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刺激が強すぎます

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行ってみたかったカフェは、近所の人もよく行くような場所だから、こんな格好で、しかもイケメンと手を繋いで歩いてるとこなんて見られたら、明日からどんな噂が流れることか。
 でも、ケーキは食べたいので、ユウヤくんに道案内していたところ。

「「お」」
「「あ」」

 曲がり角を曲がったところで、こちらに向かって歩いてきていたリア達と鉢合わせし、ユウヤくんとユウマくんの声と、あたしとリアの声が重なった。
 2人は仲直りしたのか並んで歩いていたのだけれど、ユウマくんは何かを背中に背負っているようだったので聞いてみた。

「ユウマくん、何持ってるの?」
「ああ、これ」

 あたしの問いかけにユウマくんは苦虫を噛み潰したような顔をしてから背中を見せてくれた。
 ユウマくんの背中を覆い隠すようにして背負われていたのは、巨大な白いウサギのぬいぐるみだった。

「わ~! 可愛い!」
「でしょ?」

 あたしの言葉にリアがにんまりと笑う。

 ぬいぐるみを可愛いと思ったのは確かだろうけど、わざと可愛いものを背負わせたいがために買わせたな。

 リアも意地悪だなあ。

「どうしたんだよ、それ」
「これ買ったら機嫌なおすって言ったから買ったんだよ」
「オマエ、リアちゃんには甘いな」

 あたし達が話している間にユウヤくん達も経緯を話していたようだけど、リアのあたしへの発言でその会話が止まる。

「そういえば、さっき、リックと会って、ユーニがいないって心配してたから事情を軽くだけど説明しといた」
「あ、忘れてた! っていだだだだっ!!」

 突然、つないでいた指がすごい力で握られて、あたしは思わず叫ぶ。

 こんなに痛がっている友人を見て、リアは一瞬、不思議そうにしたけれど、叫んだ意味がわかり、またニヤニヤしている。
 そんなリアにユウヤくんが聞いた。

「リアちゃん、リックってどんな奴?」
「え? リック? それより、へぇ。手つないでるんだ、へぇ。ふふ、うふふ」
「リア、心の声がもれてんぞ」

 ユウマくんのツッコミを相手にせず、リアは気を取り直してユウヤくんに答える。

「ユウヤくん、リックは男だけど、彼に関して、ユーニは恋愛感情なんてないから大丈夫よ?」
「なんの話? あ、この手をつないでるのは、ショールを買ってもらったお礼だから! っていうかリックはリアが好きだったよね」

 さっきの仕返しだと言わんばかりに、あたしは言葉の爆弾を投げつけてやった。
 すると、ユウマくんが見事に受け止めてくれる。

「ほほう」
「何よ」
「べっつにー。つーか、オレにもお礼くれませんかねー。ウサギ以外にも買ってやったよな。誰かさんには買ってもらいたくないってわめいてたくせに」
「大人だから引いてあげたんです! っていうか、あんたからユウヤくんみたいに気遣いあるプレゼントはもらってません」
「ほほう、気遣いあるプレゼントすれば、お礼してくれるんだな?」

 2人の言い合いを見てると、ほんとに。

「仲良しだなあ」
「「仲良くない!!」」

 あたしの言葉に2人して同時に返してきた。

 仲良いよね?

「ほら、行くぞ」

 2人の喧嘩をもっと見守っていたかったけれど、ユウマくんがリアの手を引いて歩き出した。

「え?! ちょっとはなしてよ!」
「行かねぇと2人の邪魔になんだろ。それにこうでもしねぇと、オマエは、あっち見たりこっち見たりフラフラするだろうが! つか、さっきの男とはどういう関係なんだよ」
「あんたには関係ないでしょ!」
「あるから言ってんだ!」

 別れ際、そんな会話が聞こえてきて、なんだかほんわかしてしまう。

 なんにしても、仲直りできたみたいで良かった。

「オレらも行くぞ」
「は~い」

 その後、行きたかったカフェで、ちょっとゆっくりしてから、セバスさんに言われていた買い物を済ませた。

 そうこうしている内に時間がたつのは早いもので、気が付くと日が傾き始めていた。

 今日、ユウヤくんに買ってもらった服やアクセサリーなどは、後日、家まで届けてくれる事になっているので、今、家に持ち帰ろうとしているのはお土産に買ってもらったケーキのみだ。

「早く帰らないとセバスさんに怒られない?」
「まあな。でも、オマエを家まで送らずに途中で帰ったなんて言ったら余計に怒られそうだ」
「それならいいけど」

 あたしの家までユウヤくんが送ってくれる事になって、こころなしかゆっくりした歩みで家路を辿る。

 それにしても、いつまで手をつなぎ続けるんだろうか。

 店に入るときは手をはなして、出たらつなぐ、を繰り返してきた。

 そういえば、子供の頃にも、こんな風に手を繋いでたっけ。


「なんか、懐かしいね」
「ん?」
「昔もこんな風に手を繋いだりしてたなあって」
「……それだけじゃねぇだろ?」
「なんだっけ」

 聞き返すと、ユウヤくんがあたしに顔を近づけて言った。

「キスしてくれたん、覚えてねぇの?」
「な?! それは、あれでしょ! ほっぺにでしょ?!」
「してくれたんにはかわりねぇだろ」
「子供の頃の話です」

 昔を思い出し、頬が熱くなるのを感じて、パタパタとあいている方の手で顔をあおいでいると、ユウヤくんがあたしの手をはなし、目の前に立って耳を疑うような事を言った。

「昔みたいにキスしてくれねぇの?」
「な、な、何を?!」
「昨日はほんと傷付いたんだけどなぁ」

 恨みがましく言われ、ユウヤくんを見上げて尋ねる。


「したら、許してくれるの?」
「許す」



 この時のあたしの頭の中は冷静に考えていられる思考回路ではなかった。
 だからだと思う。
 素直にこんな馬鹿げたお願いをきこうとしてしまったのは。

「じゃ、するから、屈んでよ」
「ん」

 なんか悪戯を考えてるような笑みを浮かべて、ユウヤくんは頷いたあとに、少しだけ膝を曲げた。

 すごい恥ずかしい。
 やっぱりやめとこうかな。
 でも、そうなると許してもらえないし。
  
「人に見られたら嫌だからこっち!」

 覚悟を決めて、人気の少ない路地裏に連れこむ。
 大きく深呼吸してから、

「お願いします」

 と言うと、ユウヤくんは笑いながら、また屈んでくれた。

 屈んでくれたけど、まだ、顔の位置は彼のほうが上なので、少し背伸びをして位置をつかんだところで、恥ずかしさゆえに目を閉じる。

 少しずつ近づいて、あたしの鼻に何かが触れた時点で、一度目を開けると、ばっちり、ユウヤくんと目が合った。

 ん?
 目が合った?

「ざんねん」

 ユウヤくんが笑う

 え?
 も、もしかして、もうちょっとで口にするとこだった?!

「ひ、ひああああっ!!」

 声を上げて、あたしは後ろに飛び退り、路地裏から飛び出ると、ナイスタイミングなのかバッドタイミングなのか、またリア達と出くわした。

「ユーニ、どうしたの?!」
「も、もう少しで、ユ、ユウヤくんとっ」
「大丈夫だから、落ち着いて? ちょっと、ユウマくん!」
「へいへい」

 パニックになっているあたしをリアがなだめてくれている間にユウマくんがユウヤくんに尋ねる。

「何したんだ?」
「簡単に言うとキスしようとした」
「オマエなあ」

 ユウヤくんの言葉にユウマくんが眉間にシワを寄せる。
 リアにも話が聞こえているから、リアはあたしの頭をなでながらユウヤくんに怒る。


「ユウヤくんはユウマくんみたいに無分別じゃないと思ってたのに!」
「ああ?」

 リアの言葉に食いついたのはユウマくんだ。

 もしかして、この2人はケンカップルというやつなの?

「おっきな声ですごまないで下さい。野蛮です」
「野蛮で結構。というか、オレは無分別だから可愛くないオマエのその口をオレの口でふさいでもいいんだよなあ?!」
「きゃー! ちかん!!」
「誰が痴漢だ! ほんとに塞ぐぞ!」

 え?
 ちょっと見てみたいような気も。

「土産のケーキで今日は許してくれよ」

 リア達に気を取られていると、ユウヤくんが隣に立ち、ケーキが入った箱を見せて言うから。

「…ケーキ美味しそうだし許す」
「ありがとな」

 ポンポンと頭を撫でられた。

 というか、あたしの方は許してもらえたのだろうか?
 正直、胸の動機はまだおさまっていないんだけど。

「ちょっと! 何すんのよ!」
「大人しくしろって言ってんだろ!」

 けれど、取っ組み合いをはじめてしまったリア達を見て、それどころではなくなってしまったのだった。

 というか、リアの痴漢でうすれてしまったけど、ユウマくん、さらりとリアとキスしようとしてたよね?

 こんな状況で上手く身を引けるのだろうか???
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