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嵐の再会
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「ユーニ! おはよう! 起きてる?」
扉を叩く音の後、家の外から名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の主は私の友人であるリアだ。
「おはよ! 起きてるよ。支度してるから中に入って待ってて」
パジャマ姿のまま、扉を開けると明るい日差しと共に、眩しいリアの笑顔が目に飛び込んできた。
リアは黒のストレートの長い髪をポニーテールにした、初見で言えば少し気の強そうな美少女で、いつも明るくて元気で今日も黒い瞳をキラキラさせている。
あたしも黒髪だが、猫っ毛だし、セミロングの髪もボサボサでリアと比べるたら女子力はないに等しい。
「まったく。ユーニは元は悪くないんだから、ちゃんとお洒落しないとだめよ。今日のパレードの中にすっごいイケメンがいるかもしれないんだから!」
「イケメンにはすでに奥さんか彼女がいるでしょ。それにリアには心に決めたユウマくんがいるんじゃないの?」
「それは昔の話よ。それを言ったらユーニだって、愛しのユウヤくんをこのまま思い続けるの?」
痛いところをつかれて押し黙る。
リアもあたしと同じ時期に場所は違うけれど、ユウマという名前の少年と出会い、逢瀬を繰り返していたが、ある日突然、彼が現れなくなったらしい。
しかも、現れなくなった時期も一致するのだ。
あたしの過去の出来事と一致しているし、名前も似ているから同一人物かとも思ったけれど、話を聞いていると、泣き虫ユウヤくんに対し、世捨て人ユウマくん、といった感じだったので、リアと共にユウヤくんとユウマくんは違う人物だと結論付けた。
「わかんない。他に好きな人ができたり、忘れなきゃいけない理由ができたら忘れるよ」
「あたしもそうね」
ニッと2人で顔を見合わせて笑いあったあと、リアが急かす。
「さ、早く行かないと良い場所とられちゃうわよ!」
「人混みは苦手なんだけどなあ」
着替えながらため息を吐く。
今日はあたしたちの住んでいる街に王都から王子2人がやってくるのだ。
なぜかというと、同時期に婚約が決まったから。
そのお祝いのため、王子2人は各地をまわっており、今日が我が街というわけだ。
2人の王子はそれはとても美男子らしく、やはり、乙女としてはどんなものか気になるため、大々的に行われるパレードを見に行くことにした。
「パレードには騎士がたくさんついてるらしいし、将来見込める人がいるはず!」
「リアは可愛いから見つかるかもだけど」
あたしは無理だろうな。
その言葉を飲み込んでから、時計を見るとパレードの時間が迫っていて、あたし達は慌てて支度を済ませて家を出た。
「第1王子と第2王子って、母親が違うんだっけ?」
「そうらしいわね。元々は現陛下には恋人がいたんだけど、政略結婚で現王妃様と結婚して第1王子が、で、恋人との最後の逢瀬でできたのが第2王子ね。身籠ったのは2人とも同時期だったらしいわよ」
「う、うわあ。王妃様複雑だったろうなあ」
「でも、第2王子も可哀想よ? だって、自分を産んだせいでお母様は殺されてしまったわけだし。第2王子の目の前での暗殺だったらしいし、気の毒よね」
「そうなんだ。2人ともが可哀想。あ、そういえば、王子様の名前知らないんだけど、リアは知ってる?」
「そう言われてみれば、王様と王妃様の名前しか知らない」
パレード予定の道にはすごい人だかりが出来ており、リアとあたしは人から少し離れたところでゴシップ話に花を咲かせていた。
リアのから聞いた話の、第2王子のお母様が暗殺されてしまった理由を頭の中から引き出そうとしている時に、遠くの方から歓声が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、王家の紋章が刻まれた旗を持った人を先頭に馬に乗った人達がこちらに近づいてきている所だった。
「リア、見えそう?」
「う~ん、正面までこないと見えにくそうね」
「もうちょっと離れよっか」
あとから考えてみるとこれがまずかった。
自分の彼女や奥さんがイケメンに目を奪われているのを見ても、その相手は面白くもなく、同じように王子の婚約者の美しさを見て発散するものもいたが、何人かは輪に外れており、その一部にあたし達は目をつけられてしまったのだ。
「姉ちゃん達、ひまなん? 俺らと飲まない?」
「昼間から結構よ! 大体ひまじゃないし」
「そんな言い方しなくてもいいだろうが!」
からんできた男にリアが冷たく言い放つと、逆上した男がリアの手をつかんだ。
「何すんのよ!」
「ちょっと!」
リアの両親も冒険者で、リアは幼い頃から剣や体術、魔法などをたたきこまれており、そんじょそこらの人間がかなうわけがない。
リアのやりすぎをおさえようと、あたしが止めに入ろうとした、その時だった。
背中の向こうから、恐ろしい程の圧を感じ、あたしはゆっくりと後ろを振り返る。
すると、そこには、馬の足を止めてこちらを見つめるイケメンがいた。
王族みたいな礼服をきて、胸元にはたくさんの勲章。
黒髪の短髪の紅い瞳。
ユウヤくんの瞳と同じ色。
と、呆けたところで我に返る。
なぜなら見つめるなんて可愛いもんじゃなかったから。
「う、嘘でしょ、そんな」
リアがイケメンを見つめたまま、言葉を吐いた。
「リア、知ってるの?」
あたしが尋ねたと同時、前方の野次馬が叫んだ。
「ユウマさま!」
「ん?」
一人が叫んだ途端、ユウマ様コールが起こり、そして。
「第2王子様だけでなく、第1王子のユウヤさまもいらっしゃるわ!」
ん?
なんだって?
「ユーニ」
「え? もしかして、ユウマくんって、あの?」
リアに名を呼ばれ、近寄ろうとしたその時、リアの手をつかんでいた男が、盾にでもしようとしたのか、あたしの腕までもつかもうとした。
と、同時に殺気を感じる。
その殺気におされ、からんできた男は後ろにひっくり返るが、そんな事を気にしていられなかった。
なぜなら。
ユウマくんの後ろに見えたのは。
「・・・・・ユウヤくん?」
声が震えているのがわかった。
ユウヤ様はユウマ様にとても似ていた。
だけど、リアが気付いたように、あたしにもわかった。
幼い頃の面影は全くないけれど、群衆を挟んだ先にいるその人が初恋の彼なのだと。
ユウマくんが何か言葉を発しようとしたその時、リアがあたしの手をつかんだ。
「ユーニ、逃げるわよ!」
「え?」
「さっきのわかるでしょ! 明らかに殺気だった! これは婚約パレードよ! もしかしたら」
「過去の女遍歴を消したいがために、あたし達を!?」
「んな訳ないかもしれないけど一応よ。何もなければ逃してくれるわ!」
「まだ死にたくない!」
リアの言葉に正直な気持ちを叫び頷く。
「よし、逃げよう!」
それを合図にあたし達は一斉に走り出す。
「「おい!!」」
「「ぎゃあああ!!」」
背後で2つの声が重なったかと思い振り返ると、あろう事か馬から飛び降り、群衆をかきわけて、2人が恐ろしい形相で追いかけているのが見えて、あたしとリアは初恋相手との思わぬ再会に絶叫したのだった。
扉を叩く音の後、家の外から名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の主は私の友人であるリアだ。
「おはよ! 起きてるよ。支度してるから中に入って待ってて」
パジャマ姿のまま、扉を開けると明るい日差しと共に、眩しいリアの笑顔が目に飛び込んできた。
リアは黒のストレートの長い髪をポニーテールにした、初見で言えば少し気の強そうな美少女で、いつも明るくて元気で今日も黒い瞳をキラキラさせている。
あたしも黒髪だが、猫っ毛だし、セミロングの髪もボサボサでリアと比べるたら女子力はないに等しい。
「まったく。ユーニは元は悪くないんだから、ちゃんとお洒落しないとだめよ。今日のパレードの中にすっごいイケメンがいるかもしれないんだから!」
「イケメンにはすでに奥さんか彼女がいるでしょ。それにリアには心に決めたユウマくんがいるんじゃないの?」
「それは昔の話よ。それを言ったらユーニだって、愛しのユウヤくんをこのまま思い続けるの?」
痛いところをつかれて押し黙る。
リアもあたしと同じ時期に場所は違うけれど、ユウマという名前の少年と出会い、逢瀬を繰り返していたが、ある日突然、彼が現れなくなったらしい。
しかも、現れなくなった時期も一致するのだ。
あたしの過去の出来事と一致しているし、名前も似ているから同一人物かとも思ったけれど、話を聞いていると、泣き虫ユウヤくんに対し、世捨て人ユウマくん、といった感じだったので、リアと共にユウヤくんとユウマくんは違う人物だと結論付けた。
「わかんない。他に好きな人ができたり、忘れなきゃいけない理由ができたら忘れるよ」
「あたしもそうね」
ニッと2人で顔を見合わせて笑いあったあと、リアが急かす。
「さ、早く行かないと良い場所とられちゃうわよ!」
「人混みは苦手なんだけどなあ」
着替えながらため息を吐く。
今日はあたしたちの住んでいる街に王都から王子2人がやってくるのだ。
なぜかというと、同時期に婚約が決まったから。
そのお祝いのため、王子2人は各地をまわっており、今日が我が街というわけだ。
2人の王子はそれはとても美男子らしく、やはり、乙女としてはどんなものか気になるため、大々的に行われるパレードを見に行くことにした。
「パレードには騎士がたくさんついてるらしいし、将来見込める人がいるはず!」
「リアは可愛いから見つかるかもだけど」
あたしは無理だろうな。
その言葉を飲み込んでから、時計を見るとパレードの時間が迫っていて、あたし達は慌てて支度を済ませて家を出た。
「第1王子と第2王子って、母親が違うんだっけ?」
「そうらしいわね。元々は現陛下には恋人がいたんだけど、政略結婚で現王妃様と結婚して第1王子が、で、恋人との最後の逢瀬でできたのが第2王子ね。身籠ったのは2人とも同時期だったらしいわよ」
「う、うわあ。王妃様複雑だったろうなあ」
「でも、第2王子も可哀想よ? だって、自分を産んだせいでお母様は殺されてしまったわけだし。第2王子の目の前での暗殺だったらしいし、気の毒よね」
「そうなんだ。2人ともが可哀想。あ、そういえば、王子様の名前知らないんだけど、リアは知ってる?」
「そう言われてみれば、王様と王妃様の名前しか知らない」
パレード予定の道にはすごい人だかりが出来ており、リアとあたしは人から少し離れたところでゴシップ話に花を咲かせていた。
リアのから聞いた話の、第2王子のお母様が暗殺されてしまった理由を頭の中から引き出そうとしている時に、遠くの方から歓声が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、王家の紋章が刻まれた旗を持った人を先頭に馬に乗った人達がこちらに近づいてきている所だった。
「リア、見えそう?」
「う~ん、正面までこないと見えにくそうね」
「もうちょっと離れよっか」
あとから考えてみるとこれがまずかった。
自分の彼女や奥さんがイケメンに目を奪われているのを見ても、その相手は面白くもなく、同じように王子の婚約者の美しさを見て発散するものもいたが、何人かは輪に外れており、その一部にあたし達は目をつけられてしまったのだ。
「姉ちゃん達、ひまなん? 俺らと飲まない?」
「昼間から結構よ! 大体ひまじゃないし」
「そんな言い方しなくてもいいだろうが!」
からんできた男にリアが冷たく言い放つと、逆上した男がリアの手をつかんだ。
「何すんのよ!」
「ちょっと!」
リアの両親も冒険者で、リアは幼い頃から剣や体術、魔法などをたたきこまれており、そんじょそこらの人間がかなうわけがない。
リアのやりすぎをおさえようと、あたしが止めに入ろうとした、その時だった。
背中の向こうから、恐ろしい程の圧を感じ、あたしはゆっくりと後ろを振り返る。
すると、そこには、馬の足を止めてこちらを見つめるイケメンがいた。
王族みたいな礼服をきて、胸元にはたくさんの勲章。
黒髪の短髪の紅い瞳。
ユウヤくんの瞳と同じ色。
と、呆けたところで我に返る。
なぜなら見つめるなんて可愛いもんじゃなかったから。
「う、嘘でしょ、そんな」
リアがイケメンを見つめたまま、言葉を吐いた。
「リア、知ってるの?」
あたしが尋ねたと同時、前方の野次馬が叫んだ。
「ユウマさま!」
「ん?」
一人が叫んだ途端、ユウマ様コールが起こり、そして。
「第2王子様だけでなく、第1王子のユウヤさまもいらっしゃるわ!」
ん?
なんだって?
「ユーニ」
「え? もしかして、ユウマくんって、あの?」
リアに名を呼ばれ、近寄ろうとしたその時、リアの手をつかんでいた男が、盾にでもしようとしたのか、あたしの腕までもつかもうとした。
と、同時に殺気を感じる。
その殺気におされ、からんできた男は後ろにひっくり返るが、そんな事を気にしていられなかった。
なぜなら。
ユウマくんの後ろに見えたのは。
「・・・・・ユウヤくん?」
声が震えているのがわかった。
ユウヤ様はユウマ様にとても似ていた。
だけど、リアが気付いたように、あたしにもわかった。
幼い頃の面影は全くないけれど、群衆を挟んだ先にいるその人が初恋の彼なのだと。
ユウマくんが何か言葉を発しようとしたその時、リアがあたしの手をつかんだ。
「ユーニ、逃げるわよ!」
「え?」
「さっきのわかるでしょ! 明らかに殺気だった! これは婚約パレードよ! もしかしたら」
「過去の女遍歴を消したいがために、あたし達を!?」
「んな訳ないかもしれないけど一応よ。何もなければ逃してくれるわ!」
「まだ死にたくない!」
リアの言葉に正直な気持ちを叫び頷く。
「よし、逃げよう!」
それを合図にあたし達は一斉に走り出す。
「「おい!!」」
「「ぎゃあああ!!」」
背後で2つの声が重なったかと思い振り返ると、あろう事か馬から飛び降り、群衆をかきわけて、2人が恐ろしい形相で追いかけているのが見えて、あたしとリアは初恋相手との思わぬ再会に絶叫したのだった。
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