかるでしょうに。
あたしとラス様は呆れた表情でユウヤくんを見る。
「ユウヤくん、もしかして、ユーニをラス様にとられると思ってるの?」
「リア、それ当たってる」
「え? ほんとに?」
ユウマくんに言われ、リアは口に手を当ててラス様を見たあとに言った。
「まあ、のりかえたくはなるかも?」
「なるかもじゃねぇよ!」
ユウマくんが立ち上がって叫ぶ。
ああ、話がズレていく。
「お2人の気持ちはわかりました。とても嬉しいです。ありがとうございます」
ラス様が座ったまま、深く頭を下げてくれた。
「いえ、いいんです! というか、話さざるをえないようにしたのはあたし達ですし、ああ、えっと、とにかく、あたしもリアも他言はしませんから!」
あたしが拳を握りしめて言うと、リアも隣でラス様に向かって大きく首を縦に振った。
「な、可愛いだろ、うちの嫁」
突然、ユウヤくんがラス様に言った。
何を言うておるのだ?
「嫁じゃありません」
今のところはまだ何もわからないので、きっぱりと否定しておく。
「そうですよ。あなたはユーニさんの愛人ですよ」
「んだと?!」
ラス様の冗談にユウヤくんが本気になって怒っている。
エミリーさん達に言わせれば、ユウヤくんは普段は冷静沈着で無口らしいけど、これのどこがそうなんだろう。
視線を戻すとユウヤくんに襟首をつかまれ、面倒なのか無抵抗のラス様の身体が左右に揺れていた。
それと同時に、ラス様の1つにまとめた髪につけられているリボンが揺れる。
ん?
リボン?
「リ、リア、あのリボン」
「ん? え、あっ! じゃあ、やっぱりラス様なんだ」
「ああ、これですか?」
ラス様はユウヤくんの手を退けさせると、リボンを触りながら続ける。
「祖母の形見です。災厄から身を守るように魔法をかけてくれています」
ラス様はリボンを触りながら、昔を思い出したのか、とても優しい目をして教えてくれた。
「ラス様はお婆さん子だったんですか?」
「そう言われるとそうですね。このバカ2人と友人にさせられたのは祖母からのお願いですから」
「なってやったんだよ」
ユウマくんが憎まれ口を叩くと、ラス様が言い返す。
「王城に来て少したってから、リア様に会いたいと駄々をこねるあなたを慰めたのは私でしたけどね」
「うるっせえな!」
ユウマくんが少し顔を赤くして叫んだ。
ほんと、仲が良いんだな。
なんだか和んでしまう。
「私は両親からはあまり愛情を受けておらず、その分、祖母が可愛がってくれたんです。祖母がユウヤ殿下の乳母でもありまして、それはもう、小さな頃から面倒を見させられていました」
「という事は、ユウヤくんとは本当に長い付き合いなんですね!」
幼馴染みとか聞いていたけれど、そんな関係性だったとは!
「小さい頃からグチグチうるせぇんだよ、コイツは」
「ユウヤ殿下なんて泣き虫すぎて友達がいなかったじゃないですか」
「うるせぇな! 信用できるかどうか見極めてたんだよ!」
「泣いて、ですか?」
ラス様が心底、小馬鹿にしたような顔をして言う。
「大体、ユウマ殿下とか、オマエが言うと気持ち悪いんだよ!」
「そうだよ! 普段は呼び捨てじゃねぇか!」
「人前では敬称を付けますよ。大人ですからね」
くだらない3人のやり取りに、あたしとリアは顔を見合わせる。
もしかしたら、ユウヤくんもユウマくんもお互いを支え合って、それでも駄目になりそうになった時、2人の背中を押したのはラス様かもしれないな。
「ずっと仲良くしててほしいよね」
「うん」
リアの言葉に、あたしは大きく頷いた。
あたしの回復魔法の話はラス様には言えずじまいだったけど、いつか、時が来たら伝えよう。
今はまだ、ラス様の負担を増やしたくない。
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